属性盛り盛り
「アンタ、こっち見て話せないの?」
なんかいたたまれなくなり、誰もいない中庭に連れ出した黒瀬香紅璃にそう言う。
「あ、あの…すみません…本当にこれだけしか持ってません…ごめんなさい…」
何故か財布を差し出し蚊の鳴くような声で言う黒瀬。
高嶺の花ごどころか、可哀想ないじめられっ子がそこにいた。
「カツアゲじゃないわよ!!そもそも、ヒーローの私がカツアゲなんかするわけないでしょうが!!」
何故か彼女と話していると私が悪者の様な気がしてくる。
陰気臭く気弱でヘタレでコミュ障。その癖金持ちで超絶美少女で完璧超人。
何こいつ…
属性盛りすぎでしょうが!!
自分が7つの能力に腹ペコ、金髪碧眼の高飛車で我儘な元世界一位のヒーローの娘な美少女ヒーローということは棚に上げた。
「アンタ、なんでそんなに自信ないのよ?」
正直、黒瀬が自信を持てない理由が分からない。
あらゆる点で他に勝る彼女が、ここまで残念な感じなのか。そして、何故誰も彼女が残念な娘だと知らないのか…
「…自信持てる方がおかしいと思うんですけど。…ご、ごめんなさい!!」
なんかバカにされた気がして壁を叩いたけど、私は悪くない。
「アンタ、私程ではないけど可愛いし綺麗だし、おまけに私程じゃないけど、文武両道なんでしょう?そりゃあ、私程じゃないけど、私の次くらいには自信持っていい要素しかないじゃない!!私程じゃないけど!!」
そう優しく言ったつもりだったのだが…
「なんで引いてんのよ!!」
怯えが少し呆れに変わった黒瀬を睨む。
「ごめんなさい!!引いてないです!!全部私が悪いんです!!どうしようもないゴミの分際でゴミ処理ばっかりしてごめんなさい!!生きててごめんなさい!!」
とうとう泣き出してしまった。
「あぁーっ!!もうっ!!なんで泣くのよ!!ホンットッ気に入らないっ!!アンタみたいなの大っ嫌い!!せっかくこの私がアドバイスして上げてるのにっ!!」
怒鳴り散らし教室に戻る。
シクシクと泣く黒瀬を置いて。
チャイムが鳴る頃、黒瀬はスンとした表情で席に座っていた。
時折、思い耽る様に吐く溜息に男子たちと一部の女子が見惚れていた。
「正直、クリスティンちゃんも滅茶苦茶可愛いけど、やっぱり香紅璃様が1番美しいよな!!」
放課後、散策ついでに廊下を歩いていると、別のクラスの教室から、そんな男子たちの会話が聞こえた。
解せぬ…
私が1番可愛いのに…
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武生神也。
世界に名を轟かせる最強と称される武門の現当主である。
そんな僕の不憫な生き様を紹介していこう。
僕最大の不幸は、武生神娘の弟に産まれたことから始まった。
無能力者なのに最強の姉は、ことあるごとに僕を連れ出し武生院の外に連れ出した。
好き勝手に暴れる姉の巻き添えで僕は何度も死にそうな目に遭うのだが、その度に情けないと姉に殴られた。それが1番のダメージだった。
普通ならとっくに死んでいる様な幼少期を過ごした僕だが、死なずにいれたのは、僕が能力者だったからだろう。
僕は何かを出せたり、何かに成れる能力ではない。
僕の能力は物凄くシンプルな能力だ。
死なない。
それだけだけど、それ以上ない能力。
勿論、人間なので寿命や病気では死ぬ。
しかし、人の意識による攻撃(物理や武器、能力や人為的毒等)では死なない。そんな能力だ。
死なないだけで痛いし、再生に時間を要することある(主に姉さんの攻撃)。しかし死なない。
故に生きていると思っている。
武生院直伝の最強の武術と不死の身体。普通なら敵などいない。
それなのにパッとしない当主が僕だ。
理由は単純。
歴代最強、武神の異名をとる父と、そんな父が虫けら以下になる史上最強の生物の姉がいるからだ。
何をするにも姉さんと比べられた。
姉さんはおかしい。
無能力者なのにビームを出すし、瞬間移動も超回復も朝飯前で、なんでか分からないけど不死の僕を殺せる…
そんな桁違いの姉と比べられながらもなんとか生きて来たのだが、今から22年前、僕が13で姉さんが16の冬、父さんの浮気がバレた。
父と母の離婚に父の隠し子発覚、グレる姉。
正に地獄の日々だった。
そんな日々を終らせたのは、姉さんの結婚だった。
グレにグレ、高校卒業後、完全に家に帰らなくなった姉さんは、駆け落ち同然で洋菓子店でバイトしているヒーローの家で同棲していたが、年頃の男女が2人、何も起こらない筈もなく、姉さんが妊娠し、婚姻届を出したと報告した。
それから、武生院自体は荒れたが、光の誕生を気に落ち着いた。
落ち着いたが、僕は姉さんが継ぐ筈だった武生院の後継者として、死ぬ様な鍛錬に励んだ(能力がなければ、多分何百回か死んでいた)。
そして、甥っ子や姪っ子たちと戯れながら姉さんにボコられ、武生院の後継者として問題ないレベルに達したと父に告げられ、世代交代した。
そんな僕の寝室に忍び込んだ人。
「神也さん…大胆ですね…」
勝手に全裸になった茶髪美女。大胆なのはお前だよ!!
「あら…武術の達人でも、女性には慣れていないのですね…大丈夫です、全部私が教えて上げますからぁ!!」
僕は変な女に襲われていた。
僕の2番目の不憫、それは彼女に限らず、変な女しか寄って来ないことだろう…




