肉塊と秘書
「何者です…アナタ…」
謎の肉塊が想像の何十倍も強く、息も絶え絶えにそう言う私。
「何者も何も、僕が武生院の現当主だ!!君こそ何者だ!!」
ぷんぷんと怒る肉塊。
「は?」
意味が分からなかった。武生院といえば、世界中に名が轟き、世界中に門下生を抱える、近接戦闘最強を誇る武術の総本山だ。
そんな武生院の当主がこの肉塊!?
確かにこの肉塊は強いが、武生院の当主は武神の異名を持つ紅雪で、次代は武神を超えるあの武生神娘の筈…
「騙されませんよ…武生院の当主は肉塊ではない!!」
再度戦闘態勢をとった私。
「何か誤解しているらしい…後ちょっとで戻るから少し待ってくれないかな?」
何かを察したのか、肉塊がそう言った。
数秒後、信じられないことに肉塊が人の姿になった。
「武生神也。35歳、武生院当主です。」
爽やかな男前がいた。
「あの…お付き合いされてる方とかいますか?」
私…アイギス・シュバリエ、29歳独身。
現実、絶賛婚活中です。
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「んで、白毛玉…テメェ、ウチの娘に手ぇ出してねぇだろうな?」
戦利品を整理しながら、尋常じゃない殺気を漏らして言う女性は、最強の生物武生神娘。
「…氷華ちゃんも凛樹ちゃんも、僕にとっては命の恩人です。…命に変えても守りたい。そう思っています。」
正座しながら僕は耐え難い殺気に、今にもゲボを吐きそうになりながら答える。
「テメェに守ってもらう程、ウチの娘は弱くねぇよ。それに、テメェが守らなくとも、私が守る。」
最強生物にそう言われると立つ瀬がないし、そもそも、僕よりも遥かに強いあの子たち。
「テメェがやるのは百道のペット…氷華の遊び相手だ。それ以外は必要ねぇ。余計なこと考えずに、氷華と遊べや、白毛玉。」
圧倒的な殺気。しかし、その節々から漏れる母親としての気持ちが見えた。
確信はないが、家族の一員として認めてくれたのだと僕は思った。
「はい!!氷華ちゃんの遊び相手も、凛樹ちゃんの宿題も任せて下さい!!」
そう頭を下げて言った僕。
「…凛樹の宿題?」
今までの殺気が児戯に思える、押し潰され、全身から血が吹き出る様な殺気を放った神娘様。
ごめん、凛樹ちゃん。
僕地雷踏み抜いた。
数秒後、本殿の方から聞こえた凛樹ちゃんの悲鳴に僕は無言で頭を下げた。




