正義も悪も己が利の元に動く
「『武生神娘』の弱点はないのか?」
そんな議題の元、ヒーロー協会上層部が緊急招集され議論されている。
ヒーローの存在意義は、敵とは、ヒーロー協会の一方的な共存関係にある。
ヴィランの脅威が無くなれば、ヒーローの存在意義が無くなる。
一方でヴィランにとってヒーローが存在しなくなれば我が世の春だ。
では、ヴィランを根絶し、ヒーローも廃止すればいい。
そんな意見がある。
それこそ以ての外、脅威が去り防衛機能が消失した後、新たな脅威が出現した時に、『太刀打ち出来る防衛機能が消失して対処出来ません』では話にならない。
目先のことだけでなく、長期的に、且つ臨機応変に先の先迄見据えなければ平和は異常出来ないのだ。
ヒーローはヴィランを殲滅し、不要な存在となれ。
そんな一部の世間の声が過剰に報道され、風向きが悪いヒーロー協会。
そんな協会…いや、平和への未来に対し重要な局面を向かえたヒーロー協会本部、その第一会議室では、己たちの利益だけを考えた会長、重役たちによる行き当たりばったりな会議が行われていた。
その議題は、ヒーロー協会としてあるべき姿に戻す為のものではなく、目下の脅威に対してのみ議論される。
「『魔王の泥』を操った『イトスギ』なるヴィラン連合をどうするかだろう。」
「分かりやすい敵それを倒すヒーロー協会、バカな民衆にもウケが良い。」
「そもそも、守られる側のバカな民衆の声を気にすることがおかしい。いっそヴィラン共を思う存分暴れさせ、バカ共を排除しても良いだろう。」
「それで賢い者だけを助けると?ヴィランとバカ共、一斉清掃というわけか。それもいい。」
下衆な笑い声を上げるヒーロー協会の重役たち。
「邪魔になるのは『武生神娘』か…」
そう呟く会長。
「おい!!あの無能力の阿婆擦れの弱点はないのか!!」
そう怒声を秘書官に向ける重役の1人。
「ひとつだけ…弱点といえるのか分かりませんが御座います…」
秘書官はそう言って大きく息を吸った。
「最悪の場合、全てが終る覚悟があるのでしたら!!」
唯一の弱点、それを突くメリットとデメリット。
勝機とリスク、それを天秤に掛けた場合、リスクに9割9分9厘傾くと秘書官は宣言した。
あの惨劇を知る者として。
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「如何に最強の生物といえど、弱点くらいはあるものです…我らが『イトスギ』の為、徹底的に『武生神娘』…『百道神娘』を洗いなさい。」
そう自らの配下に告げる。
独断専行、絶対的な脅威であり、主が御執心の女への嫉妬がそんな行動に掻き立たせる。
「我ら『イトスギ』にとって最大の弊害…『武生神娘』を殲滅しなさい。」
その命令とともに配下は動き出す。
今現在、主は『ブラックラピッズ』の殲滅とその基盤を奪うこと、そして、御執心の『武生神娘』のクローンを生み出すことに執着している。
機は今しかない。
「邪魔者は排除する…私と主の楽園建設の為に。」
1人になった執務室でコーヒーを啜りそう呟く。
「邪魔なのよ…『武生神娘』。」
怒りを顕にし、力を込めたコーヒーカップが粉微塵となった。




