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最強だけど割りと繊細

 ママは強い。


 水色のランドセルを背負いながら歩く百道家の次女氷華は、登校途中にヴィランに襲われていた。

 小学校は鬼の住む地。

 そう教わり、入学までに母から身を守る術を叩き込まれた。

 氷華は『冷気を自在に操る』という、生まれ持った恵まれた能力を持っている。

 それは、大気中の僅かな水分さえ凍らせ、一面を氷の世界に変えることが出来る。

 そんな能力を使いこなす為に、小学校入学までの1年間、毎日母と戦っていた氷華。


「鬼って弱い…」

 自分を誘拐しに来たヴィラン数名を氷漬けにし、遠い目で空を見ていた。

「鬼よりもママの方がずっと怖い…」

 あの1年を思い出した氷華は、通報を受けたヒーローが到着した時、ピカピカの1年生にも関わらず、死んだ目で聴取にそう答えた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 清楚でありながらも色気を放つ整った顔立ちに、膝まで伸びた艷やかな漆黒の髪に色白の肌、豊かに実る胸に引き締まった腰回りと安産型の臀部。

 誰もが振り向く長身の美女。

 そんな類稀な容姿の妻は、4人の子を産み、四十路に入る目前というのに、見た目は二十代後半でも通用する程に若々しい。

 

 そんな妻は、気絶した光を部屋に放り込んだ後、ドカっと不機嫌そうに居間の椅子に座る。

「プリン!!」

 そう一言言って、ムスッと膨れている。

「固い方がいい?」

 立ち上がり、そう問う僕に、無言で小さく頷く。

「はい、固めのカラメルマシマシ。」

 そう言って差し出す自家製プリンを受け取り、無言のままスプーンで一口掬い、口に運ぶ。

「光がクソババアって言ったぁ~!!」

 涙を零し、泣きじゃくりながらプリンを食べる神娘。

「母ちゃん、母ちゃんって、あんなに引っ付いてきてたのに〜!!」

 10年以上前の記憶の息子と現在反抗期の息子のギャップに、ショックを受ける姿に史上最強武術家の姿はなく、ただ一人の母であった。

 

「まあ、反抗期だから仕方ないし、神娘もやり過ぎだよ…」

 こんなやりとりが毎日続いている。

「だって…ムカつくんだもん。」

 グスグスと鼻をすすりながら言う神娘。

「私の可愛い光はどこへ行ったんだよ!!あんなクソガキに育てた覚えはない!!」

 そう叫んだかと思うと、

「それでも可愛くて仕方ないんだよ~!!」

 と机に付して泣き出す情緒不安定な妻を見ていた。

「そういう年頃だし、仕方ないんだよ…あと数年すれば分かる。そういうもんなんだよ…」

 そう実体験を元に言う僕。こんなやりとりを毎朝している気がする。


 偶には気晴らしも大事だ。

 幸い、今日は店休日。

「神娘、今日は一緒に買い物でもしよう。」

 そんな僕の提案に、神娘はパアッと顔を上げた。






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