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初めての採取

 目がぁ〜、目がぁ〜とはならなかった。

 眩しいけど眩しくない。そんな暖かな光だ。真っ白で何も見えないけどね。


 光が収まると、そこにぽつんと一匹のスライム。クルシュだ。



【従魔の名付けを確認】


異体同心(貴方は私)を解放します】


【一定の友好値を確認】


異体同心(貴方は私)の使用条件が整いました】


異体同心(貴方は私)を使用しますか?】


【注意 このスキルは一度しか使用できません】


異体同心(貴方は私)を使用しますか?】


【Y/N】


 スキルの効果はわからない。でも何故か使った方がいい様に思えたんだ。だから僕は迷わずYESを押した。

 名付けをした時、クルシュから流れてきた感情は、驚愕、哀愁、歓喜。

 それに光が収まってから見たクルシュは、泣いていたんだ。



 どれくらい経ったのだろう。僕達は泣き続けていた。スキルを使用してからクルシュからハッキリとした感情が流れて来たのだ。驚いたって感情が一番で、次に懐かしいって感情、そこから一気に嬉しいと哀しいがきて、ほんとに凄く小さくて、最初よく分からなかったけど、きっとこれは怒りや憎しみだと思う。


『主人殿、見苦しいところを見せ大変申し訳ない。余りの眩しさ故に体液が溢れてしまった』


「ふふ、それじゃ僕も謝らなくちゃね。僕も鼻水が溢れてぐちゃぐちゃだよ」


「『ふふ、あはははは』」


 異体同心(貴方は私)は多分従魔との繋がりをより強くするスキルなんだと思う。一度しか使えないみたいな事言っていたけど後悔はない。クルシュの事を知れたからね。


『それで主人殿、主人殿は何故こんな場所へ?』


「あっ!そうだった!僕、依頼の最中だったんだ!」


『依頼?』


「そう!薬草とか採りに来たんだ!こういったやつなんだけど……」


 薬草をどう説明しようか迷って足元を見たらなんとビックリ!薬草だけじゃなく他の依頼のものまでびっしりと生えていた。きっとここは群生地なんだ。


「これだよこれっ!クルシュ、魔物が出たらお願いね!」


『うむ!任せてくれ!』


 僕は鞄から、折り畳んである麻袋と先のとがった鉄の棒を取り出す。キャサリーンさんから根っこに土が付いた状態で取ってこられれば査定がアップすると教えてもらった。土が残る分重く嵩張るけど折角なら喜んでもらいたいもんね。

 キャサリーンさんに言われた事を復唱しながら一本の薬草を採り終える。

 うん!これなら大丈夫かな!納得しながら麻袋に入れると、


『なぁ、主人殿。これを土が付いたまま採れれば良いのか?』


「ん?そうだよ」


『ならば私に任せるが良い!』


「えっ?」


 クルシュが僕の前に来たと思ったらぐんぐんと縦に横に伸びて行く。ペラペラの幕の様になったと思ったらファサッっと群生地に覆い被さる。


「へっ?」


 間抜けな声を出す僕をよそに、ペラペラクルシュは徐々に縮んでいくと、すぐに元の形に戻った。

 後には剥き出しの地面。草一本も生えていない。


「え〜!クルシュ、食べちゃったの!?」


『少しまて、ん〜』


 かさっ、ばさばさばさ。


 クルシュの前にどこからともなく山盛りの薬草が出て来た。山盛り過ぎてクルシュが見えない。


『久しぶりすぎて危うく使い方を忘れるとこだった』


 そう言って更に毒消し草、その他にも種類毎にどんどんと山積みにしていく。


「凄い、スライムってこんな事が出来るんだね!」


『いや、スライムだからでは無いぞ。これは私の訓練の賜物だ。いずれ主人殿にも出来よう。もっとも先程の様に一度に収納するのはこの身体であってこそ、なのだがな』


「でも凄いよクルシュ!僕も頑張って練習するから後で教えてよ!」


 褒められて照れてるのか喜びの感情が伝わってくる。


『して、主人殿。あとどれくらい必要なのだ?』


「これだけあればもう十分だよ!ありがとう!」


『主の願いを叶えるのが従魔の勤め。役に立てて何よりだ』


「それじゃ、帰ろうか!」


『うむ!』


 ここまで無我夢中で走ってやって来たから、どうやって帰ろうかと考えていたんだけどクルシュにはここがどこら辺なのかわかるらしく森の外まで案内してもらった。


『私はこんななりだからな。人に見つからぬ様、余り森から出る事は無かったが、もう長い事ここにいるのだ。この辺りは庭みたいなものだ』


 歩いて五分もかからないで外へ出られた。でもまたスライムがわらわら出てこないかな?


『臆病者故、自分より強い者がいる場合、出て来る事はまず無いだろう。私がいる限り問題ない』


 スライム(クルシュ)がいるからスライムが出てこないって、字面的にちょっとおかしいけど気にしない。クルシュが強いのは本当だもんね。

 クルシュが言った通り、森を出てからスライムは一匹も現れなかった。

 たわいもない会話を楽しみながら、そろそろ城門に到着するという丁度その時、


「主人殿!!何か不吉なものが近づいてくる!!私から絶対に離れるな!」


「えっ?えっ?」


 離れるも何も僕がクルシュを抱きかかえてるから問題ない。そして、クルシュから伝わってきたのは驚愕、動揺、そして強い警戒心だった。














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