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No.2とNo.1

「舞風、あと長永。テメェら大概にしとけよ…」

 そう言いながら、抑えていても溢れ出す殺気に私は怯えるしかない。

「すみません…姐さん…」

 拳骨を落され気絶した舞風を見ながら、私は尊敬する百道神娘姐さんに土下座する。

「ガキでも学生でもねぇんだ…酔っ払って喧嘩で拘置所なんざ大人のやることじゃねぇだろうが!!」

 そう怒鳴りながらも身元引受人として丁寧に手続きを行ってくれる優しい姐さん。

 なんやかんやで凄く面倒見が良いのだ。


「No.2ヒーローは随分稼げてんだろ?タクシー代はテメェが出せよ。」

 舞風を後部座席に放り込みながら私に言う姐さん。

「ぶっちゃけNo.1より稼いでます。筋肉ダルマよりもスレンダー美女のが受けが良いのは当然ですよね!!」

 たゆんたゆん揺れる姐さんと舞風そんなふたりの胸部を見ながら、引き攣った笑顔でそう言った。

「まあ、稼ぎじゃ勝ってても、実力じゃぁ負けてんですけどね…」

 タクシーの助手席に座りながら頭を掻く。悔しさを誤魔化す様に。


「それ程に強いか…No.1は…」

 後部座席で舞風を膝枕し、その頭を撫でながら姐さんが呟く。

「ええ、滅茶苦茶に強いですよ。正直勝てるビジョンが見れません。剣術とか拳術…いや、あらゆる武術を超越したパワーゴリ押しの理不尽戦法、技が通じない以上、純粋な力で勝る以外勝てねぇんですよ。」

 そう溜息混じりに答える。

 No.2という現在の地位に甘んじているが、1番上を目指す心は棄ててはいない。

 だが、まだ勝機は全く見い出せていない。

 正直、現No.1ヒーロー、アルティメーターの強さは異常で、No.2以下を突き放している。

 アルティメーターの能力は純粋な身体能力の強化。派手でも、突出した能力でもない。

 それでもNo.1に君臨する桁違いのフィジカル、凄み。能力のうんぬん関係ない強者の強者たる所以を見せつける圧倒的強さは並の天才が及ぶレベルではなかった。


「そうか…まあ、(ウチの息子)が超えるだろうがな。」

 ふふっ、と楽しそうに笑う姐さん。

「そうですね…」

 そんなNo.1を軽々と超え、比較することさえ出来ない真の最強、武生神娘に私は死んだ目で答えた。


 姐さんのせいで劣化版『武生神娘』とか言われるNo.1ヒーロー、アルティメーターだが、世界ランクで8位、前世界一位のワンマンコマンドーをして次期世界一位と称された真の実力者。

 そんな世界最高峰に挑む私たちからすれば…

「姐さん基準で強さを考えないで下さいよ…」


 あまりにも強過ぎる元ヤン主婦、百道神娘。

 そんな最高峰を超えた頂きへの憧れも尊敬も今だ変わらない。

 それと共に、ヒーローという職で生きる私にとって思うこと。

 姐さんの動き1つで仕事無くなるんじゃないか?

 

 人は生きる為に生きるのであり、働く為に生きるに非ず。

 ヒーローという生き方の限界を握るのは姐さんなのだと私は思っている。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「今日は随分と気合が入っているな…」

 日々動きが良くなるシャイニングマンこと、百道光。

 彼の妹、百道凛樹。またの名をモッチー。最高に可愛い彼女が地上波に現れたのが一昨日。その翌日の気合の入り方も尋常ではなかったが、今日はそれを超える気合の入り方…

 まるで、No.1を超える覚悟を決めた様な動きで私を攻め続ける実習生、百道光。

「母ちゃんよりも強くなる…そう決めたんだよ。」

 そう呟く彼。

「素晴らしい目標だ。」

 私はそう言いながら、光速で襲い掛かる彼の腕を掴み叩きつける。

「尤も、私に勝てたらだが。」

 伊達にNo.1ではない。

 正直、私は滅茶苦茶強い。

 元々才能があったのもあるが、努力に努力を重ねた。モテるために。

 そして今、世界ヒーローランク8位、次期1位という位置にいる。

「No.1…ヒーローを舐めるなよ小僧…才能と努力、覚悟…それでも足りぬ頂きがNo.1だ。決意程度で超えられるものではない。」

 そう冷淡に言い放つ。


 そんな簡単に超えられたら困る。

 どれだけモテるために努力を重ねたことか。

 それを可愛い妹と美人の母を持つこいつに超されるわけにはいかない。

 故に大人気なく力の差を見せつけた。

 

 気を失った百道光を確認し、ホッと一息つく。

「モッチー可愛かったなぁ…」

 自身の『推し』に毎日会える百道光が憎かった。








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