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悪鬼羅刹

 真っ赤なTシャツ。大きく実る双丘で引き伸ばされた『百道のプリン』というプリント。

 数分前にまで、このTシャツが真っ白だったという面影はない。

「煩わしいんじゃ!!ボケェ!!」

 暴れ回るその人物から放たれるビームが、無限に湧き出るヴィラン軍団の大元ごと消し去る。

「手加減してやってんだ…出てくるなら今の内だぜ?」

 返り血に染まる悪鬼羅刹の笑み。

 そこに存在するのは、正義(ヒーロー)でも(ヴィラン)でもない、1人の元ヤン妻。

 武生神娘は今だ現役。

 そうヒーロー協会とヴィラン連合に再度大きな鎖を打ち付けた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「なんだよあの化け物ババア!!」

 会場を襲撃したヴィランの親玉、季楽(きら)九印(くいん)は、想定を超える存在に計画が崩壊していく事実と、我が身に迫る脅威に取り乱していた。

 最強の無能力者。

 その存在は噂で知っていたが、これ程とは思っていなかったし、そもそも、この会場にいるとは思っていなかった。


 慌てて逃げる準備をしていた時だった。

「誰がババアだって?」

 額に青筋を立て、拳を握る悪鬼羅刹の殺気剥き出しの笑み。

 そこで悟る。


 死んだわ、俺。


 地平線を超える衝撃波を伴う拳の一撃が、俺の横を掠め、意識を刈り取られた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「よかった、無事みたいだね。」

 息を切らしながら私に駆け寄る武生神娘の旦那、百道乱鶯。

 エネルギー切れを起こし、武生神娘の無双する様を眺めていた私は、百道乱鶯に質問した。

「ビーム出してたんだけど…?」

 神速の攻撃と理解不能なビーム。

「あれは神娘の通常攻撃だよ。本気で暴れなくて一安心だ。」

 そう安堵の溜息を吐く男に、なに言ってんだこいつ。という感想しか出てこない。

「本当にあの女は無能力者?絶対に能力者を超えた何かよ!!」

「クリスティンちゃん…神娘だから仕方ないよ。」

 そう答える男。


 夫婦揃って駄目だ、こいつら…

 

「手応えのねぇ奴らだ…」

 血の匂いを漂わせながら、ユラリと現れる武生神娘。

「神娘、顔洗って着替ないと。」

 そう言って妻に駆け寄る夫。

「乱鶯、怪我は無いか?」

 そう言って夫の身体を撫でる。

「神娘のおかげで無傷だよ。」

「そうか…良かった…お前に傷でも付けられたなら…」

 ヒシッと抱き合い、ピンクのムードが流れそうだった。


「全殺ししなければならなかった。」

 うっとりと夫に抱き着く武生神娘。そこから放たれる殺気に、色気等皆無で、あるのは恐怖だけだった。


 もうヤダ…祖国(くに)に帰りたい。

 来日2日目、最強の無能力者を前に私はホームシックになった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「モフ白…」

 そう言って怪獣に抱き着く氷華。

「答え教えて。」

 怪獣に寄り添い、宿題を解かせる凛樹。

 俺の可愛い妹を誑かす怪獣。

 今にも消し去る勢いで攻撃を繰り出そうとしている俺を、

「母さんが怒るんじゃ…」

 そう心配する岩穿の言葉が正気に引き戻す。

 

 我が家の母ちゃんは、世界に存在する全ての頂点に君臨する化け物だと言っても過言ではない程強いしおっかない。

 そんな母ちゃんが駄目だと言えば、この怪獣は飼えないし、なんなら跡形も残らず殺処分される。

 そう思うと可哀想になってきた。

「強く生きろ…」

 俺は怪獣の肩を優しく叩き、この怪獣の未来に幸有ることを願った。


 勿論、万が一、母ちゃんがこいつを飼うことを許可し、今の様に妹たちを誑かすのなら…


「その時は容赦しねぇ…」

 ニヤリと笑う俺。


「お兄、キモい。」

 という凛樹の言葉に泣いた。









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