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出会いは最終決戦

 アメコミヒーローの世界みたいに、世界中でヒーローとヴィランが鎬を削るおかしな近未来。

 でも、現実はヒーロー(正義)、ヴィラン(悪)とは限らないし、その通りという時もある。

 そんな善悪共にグレーな世界で、一応ヒーローとして活動する僕の前に、本物のヒーローが現れた。


 

−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ヒーローになるにせよ、ヴィランになるにせよ、特別でなければならない。

 では、特別とは何か?

 特別とは、力を持つ者のことである。

 要するに才能のことだ。

 嘗ては、ずば抜けた身体能力や知能のことを指していたが、現在では、魔法の様な特殊能力や超能力のことを指す。

 例えば、炎を出せたり、手を触れずに物を動かせたり、そういうESP的な能力のことだ。

 そういう超常能力を大衆の為に使う者をヒーローと、私利私欲の為に使う者をヴィランと呼び日夜戦いを繰り広げている。


 そんな世界で、僕はヒーローとしてある現場に立っていた。

 トップヒーローが集結し、トップヴィランも集結したまさしく最終決戦的な戦場。

 そんな中、数合わせ要員として集められた底辺ヒーローとして、僕は隅っこの岩場で同様の立場のヒーローたちと一緒に隠れていた。


「お前は何の能力なんだよ?」

 そんな役に立たない僕たちは、修学旅行の夜の様なのりで雑談していた。

「俺は目視可能な範囲にあるもずく酢を針に変える能力。」

「わしは触れた相手の骨密度を微かに下げる能力じゃ。」

「俺は血糖値を下げる能力。」

 みんな碌な能力じゃない。


「あ、ポセイドンマンだ…」

 水系統の能力持ちでは最強とされるトップヒーローが大量の海水を敵陣営に叩き込むのが見えた。

「恵まれた能力に実家は金持ちでイケメン。同じヒーローなのになんでこうも違うかねぇ…」

 一人のヒーローが溜息を漏らす。

「本当、才能が全てな嫌な世界だ…」

 みんなが溜息を漏らし、ゼロだったモチベーションマイナスに向かう。

「まだ終わんねぇのかなぁ~、正直帰りたい。どうせ足手まといでやれること無いし。」 

 そう言うヒーローの言葉に、皆が頷く。

 そんな時、僕らの前にトップヴィランが現れた。

  

「ヤバい!!逃げーーー」

 一人のヒーローが叫ぶ終わるよりも前にヴィランの手がそのヒーローの顔に触れ、空間ごと削り取った。

「オブリタレイト…」

 トップヴィランでも特にヤバい能力を持つ者が現れてしまった。

 勝ち目は無い。僕たち底辺ヒーローが何人集まろうと、彼の力を引き立てるモブにしかなれない。

 一人、また一人と消えていく中、僕は必死に逃げた。それでも追い掛けながら消し続けるオブリタレイト。

 そして、僕の番になった時、オブリタレイトは空を見た。

 

 上空では、一基のヘリコプターが撃墜されていた。

 その爆発を彼と僕は見ていた。

 その数秒後、僕とオブリタレイトの間に、何かが降ってきた。

 轟音と共に砂埃が巻き起こる。

「お前はヒーローか?それともヴィランか?」

 そんな落下点の中心にオブリタレイトが問う。

「どちらでもない。ただの学生だ。」

 砂埃の中から返ってきた言葉に、そんなわけないだろうと、僕とオブリタレイトが無言でツッコミを入れる。

「とりあえず、アンタらが撃ち落としたヘリの分、ストレス解消されてもらうわよ。」

 砂埃の中から、黒い長髪の女性が飛び出てくるのが見えた。

 それと同時に、オブリタレイトが空の彼方に消えていく。

 トップヴィランがバイキンの悪役の様にキラン、とパンチ一発でノックアウト。

 それから彼女は暴れた。

 ヒーローもヴィランも区別なくちぎっては投げ、時には、か○はめ波の様なビームを出し、戦場を蹂躙していた。


 正義と悪の最終決戦は、無関係な存在によって終結した。

 その無関係な存在は、まるでバッティングセンターでストレス解消を終えた後の様に大きく伸びをしている。

「お嬢!!ご無事で!!」

 そんな散々な戦場に何台もの黒塗りの高級車がやって来て、黒服にサングラスの男が大慌てで飛び出し、そう叫ぶ。

「会合には遅刻か?まあいい、準備運動は済んでいる。」

 そう言って後部座席に座る女性。

 それと同時に一斉に走り出す車。

 


 これが、ヒーローでもヴィランでもない、正義か悪か分からない彼女との出会いであった。




 この時分かったのは、どう見てもカタギではないことだけだった。





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