第四話 かみや
鏡。
現実の世界であればそれは見たものを写し出す道具。
しかし、ここでは違う。
鏡に映し出されたのは遊園地だった。
そこである一人と出会った。
先ほどとは違い心拍数が徐々に落ち着いてきている
見た目から歳は同じ位に見えた。
もしもの事を考えあきよしはとっさに構え何か起きた時にと、
武器みたいなのがないかと辺りを探した。
その動作を見たスーツ姿の男性は、
「驚かせてすまなかった!俺は怪しい者ではない!
ってそんな風に言ったら怪しいか…すまない。」
その言葉がキッカケだった。
あきよしは直感した。この男性は敵ではない。むしろ同じさまよい人。
しかし、安心しきる訳ではない。
様子を探ることにした。
「キミはここにずっといるのか?」
「ああ、もう3ヶ月はこの世界にいるよ。
しかし、ここは時間がハッキリしない。
遊園地の時計を見て計算したらもう3ヶ月と4日目だ。」
スーツの男性は笑いながら答えた。
(そんなにいるのか?それならここには詳しいはず…)
「飯とかは…他の人とかに会ったりは…ここは一体何なんだ!!」
あきよしは抑えていた気持ちが破裂し、声を荒げた。
「落ち着いてくれ。そんな気になるのは分かる大体の人がそうなるからな。」
「すまない。急にこの世界を自分よりも知っている人がいたからつい…」
「まずは自己紹介からでも、俺は『かみや』って言うんだ。」
(かみや?)
なんだろう。
またも違和感を感じた。
「名前は?」
あきよしは名字ではなく名前が知りたかった。
「すまない。下は何故か思い出せないんだ。
他の人たちも名字だけは覚えていて名前は思い出せないと言っていたよ。」
(思い出せない?じゃあ俺は…)
「君は?」
(名前は伏せておこう)
「俺は中山だ。隣の子はゆいって言うんだ。」
かみやはあきよしの名前を聞いた瞬間、明らかに表情が変わった。
しかし、一瞬だったためあまり気にはならなかった。
「ゆい?名前があるのか?」
わざと話をそらすようにかみやは聞いてきた。
「中山さんが付けてくれたの!」
ゆいは嬉しそうに声を上げた。
ゆいも『かみや』が危険じゃないと判断したらしい。
あきよしはかみやに今までの事を話し、疑問を問いかけた。
「3ヶ月一体何があったか教えてくれないか?」
かみやは少し考えた後、
「話せる所までならいいよ。しかし質問をしてくれないか?
大丈夫のと大丈夫じゃないのがあるからね。」
(何を言っているんだ?話せない事…?)
あきよしは少し疑問に思いながらも一つづつ聞く事にした。
「こっちに来てお腹が減らないんだ、そして疲れもしない。一体これは…」
「原因は分からないが、この世界は不思議でね、
何も食べなくても大丈夫なんだ、それどころか寝なくてもいい。疲れないんだ。」
!!
あきよしとゆいは顔を合わせた。
1つの疑問が解けた。どうやらここは体力的な問題はないらしい。
まだなぜ大丈夫かは分からないがそう言ってくれるだけであきよし達は楽になった。
「どうやって来たんだ?」
「多分、中山君と同じだと思うよ。気がついたらこの遊園地にいたんだ。」
あきよしは少し落胆した。
だか、まだ聞きたい事は山ぼどある。
別の質問に切り替えた。
「他の人って何人ぐらい会ってるんだ?
「君を含めて5人かなみんなまた違う世界に行ってしまった…。」
この質問になると少しかみやは悲しい顔で言った。
それとは別にあきよしは『かみや』の言う[世界]というキーワードが気になっていた。
(先に本題に移るか…)
「ここは一体何なんだ。どうして俺たちはここにいるんだ?」
遂に、遂に聞く事ができる。
しかし、返答は意外な返しだった。
「それは答えられない。」
「は?」
思わず声が出てしまった。
「どうしてだ?俺はそれが知りたいんだ!」
「すまない。」
かみやは目線を下の方に向けた。
あきよしは、なぜかみやが話せないかに苛立っていた。
「血文字は?この遊園地は?この通り抜ける鏡は?」
かみやはうつむいたままであった。
「中山さん…恐い…、」
ゆいの一言であきよしは我に返った。
「すまない…」
あきよしは謝ったがまだ納得はしていなかった。
「こちらこそすまない。しかし分かってくれ。これ以上は危ういんだ。」
(危うい?誰かに監視でもされているのか?)
「誰かがこの現状を見ているとでも?」
「すまない。」
かみやは未だに下を向いたままであった。
あきよしはそれでも食い下がった。
「頼む、知りたいんだ!まだ話してなかったが俺は名前を知っている。
それはこの世界では何か関係はあるのか?」
あきよしの話を聞き、かみやは硬直した。
その時のかみやの顔は喜・怒・哀・楽・疑・迷・狂、全てを顔から伺えた。
あきよしはかみやのこの顔にどういう決意が込められていたのかは知るよしもなかった。
読んでくれた人3級!