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見えぬ進退

「もんじゃ最高じゃない!!」

 もんじゃ焼き屋を数店、全メニューはしごを達成したクリスティンお嬢様は満足そうに言う。

「最高じゃねぇよ…最悪だよ!!」

 そんなバカ娘の頭を、私は本気で殴った。

「昼食食べたばかりだろ!!なんでそんなに食うんだよ!!またホテル代無くなったじゃないですか!!」

 もうヤダ、このお嬢様…

 上司…というより社長の娘だが、もう容赦しない。

「貧乏留学とか聞いてない!!ちょっとリッチで楽な出張だって言ってたのに…」

 食費で消える仕送り。まだ留学も始まってないのだ。

 食欲の化身である超高燃費なヒーロー娘が憎くなってきた。

「ア、アイギス…怒ってる?」

 私の渾身の一撃を頭頂部に受け、涙目でそう聞いて来るクリスティンお嬢様。

「怒ってないと思うなら、今すぐ眼科に連れて行きますけど?」

 拳を握りながらそう言う。

「ごめんなさい…」

 そう謝るクリスティンお嬢様の頭をペシペシ叩きながら、私たちは武生院へと向う。


 最強の無能力者(武生神娘)とその頼りない旦那、アホな娘と共に。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 遂にこの日が来た。

 

 武生院に百道の家族(ペット)として保護された僕は、幸せな数日間を過ごした。

 しかし、それも今日で終わり。


 武生院に入ったファミリーカー。

 その助手席に座る人物が僕の生殺与奪権を持っている。

 そんな、助手席から降りた彼女に、氷華ちゃんが駆け寄る。

「ママ!!」

「氷華、いい子にしてたか?」

 そう言いながら、愛おしそうに氷華ちゃんを抱きかかえ、頭を撫でる彼女は普通の母親にしか見えない。

 しかし、彼女があらゆる生物の頂点だと本能的に思い知るまで時間は必要なかった。


「ママ、モフ白飼っていい?」

 氷華ちゃんの可愛らしいおねだり。

「モフ白?」

 そう言った彼女は武生僕が隠れる武道場を一瞬だけ見た。

 直接目は合っていない。だが、全てを見透かされた様な視線と押し潰される様なプレッシャーを感じ、胃の内容物が込み上げてくる。

 恐怖、圧倒的恐怖。

 生物として、どう足掻こうと勝てないと本能を強烈に刺激し、脳が麻痺する。

 逃げることは出来ない。戦うなど以ての外、自殺に均しい。あるのは服従のみ、そう生物としての本能が示す。

「家では飼えないだろ…あのサイズ。」

 彼女はそう呟き、武道場を見て言う。


「小さく畳んでやる…さっさと出て来い。」

 放たれた殺気は、それまでの比ではない。

 具現的になる死のイメージ。指一本動かせば死という圧倒的恐怖が、僕の身体を完全に硬直させた。

「出て来ないか…仕方ない…」


 最強の無能力者、武生神娘こと、百道家の母。

 そんな彼女が一歩、たった一歩近付いた。

 そこで僕の意識は途絶えた。

 








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