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武生院②

 大型連休や長期休暇の間、百道家の子どもたちは必ず武生院に一泊以上しなければならない。

 初孫が誕生した時に、駆け落ち同然に結婚した僕たちへ、義父、紅雪が手打ちとして決めた決まり事である。

 そういうわけで、毎年数回は妻の実家に一家で顔を出すのが通例となっている。


「ほほ、今年は連休中ずっとここにおるのじゃろ?」

 氷華を抱っこして、幸せそうに言う義父。

「すみません、お世話になります。」

 そう頭を下げる僕。

 世話になるのは子どもたちだけで、僕と神娘は明日から仕事がある。

「ほれ、さっさと帰れ。」

 待ってましたとばかりに殺気全開の笑顔で言う義父。

 やはり、僕は今だ認められていないらしい。


「なに言ってんだクソジジィ。今日は泊まってくって決めてんだよ。」

 弟だった肉塊を引き摺りながら、返り血に塗れた神娘は義父に殺気を放つ。

「全く…じゃじゃ馬にしても限度があるぞ…」

 溜息を漏らす義父は、氷華を降ろし、神娘に向き合う。

「もういい歳じゃろうに…お転婆が許されるの歳は、とうに超えておるぞ!!」

 闘気を放つ紅雪と、それを拳圧のみで消し飛ばす神娘。

 父娘喧嘩が始まった。


 数分後ー


「わしが悪かったぁ!!」

 ズタボロになった紅雪が、神娘に土下座していた。

 対して、

「ケッ!!口ほどにもねぇな。」

 唾を吐き、そう言う神娘は埃一つ着いていない。

 そんな光景を見ていた者たちは、皆心に決めた。


 決して百道神娘(この人)には逆らわないと。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 百道家と武生家が一同に介し始まる夕食。

「おじいちゃん、もう大丈夫なの?」

 あれ程ズタボロにされたにも関わらず、ケロッとした様子で夕飯を取る紅雪に、氷華は心配そうにそう聞く。

「ほほ、氷華はいい子じゃの〜。これでもわし、強いから。心配はいらんよ。」

 そう言って、孫にデレデレな紅雪。


 じゃあ、あんたより強いこの人はなんなの?

 そんな疑問は、ムスッとした表情で夕飯を食べる神娘を前に、聞ける者は存在しなかった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「風呂。」

 夕飯を終えた神娘が不機嫌そうにそう言う。

「は、はい。お嬢様。」

 慌てた様子で使用人の女性たちが駆け回る。

 今でこそこんな感じだが、元々、神娘は武生院のお嬢様だ。

 多くの門下生を抱える由緒正しき武門の聖地である武生院は、結構な地位と収入を持っている。

 そんな武生院の宗家に、並外れた天性の才を持って産まれ、後継者として、幼少期は、蝶よ花よと可愛がられ、箱入り娘として育っている。

 そして反抗期を迎え、物凄くグレた。手のつけようがないのは元からだが、それに拍車を駆ける様にグレにグレた。

 そうして、今の神娘が出来上がったのだった。


 神娘が席を立った後、

「神也叔父さん、よくその状態で食べれるね。」

 岩穿は叔父だった肉塊そう問う。

「慣れてるからね。昔は毎日だった。結婚してだいぶ丸くなったし、本当に義兄さんには感謝してるよ。」

 元気良く笑う彼に、武生神娘の弟という意味を知った息子は、僕に戸惑いの目を向けた。

「あれで丸くなったの?」

「うん、物凄くね。」

 そう、全盛期は洒落にならなかった。


「「よく生きてるなぁ…僕。」」

 義弟と言葉が重なった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「ねぇ、おじいちゃん。お願〜い。」

 祖父に御酌をしながら、可愛くおねだりする凛樹。

「しかたないのぉ~。」

 デレッデレな祖父は、そう言って懐からおこづかい袋を取り出す。

「おじいちゃん大好き〜。」

 そう言って祖父に抱き着く凛樹。

「ほほ、皆にもあるぞ。」

 幸せそうに惚けた顔で、祖父が俺たちを見て言う。

「あれ〜?凛樹ちゃん?」

 小遣いを貰った凛樹は、用済みとばかりを自分の席に戻っていた。

 うん、現金な凛樹も可愛い。 

 

「おぉ、そうじゃった、光。」

 小遣いを渡される際、祖父から呼び止められる。 

「なに?じいちゃん。」

「お前、ヒーローになるんじゃろ?格闘術なら何時でも教えてやるぞ。」

 願ってもない申し出だった。

 もっと強くなりたい。

「じゃあ、あのビームの撃ち方教えてくれよ。」

 母が放つ謎のビームを身に着けたかった。


「すまん、無理。」

 遠いところを見つめる祖父。

「あれは武生の技ではないからのぉ…」

「じゃあ、なんなんだよ?」

「知らんよ。あんなの撃つの反則じゃと思わんか?」

 俺の問いに、祖父は情けない顔で言った。

 

 俺の母は何なのだろう?


 そんな疑問が増大した。








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