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留学生と高嶺の花

「おはよ〜!!」

「うぇ~い、おはよ〜凛樹〜。」

 連休明け、ハイテンションで挨拶している集団を鬱陶しく見ながら私は自分の席に着く。

「ヤバッ!!凛樹、マジで補習出てたんだぁ~。」

「マジマジ!!ママブチ切れで超ヤバかった~。マジありえんくない!!」

 ブーブー乏しい語彙力で愚痴を言うバカ。

 ありえないのはお前の頭だよ…

 そう思いながら1人デバイスに写った書籍を読む私。

 華やかなこいつらが私は嫌いだ。


 なにより…

「れーちゃんなに見てんの~?」

 躊躇いもなく私の背から抱き着く一等綺羅びやかなこのバカ女…背中に当たる自己主張の激しい柔らかいそれは、劣等感を刺激する。


 私、美波(みなみ)麗香(れいか)は、百道凛樹が大っ嫌いだ!!



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 『都立英雄(ひでお)高校』都立で唯一能力者だけが入学出来る、ヒーローを志す者や、能力を活かした仕事に就く為の『能力科』という特殊な学科を扱う総合高校である。

 因みに偏差値は結構高く、『能力科』に関しては全国トップの倍率を誇り、在席している生徒は全員エリートと呼んでも差し支えない。

 そんな超優秀な生徒の中でもずば抜けた生徒といえば、私の同級生、つまり2年の百道光くんだろう。

 既にトップヒーローの確約を獲た特例の学生ヒーローであり、学業もトップクラスだ。

 背も高く、顔立ちも良い、完璧超人で、きっと、極度のシスコンじゃなかったら、モテモテだっただろう。


 そんな超人同級生が、校門で金髪の女の子と言い合いをしている。


「アンタ!!よくも昨日は置いていってくれたわね!!」

 凄い剣幕で百道くんに食って掛かる女の子。英雄高校の制服を着てるってことは、ウチの生徒なのだが、見たことのない子だった。

「なんでお前がいんの…」

 対する百道くんは心底嫌そうな顔で女の子を見ていた。

「私だって好きでいるわけじゃないわよ!!」

 女の子は大変ご立腹の様子で、いろいろと不満をぶち撒けている。

 …ってか、あの子レインボークリスだよね…

 なんで世界的なヒーローがウチの制服着てるの…

 全く状況が分からない。

 そして誰かに聞こうにも、友達がいない私にはそれが出来ない。


 とりあえずよく分からないけど、2人の言い合いを所々盗み聞きした結果、連休中にあのシスコンの百道くんが妹よりも優先して一緒にいたのなら、彼女ということなのだろう。

 青春ぽっくっていいなぁ…

 彼氏どころか友達もいない私には2人が眩く見えた。


 黒瀬香紅璃、まだ誰のものでもありません。

 


−−−−−−−−−−−−−−−−−



「クリスティン・メイトリクス。大変不本意だけど留学生として1年間一緒に過ごすわ。」

 レインボークリスこと、私、クリスティン・メイトリクスは、留学生として都立英雄高校能力科2年の教室でそう挨拶した。

 それからは人だかりが私に絶えず質問を繰り返す。

 鬱陶しいけど、正直嫌じゃない。

 チヤホヤされるのは大好きだ。


「凄〜い!!レインボークリスって世界的なトップヒーローじゃん!!」

「可愛い〜!!」

「ってか、滅茶苦茶スタイルいい〜!!」

 私を褒め称える生徒たち。別のクラスからも大量の生徒が押し寄せ、押すな押すなの大騒ぎ。

 自尊心が強烈に刺激され、凄く気持ちがいい。

 私は元来の目立ちたがり屋だと自覚しているし、それを力に変えることが出来ることも知っている。

 今は最高の状況だ。

 ただ、気に入らないことが2つある。

 1つはあの武生神娘の息子、あの日私を置いて行った百道光と同じクラスだということ。

 そしてもう一つが…


「あいつなに?」

 教室の片隅で1人、静かにデバイスで勉強をしている少女。

 誰とも群れることもなく、1人誰も手の届かぬ花の様に座る彼女は、この私が認める程の美少女で、私に負けず劣らずのスタイルに見惚れる様な長い黒髪。

 1人だけ別の世界にいる様な佇まいは、触れてはならないという雰囲気を醸し出していた。

「香紅璃様だよ!!黒瀬香紅璃様!!」

 ハイテンションな女子生徒がそう言う。

 様付け…

「香紅璃様はね、ここ数十年連続、優良ホワイト企業ランキング一位の黒瀬グループの社長令嬢で、文武両道容姿端麗、完璧超人で非公式だけど、英雄高校の憧れの女子生徒第一位なんだよ!!」

 そう力説された。

 なるほど…私の考えた最強のお嬢様みたいな奴らしい。

 私と同じね!!


 ガタン!!と立ち上がり、人だかりを押し退けて黒瀬香紅璃に近付く。

「黒瀬香紅璃!!」

 バン!!と勢いよく彼女の机を叩きそう名前を呼ぶ。

「…っ!!えっ…!!なに!?」

 余程集中していたのか、驚いた様子でキョロキョロし、漸く私を見たかと思えば、目を見開き、ワタワタとし始める。

「レインボークリス…じゃなかった…メイトリクスさん…あの…私なんかになにか用事でしょうか…あの…お金なら少ししか持ってないです…」

 今にも泣き出しそうな、蚊の鳴くような声でそうボソボソと言う黒瀬。

「アンタ…嘘でしょ…」

 高嶺の花などなかった。

 いたのは、ただのコミュ障美少女令嬢だった。


 なんか設定がズルいと思った。






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