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秘密結社ブラックラピッズ

「いや、いないけど…」

 肉塊から人の姿に戻った直後、謎の外国人女性に交際相手の有無を訊ねられ、正直にそう答えた。

 僕の返答に小さくガッツポーズをした彼女は、一歩僕に近付き、

(わたくし)、アイギス・シュバリエと申します。武生院の御当主とは知らず、数々の御無礼をお許し下さい。」

 恭しく一礼する。

「あー…これはご丁寧にどうも…」

 よく分からない状況だが、とりあえず僕も頭を下げる。


 とりあえず、シュバリエさんという彼女への印象は、『美人だけど変な人』だった。




−−−−−−−−−−−−−−−−−



「ただいま…」

 クリスティンという破天荒バカ女のせいで無駄な疲労感に襲われた俺は武生院の門を潜る。

 クリスティン?奴はとんかつ屋の入口にある食品サンプルを食い入る様に眺めている間に置いて来た。


「神也さん!!私、これでも元ヒーローでして、武生院に相応しいと思うんです!!」

 叔父を執拗につけ回す茶髪の美女。

「ママごめんなさい!!」

 叱られる(凛樹)

「お嬢ちゃんがやったんだよね?」

 警察とヒーローに事情聴取されている(氷華)とフォローに回る(岩穿)


「なに、このカオスな空間…」

 このカオスはこれからの序曲でしかなかったとを、この時、俺は知る由もなかった。




−−−−−−−−−−−−−−−−−



 大型連休最終日の河川敷、連休中に様々な団体がBBQやなんやを行ったことで散らばったゴミや放置された道具などを回収する集団がいた。

 年齢、性別も様々だが、皆が一生懸命に清掃を行っている。

 そんな集団の指揮をとりながら、先頭に立って清掃を行う中年男性を私は眺めていた。

 

 私の名前は『黒瀬(くろせ)香紅璃(かくり)』表向きは高校2年の華の乙女なのだが、もう一つの顔をある。

 それは、秘密結社ブラックラピッズの構成員であり、次期総帥という望まないのに決められた未来である。

「私も遊びたかった…」

 不機嫌に河川敷を眺め、そう呟く。

 この連休中は、ブラックラピッズの活動に(強制的に)駆り出され、遊ぶ時間はなかった。

 貴重で限りある学生としての時間を、なんでこんな風に過ごさなきゃいけないんだろう…

 諸悪の根源である男を睨みながら、デバイスに触れる。

「みんな楽しそう…」

 映し出されるのは同級生たちが上げる楽しそうな写真。みんなそれぞれ、いろいろと楽しんでいる。

「いいなぁ…」

 サァーと吹いた風に、私の長い黒髪が靡く。

「そもそも、誰も誘ってくれなかったなぁ…」

 私には友達がいなかった。


「毎年ありがとうございます。」

 そう言って冷えた飲み物を差し入れする近所の住人たち。

「そんな、ただみんな好きでやってるだけですから。」

 人の良い笑顔でそう答える男。

「ホント、ヒーローよりもヒーローだわ、黒瀬さんは。」

 そう、この人の良さそうな中年男性が秘密結社ブラックラピッズの総帥にして私の父、黒瀬堰臣(せきおみ)である。

 因みに総帥は裏の顔で、世間的には黒瀬グループという、そこそこ大きい会社の社長である。


「さあ、仕上げだ。香紅璃、ずっとサボってたんだから最後くらい仕事しなさい!!」

 河川敷の上に座る私に父が少し大きな声で言う。

「サボるもなにも、来たくないのに無理矢理連れて来たのお父さんじゃん…」

 聞こえない程度の声で不満を漏らしながらも立ち上がり河川敷に降りて行く。


 一箇所に集められたゴミはそこそこ大量で小さな山を作っている。

「なんで私が…」

 そう溜息を漏らしながら私は能力を使う。

 ゴミの山をズォッと黒い球体が覆う。ベコベコと音を立てながら球体は徐々に小さくなっていき、最終的にピンポン玉よりも小さくなった。

「香紅璃の能力はゴミの片付けに便利だ。」

 そう綺麗になった河川敷を見て満足そうに頷き父。

「多分、私の能力そういうのじゃない。」

 私の能力は『闇の操作』、影を操ったり、簡易なブラックホールを作ったりと、我ながら結構凄い能力だと思うのだが、何故か父はゴミ処理用の能力だと思っている。


「さて、みんなお疲れ様。それじゃあ、これから毎年恒例のアレだね。」

 父は、そうボランティア活動に参加しているブラックラピッズ構成員たちに宣言した。

 全員が準備された車輌に乗り込み、目的地に向う。

 到着したのは我が家。

「とりあえずみんな汗かいてるからお風呂入ってさっぱりしよう。」

 我が家はそこそこお金持ちなので、大浴場がある。

 男女に分かれて交代で入浴を済ませた後、大部屋に皆が集まる。

「お疲れ様でした~!!」

「「「お疲れ様でした~!!」」」

 宴会が始まった。


「黒瀬社長って、理想の上司だよね。」

「あの人の為なら死んでもいい。」

 ブラックラピッズ構成員は私を除き全員黒瀬グループの社員だ。優良ホワイト企業ランキング一位の黒瀬グループ。週休3.5日と手厚い福利厚生に各種手当、従業員の幸せを第一とする父の会社。従業員からは異常な程慕われる父は、狂信的とも思える程父の為に従業員が働く。

 社長の為に、と皆が自主的にブラックラピッズに参加している。もっとも、ブラックラピッズが世界征服を企む秘密結社であるのだが…

 因みに、社員のみんなは、世界征服をする秘密結社と説明されているのだが、それは父の冗談でブラックラピッズを社長主催のボランティアサークルと本気で思っている。

 多分、それで間違っていないと思う…





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