私自身を知る為に
「シュティングレイ様、私は先にスラム街へと戻ります。少しお休みになってからいらして下さい」
一礼してクリスが去って行く。
「で、お師様。二人は無事なのか?」
【天眼】で見た事を伝える。現在進行形で見てはいるのだが。
「とりあえず足止めは成功だな。まだ迷宮の森には入ってないんだろ?」
「ああ、ぎりぎりだが外縁部だ。と言っても、歩いて一月程離れているがな」
主人殿が飛ばされたのは、今私達がいる場所から迷宮の森を挟んで反対の位置になる。その場所へ行くには迷宮の森を抜けるしかなく正に前人未到。如何に【天眼】といえど見える範囲には限度がある。その先に何があるのかわからないが移動するのは得策とは言えないだろう。
見た感じ主人殿の周りに夥しい数のスライムは確認できるが害意は感じられない。放っておいて問題ないだろう。主人殿には生き残る確率を上げる為にも何が何でもスキル習得を目指して欲しいものだが。
「これからどうするんだ?」
「一度、冒険者ギルドへ向かう」
まずは私自身を知る為に。
道中これからの事をメリーゼに説明した。
「成る程な。確かに違和感があった。お師様がそう言うならきっと間違いないんだろう。それじゃあたしはクリスに合流する。あいつにもそう伝えておく。お師様は一人で大丈夫か?」
「ああ、人もどきはいるのだろう?」
メリーゼともそこで別れ冒険者ギルドを目指す。二人からは貧民街を避け東門から入るよう言われた。現在落ち着きを取り戻してきた貧民街の者達が私達を探しているらしい。あそこではこの姿もスライムの姿も見られているので無用な混乱を避ける為との事だった。
東門に到着してからはクリスより預かった用紙を見せると直ぐに通された。この程度の見張りは如何様にもやり過ごせると思えるのだが、実は不法な手段で侵入する輩を感知する様々な魔道具があるらしく大人しく正規の手段で入るよう強く念を押されていた。
ギルドへ向かう途中、【天眼】にて主人殿を確認するとスライムを従魔契約している最中だった。いくら最弱と言われるスライムであろうと主人殿の盾の代わりくらいにはなるだろう。どうやら最大契約数を調べるのも兼ねているらしい。
ようやく冒険者ギルドが見えてきた。中に入ると人もどきを見つける。
「あーら、嫉妬しちゃうくらいな綺麗なお姉さん。冒険者ギルドに何のようかしらん?」
やはりこの姿では流石の人もどきでも気付かないらしい。これも今のこの世界の弊害とでも言うべきか。
「冒険者ギルドに登録に来た。これを」
メリーゼに渡された用紙を手渡す。
「あら、ギルド長から?ちょっと失礼するわ。……ギルド長からの推薦状ねん。それじゃこれに手を当ててくれるかしら?」
言われた通りに手を当てる。鑑定球……では無いな。
【高位鑑定】の他に【隠蔽】【常時共有】【反映】、読み取れたのはこれだけ。他にも複数何かしら付与されている形跡はあるが、幾つかは偽の情報だろう。そしてやはり思っていた通り何処かに繋がっているな。まぁ、分かりきっていた事だが。
暫くの後、横に繋がっている箱からギルドカードが出て来た。
「説明の方は大丈夫かしら?ギルド長からはカードの発行だけと書いてあったのだけど」
「うむ、問題ない」
今朝方ほぼ無人だったギルド内には昨日ほどではないが人の数が戻りつつある。クリス達の話では森から現れた魔物達の討伐や貧民街での救助等、冒険者ギルドから依頼を出したらしい。もっともこの後、迷宮へと貧民街の者達が移動するのに護衛をする者もいるらしいので、ここにいる者達はある程度見切りをつけて戻って来た者達なのであろう。
早速ギルドカードを確認する。
表記自体主人殿と変わりない。名前の所に本来の名前と主人殿から頂戴した名前が二段に別れ表記されているが。
本題のスキルの項目。まだ触りの部分だが思った通り覚えのないスキルがある。もう少し確認したい所だがいかんせん阿呆のような数のスキルを覚えたのだ。時間がかかる。
「それで、依頼でも受けるのかしら?」
「いや、少し調べ物をしたい。少し落ち着ける所があれば紹介を頼みたいのだが」
「そうね、いい所があるわ」
人もどきに連れられ裏手へと入り扉を一つ潜るとどうやら隣の建物と繋がっていたらしく納品所へと出た。そこから昨日納品した際、連れてこられた個室へとやって来た。
成る程。ここなら邪魔されずにゆっくりと調べられるな。
個室へと入ると、
カチャン
音のする方へと目を向ける。何故か人もどきが鍵を掛けていた。
「何を……」
「エルム坊やはどうしたのかしら?クルシュちゃん」




