何だか哀しく
宣誓をした金本は、地面に開いた光の輪の中へ飛び込み、笑顔で来世へ旅立って行った・・
その後に続き、光の輪へ飛び込んで行く人達・・・俺の不安が増して来る・・
『転生先が決まってない俺が飛び込んだら、どうなるんだろ・・』
誰か教えてくれる人が居ないか、キョロキョロ探し出す・・・石井と寺田も俺を心配して・・・
「お前・・どうやって、ここに来たんだ?」
寺田が聞いた事に俺は
「暗闇の中を歩いてたら、ここに来てたんだよ」
「そうか・・・なるほど・・う~ん・・」
目を閉じ、腕を組んで考え込む寺田・・・
「お前は、まだ死んでないのかもしれないな・・」
と呟いた・・
「そうなのか!」
俺が驚くと、寺田は
「俺達は今、生と死の狭間に居るだろ・・俺と石井は死んで転生先も決まり、ここに案内されて来たんだが、お前は、さ迷って紛れ込んだだけかも」
「俺、どうすればいいと思う」
「そうだな・・気にせず、光の輪の中に飛び込めばいい・・生きてんだから目を覚ますだろう・・」
「なるほど!」
俺は素直に納得した!
大勢いた人が次々に光の輪に飛び込んで行き、残すは俺達3人だけになっていた・・
寺田と石井が光の輪に飛び込むのを躊躇していたので、俺は
「先に行っていいか!」
と輪の中に飛び込んだ!
俺の足先が光の輪に触れた瞬間!光の輪は消えて無くなり、辺りが真っ暗に・・・
「えっ?」
輪の中に入れば目覚めると思っていたのに、まさかの展開に
「おい!どうなってんだよ、寺田!お前が気にせず飛び込めって言ったんだぞ!」
俺は、寺田に責任を押し付けた・・
「そうだな・・ダメだった見たいだな・・」
「ダメだったって・・気楽な奴だな!お前!」
「仕方ねぇだろ!俺だって分かんねぇんだからよ!1人で暗闇になるよりましだろ!」
「そうだな・・」
俺は素直に納得した・・
暗闇に目を凝らす3人・・だが、何も見えない・・
「なぁ・・腹へってねぇか?」
俺が2人に聞くと
「全然」
「喉は渇くか?」
「渇かねぇ」
「だよな、俺もだ・・じゃあ、しりとりでもするか・・」
「何で?・・」
「だよな・・」
暗闇の中で何も見えない俺は、孤独と不安から話し掛けずにはいられない・・
「ずっと、このままだと思うか?」
俺の問いに寺田は
「そんな事ねぇさ・・しばらく待ってれば案内人が来るはずだ」
「本当かよ!お前、知らねぇくせに!知ったかぶりやがって!」
「じゃあ、聞くなよ・・」
「・・・・・」
俺は黙った・・暗闇に沈黙、不安を感じる俺に光が見える・・希望の光・・ゆっくり近付いて来ると石井と寺田も気付いた・・
「ほら、やっぱり来やがった!」
光の正体は1人の老人だった・・案内人と呼ばれている人物で体全体が薄明かりに包まれ、10㎝程宙に浮いている・・・俺の目の前に来ると
「お前さんじゃな・・転生先が決まってないのに転生輪に飛び込んだのは」
「そ・・そうだけど・・・」
「おかげでエラーを起こした・・設定のやり直しじゃ」
「すみません・・寺田が、俺はまだ死んでないから輪の中に飛び込めば目を覚ますって言われたもんで・・」
「いやいや、お前さんは、もう死んでるから・・」
「そ、そうなんですか・・」
俺は何だか、哀しくなった・・・