わけわかんない
「また君か…」
昨日お説教されたお巡りさんとヒーローが私にそう言う。
「氷華悪くないもん…」
危なかったから思わず能力を使ってしまった。
反省はしているけど間違っているとは思わない。
「正当防衛でも限度があるって昨日言ったよね!!」
「原子レベルで凍らせるのは死刑と同じだからね!!」
淡々とお説教される。泣きそう…
「百道…お前なにしているんだ?」
私と同じ制服を着た男の子が通りかかった。
「誰?」
知らない人だ。
「お前…隣の席だろ!!…えっ…嘘だろ…マジで覚えてない?」
「知らない。」
知らないものは知らないのだ。
「百鬼!!百鬼金房だ!!」
「やっぱり知らない。」
何故か泣きそうになってる男の子。
「あー…本当に次はないからね!!」
お巡りさんが居た堪れない顔でそう私に言う。
「頑張る…」
しょんぼりとして言う私。
「あと、友達は大事にしようね…」
ヒーローがこれまた居た堪れない顔で言う。
「友達?氷華友達いないから関係ないよ?」
そう答える。
「うん…そうなんだ…友達出来るといいね…」
お巡りさんとヒーローが何故か悲しい目をして男の子を見ていた。
「いらないかな…」
私はそう呟いて学校に向かった。
無事に席に座った私。遅刻せず、始業のチャイムに一安心する。
何故か隣の席の子は遅刻していた。
…誰だっけ?
−−−−−−−−−−−−−−−−−
私は自分の名前が嫌いだ。
美波麗香なんていう、美しいと麗しいが入った名前なのに、現実はちんちくりんの幼児体型で、それで美少女なら良かったのだが、顔に陰気臭さがどよっと現れ、可愛いとは程遠いと自覚出来る見た目だった。
努力はした。化粧の方法なんか毎日ネットの動画を見て練習したし、中学デビュー以降、自分でも原型を留めない程別人みたいにメイクしている。
それでも、入学初日、百道凛樹に出会い、所詮無駄な努力。根本に見た目が違うと思い知らされた。
「てか凛樹〜、超バズってたじゃん!!」
「クーちゃんとの写真でしょ〜、私もマジびっくり〜。」
ヘラヘラと笑う百道凛樹。
「ねぇ、れーちゃんも見た~?」
何故か私に抱き着いたままそう言う百道。
クソ!!離れろよ!!
不快な柔らさが当たってんだよ!!あといい匂いする!!とにかく腹立つ!!
私が持っていないものを全部持ってるこいつが大っ嫌いだ!!
「別に…見てない…」
しかし、そんなスクールカースト最上位の百道に強気に出れる筈もなく、しどろもどろになって答える。
「え〜。見てよ~。…そうだ!!れーちゃん、今度一緒に写真撮ろ!!」
更にハイテンションになり、今まで以上に抱き着いてくる。
「ちょっと〜、ウチと撮るって約束だったじゃん〜。」
ギャルの1人が百道にそう言う。明らかな敵意を私に向けながら。
「そだっけ?じゃ〜今撮ろ〜!!」
ヘラヘラと笑いながら私から離れ、ギャルたちとどこかへ行く百道。
ホント…大っ嫌い!!
数分後、
「百道!!お前、また朝礼サボりやがって!!」
廊下から聞こえる教室の怒鳴り声。
「私だけじゃないもん!!」
襟を掴まれ、教室に教師と一緒に入ってくる百道は、
「放課後、生徒指導部だからな!!」
居残りを命じられていた。
「先生酷くない!!」
そう言う百道。
「酷いにはお前の頭だよっ!!」
そんなやり取りにクラスが笑い、明るくなる。
私だけ、彼女をジメッとした妬みの目で見ていた。
「なんかごめんね…」
席に戻る最中、百道は私の席の所で、私にしか聞こえない声のボリュームでそう呟いた。
意味が分からず斜め後ろの彼女の席を見た。
「宿題を回収するぞー。」
そんな教師の声。
「はいはーい!!先生!!宿題やったけど忘れて来ました~!!」
ケラケラと太陽の様に笑いながら高らかに宣言する百道。
「お前には端から期待しとらん…」
呆れた様に言う教師。
「うわっ~酷〜い!!」
そんなことを言いながら笑う彼女は、何故か私に向けて小さく手を振った。
わけわかんない…
やっぱりこいつ大っ嫌いだ…




