師匠ぉぉぉ!!
「で、きた……出来た!ジルさん!出来たよ!」
「ええ、では次は……」
「今の何の音!?って、えぇーーーーー!!なにこれぇぇぇぇ!!」
リタが見たのは、木剣を振り抜いた先に出来た、どこまでも続く斬撃の跡。
「威力を抑える訓練を致す事にしましょうか」
ジルさんの指差す先、……あっ!!建物まで斬っちゃったっ!!
急いで向かった先で僕は今、猛烈に怒られている……みたい。1匹のスライムがぷんすかしてるんだけど、ごめんね、何言ってるのかわからないや。
他のスライムに触手で羽交締めされてるんだけど、このスライムは多分ビルドスライムの弟子だったかな?
そんな事を考えていたらビルドスライムがやって来た。
ここは拠点の隣にある倉庫でスタンプボアを解体していた奥の部屋。明かり取りの窓も無い部屋だったみたいなんだけど、僕のせいで今は開放感抜群になってしまった。真っ先に確認した事だけど、誰も怪我は無かったみたい。
ビルドスライムと弟子スライムは何か会話してるのかな?弟子の方が身振り手振りでプルプルしてるのを時折頷いたりしてる。
「何て言ってんだろう?」
「通訳いたしましょうか?」
「わかるのっ!?」
僕の呟きにジルさんがそう答えた。そう言えばジルさん、スライムだもんね。あれ?でもなんで今は人の姿なんだろう?
「簡潔にまとめますと、この建物を傷つけられた事による抗議と言うよりかは自分の師の作品を傷つけられた憤りとでも言いましょうか」
「えっと、直訳でお願い」
「……では、ごほん、『師匠!あの野郎が師匠の建てた建物に傷を付けやがったんですよ!!これが許せるはずは無いでしょう!!』」
あの野郎。僕の事だよね。触手でこっち指してるし。もっともだけど従魔って主に危害を加えられないんじゃないんだっけ?
なんだか心が痛いや。
「『形ある物はいつか必ず壊れる定め。それに最初にも言いましたがここは仮の倉庫。拡張する予定でした。解体する手間が省けたと思えばいいとは思いませんか?』」
師匠ぉぉぉ!!
「『だけど師匠!あの野郎が壊したのは間違いないじゃ無いですか!!』」
うっ。
「『ここは倉庫です。倉庫とは物を保管、保存する場所。倉庫としての役割を果たせない建物を建てた、我々に落ち度があるのです。ご主人様に改善点を見つけてもらいました。次はどんな衝撃にも耐え得る倉庫を建てられる様、一緒に考えましょう』」
「『!!?師匠……やっぱりあなたについて来て良かった。図面引いて来ます!!』」
ピューッと弟子スライムは飛び出して行った。
「なんか個性的なスライムだね」
リタの言葉に頷く。そこにビルドスライムが近づいて来た。
ジルさんと見つめ合ってる?何か話しているんだろうか?不思議に思っているとビルドスライムがみょーーーんと伸びて表面がぐにぐにと波打ち始めた。それが段々と落ち着いて来たんだけど……
「お目汚しを申し訳ありません。ご主人様、初めまして。私はリューティエス・アデル、近しい者は皆リュートと呼びます。是非リュートとお呼び下さい」
「あっ、僕はエルム・グローディア!こっちはリタ・フォルゼン。よろしくねリュートさん!」
「こちらこそ宜しくお願いします」
優雅って言葉がピッタリな程綺麗な礼をするリュートさん。黄金色の髪を後ろで一つに纏めているみたいだけど纏めきれていなかった髪が横から溢れる様に肩から落ちた。凄いサラサラだ!
「ちょっ、え?ちょっ、ちょっ、えっ?」
「どうしたのリタ?鳥の鳴き真似?」
くいくいと僕の袖を引っ張りながら奇妙な声を出すリタ。
「ちがっ!えっ、えっ、えっ、……エルフ!!?」
リュートさんを見ると耳の先が少し尖って、そして少し長い。
「リタ、ダメだよ。人の事指差しちゃ。それとリュートさんはエルフじゃ無いよ」
リタはななな言ってるけど話を続ける。
「リュートさんは『ハイエルフ』だよ」
僕のその言葉に何故か驚くリュートさん。
僕の住んでる村にも居たしすぐにわかった。エルフの耳はもう少し大きいんだ。エルフについては聞いた事があるだけで見た事はないけどね。
「ほ、ほほほ本当にハイエルフなんですかっ!!」
「そうですよ。でも、よく判りましたね。私がハイエルフだと。昔はよくハーフエルフと間違えられましてね。まぁ今はスライムですが」
「ふぁっ!!」
リタがよくわからない声をあげて驚いている。そう言えば王都ではエルフは見かけなかった。もしかしたら珍しいのかも知れない。
「ちょっと!エルム君!何で驚かないの!?っていうか何でわかったの!!エルフだよ!エルフ!ドワーフ、獣人、エルフに魔族!伝説の四大種族!しかもその中の伝説中の伝説のハイエルフだよ!!」
「??伝説?」
「そうだよ!!」
確かに王都では見かけなかったけど、
「リタ、その中の一人には会ってるよ?」
「はぁぁ!?あっ、もしかして先生!!?」
「違うよ?」
あれ?気付かなかったのかな?
「メリーゼさん」
「ぎ、ギルド長!!?」




