何だか大変
「俺は死んでたのか・・・」
ガッカリする俺・・・案内人は優しく微笑むと
「お前さんの意識と身体が一体になった時・・光を目指せば生き返っていたんじゃ・・・なぜ、暗闇の方へ行った?普通、光の方へ行くじゃろ!」
俺は、なぜ闇の方へ行ったのか考えたが、分からなかった・・
「ちゃんと教えてくれれば良かったんじゃねぇ?」
「バカもん!本能で光を目指すんじゃよ!生きとし生ける者は皆、光を目指して生きるんじゃ!そこが光の届かぬ闇の中でも光を探し求めて生きる。植物だってそうじゃぞ!なのに、お前は光に背を向け闇に向かって歩いて行った。自分から生きる事を放棄したんじゃよ!」
「そんな事知らねぇよ!・・・あんた案内人だろ!ちゃんと案内しなかったから死んだんだ!あんたが俺を見殺しにしたんじゃねぇのか!どうなんだよ!」
「ワシの役目は転生先を決め、案内するだけじゃ!」
そう言うと老人は、胸元からスマホを取り出し
「お前さんの来世は何にするかな・・・」
と呟いていた・・俺はそれを見て
「もしかして!転生先はスマホで、あんたの好き勝手で決めるのか?」
「そうじゃよ!便利な世の中になって助かっとる。昔は台帳を広げて大忙しじゃったが、今は、指先でチョチョイのチョイじゃ!」
老人は笑顔で応えると
「よしっ!お前さんの転生先が決まったぞい!ネズミィーランドの「ちょっ!ちょっとまった!」」
俺は老人の話を遮り
「まさか!俺をネズミの6番目にする気じゃねぇだろうな!」
「おっ!よく分かったな!」
「だぁ~っ!駄目だ!俺ネズミになりたくねぇ!」
そして俺は、瞬時に悟った!
今が人生で一番大事な時だと!俺は両手を地面に付け、頭を擦り付けると
「お願いします!どうか来世は、頭がよくてイケメン、お金持ちの家に!」
土下座して頼み込む!
横で見ていた石井と寺田も透かさず土下座して
「俺達もお願いします!」
頼み込んでいた・・・
老人は3人に顔を上げるように言うと
「いいか、よく聞くんじゃ!来世がどうなろうと一生懸命頑張るだけじゃ!例えゴキブリに生まれ変わってもな!」
「そんな事言わずに!金本見たいにお願いします」
石井がお願いすると老人は
「あの男は特別じゃ・・・前世で多くの徳を積んでいてな、常に、いい身分を与えておる・・確か、前回は総理大臣になっておったな・・」
「俺だって、いい身分に生まれたら幸せに暮らして、たくさんの徳を積んで見せます!どうか、お願いします!」
頭を下げる石井・・・老人は溜め息を付くと
「お前さんの前世はハエじゃった。その前はコオロギにバッタじゃったが、幸せな一生を送っていたぞい」
『へっ?俺の前世・・・虫ばっかなの・・』
石井は、人間に転生出来るだけ良かったと思う事にした・・が、寺田は
「俺の来世は何でネズミな理由?」
聞きたくなっていた・・・
「空いている所で決めたんじゃよ!」
「じゃあ!俺の行いが悪かったって訳じゃないんだ・・」
「まぁ、そうじゃな・・」
寺田は、転生とは死んだ時に空いている命に入るだけ、そう言うモンかと思った・・が、俺は
「今、いい身分で空いている所ってあるの?」
聞いてみた・・
「いい身分で空いている所か・・・」
老人はスマホをスワイプしながら・・・
「政治家の息子に医者の息子・・一流企業の御曹司ってのもあるが・・・」
「じゃあ!俺を一流企業の御曹司にしてくれよ。空いてるならいいだろ」
「それは無理じゃな・・もっと徳を積まねば・・」
「俺の徳ってヤツは、どれだけあんの?」
「お前さんの徳は、マイナスじゃな・・」
「はぁ?マイナス・・だから俺はネズミなのか!」
「まぁ・・そんな処かのぅ・・」
「で、その徳って何?」
「徳とは、仁・義・礼・智・信の事じゃよ」
「その徳がないと、いい身分になれねぇの?」
「そんな事はないが、徳を積んだモノには優先的にいい身分を与えておる!お前さんでも異世界なら色々あるが、異世界は荒れておるから、お薦めせんだけじゃ!」
「ちなみに、どんな奴?」
「そうじゃのぅ・・」
老人はスマホを見て・・
「・・王子に最強の剣士の長男。超凄い魔法使いの子供もあれば、魔王の息子ってのもあるが・・」
「それって、俺でもなれるの?」
「なりたいなら、なれるが・・」
と老人が応えると、すかさず石井が
「俺を王子にしてください!」
頭を下げ、寺田は
「俺は、超凄い魔法使いの子供で!」
と頼み込んでいた。
俺は、最強の剣士の長男か魔王の息子のどっちにするか考え・・
「魔王の息子でお願いします!」
そう言うと、石井と寺田がビックリした顔で俺を見る!
「お前、バカか!魔王の息子になってどうすんだ!悪を得るんじゃない徳だぞ!剣士にしとけ!剣士に!」
石井がそう言うと寺田も
「そうだぞ!魔王の息子になっても徳を積めない!小森!よく考えろ!」
「最強の剣士の長男でお願いします・・」
土下座する3人に老人は
「異世界で生き抜くのは大変じゃぞ!」
「俺達、頑張って徳を積んで来ます!」
3人は声を揃え応えると、老人は
「お前達の徳を積みたいと言う意気込みを忘れぬように、記憶を残したまま転生させてやる・・」
そう言うと、辺りがパッと明るくなった・・
新に大勢の人が並んでいるのが見える・・・
案内人の老人が地面に転生輪を出現させると
「お前達3人で宣誓をして、飛び込むんじゃ!」
と言って姿を消した・・・
俺達は声を揃え
「宣誓!我々、転生者一同は・・」
3人で宣誓を終えると、石井と寺田は笑顔で来世へと旅立って行った。が、俺は飛び込みながら、最強の剣士の長男って厳しく育てられ死ぬほど鍛えられそうで、何だか大変そうだなぁ・・と気が重くなっていた・・・
(終わり)