執事
とりあえず何故読み書き出来るスライムと出来ないスライムがいるかは、おいといて。
拠点の周りがおかしな事になっているのに気が付いた。
同じ様な建物が両隣に一軒ずつ建っていたのだ。しかも正面には畑が。
静かに扉を閉める。
「リタ、どうしよう。外に知らない畑と建物があった」
「大丈夫。わたしも見たから」
「しかも畑の作物、育ってたよ」
かぼちゃがドンッと育っていた。その他もトマトやきゅうりなんかもみずみずしく実っていた。
さっき食べたのはここから採ってきたんだ。
カキカキカキカキ、すっ
スライムが何かを書いて渡して来た。
『ご主人様、驚かせてしまった様で申し訳ありません。先に申し上げますと、最初ご主人様から「衣食住を充実させる」との意思が伝わってまいりました。そこで我々が各々出来る事をやった結果、今に至る訳です』
説明してくれたけど説明になってない。
『それでは各施設の案内をさせて頂きます』
そう書かれた紙を見せると扉を開けて出て行ったので僕達もついて行く。
『まずはこちらの建物ですが中をご覧ください』
連れて来られたのは拠点のすぐ左手に建てられた建物。
言われるまま扉を開けて中を見る。そしてすぐ閉めた。
「「えっ?」」
カキカキカキカキ、すっ
『こちらは縫製工場となっております。紡績を始めとして、織物、裁縫まで全てこちらで賄う事が可能となっております。なお染色ですが衣服の提供を優先させたのでもう暫くお待ち頂ければと』
建物の中を思い出す。開けてすぐにスライム達が針仕事をしていたのが見えた。
その少し奥では機織りしているスライム。
ここまでは僕ももう慣れて来た。
問題は一番奥。
巨大な蜘蛛。
糸を吐きながら八つの目でこちらを見ていた。
もうスライムじゃないじゃないか。
『では、次にこちらを』
そう言って今度は拠点の右手にある建物に案内された。
『こちらは解体場兼倉庫となっております。ただ、今は中をご覧にならない方がよろしいかと』
そう書かれた紙を差し出されたけど解体とかは見慣れているので扉を開けて見た。そして閉めた。
スタンプボアだ。ファングボアよりランクが高かった様な……ご馳走様でした。
次に来たのは畑だ。
やっぱり野菜が実ってる。ここってついさっきまで材木が置かれていた所だよね?なんで??
近くによって見てみる。真っ赤な、まさに今が食べごろのトマト。
一つ取ろうとさらに近づくと、
フニィ
足元から不思議な感触。よく見てみると……スライム!!?なっ!!スライムから生えてる!?
『こちらは農場となっております。現在作物の栽培のみ行っていますが、いずれはさまざまな用途に適した動物の飼育を行う予定です』
「エ、エ、エルム君……スライムから野菜が生えているよ」
そうなのだ。地面に根を張っているんじゃ無くてスライムに根を張っている。
『それでは一度戻ってお茶にしましょう』
混乱している僕達を残して戻って行ってしまった。
「戻ろうか」
「そうだね」
僕達も後に続いた。
拠点の中は既に様変わりしていた。左手にあったキッチンはそのままでダイニングテーブルは豪華に、右手には暖炉が。木窓にはお洒落な模様の入ったレースカーテンが付けられていた。
呆然と立ちすくんでいると、
『申し訳ありません。まだまだ改善の余地はあるのですが……』
渡された紙に書かれた内容に驚く。
「ちっ、違うよ!凄い速さで色々変わって行くから驚いたんだ!凄い立派になったから!」
カキカキカキカキ、すっ
『有難う御座います。驚いていただけた様で何より、従魔冥利に尽きます。では私共で共有している今後の改善予定で御座いますが、先程申し上げましたがまずは衣で染色。これは染料等々目処が立ちましたので、そろそろ始められると思います。次に食。こちらは食材確保については概ね完了いたしましたので後は調味料や趣向品の確保、開発になります。最後に住。こちらは現在急ピッチで増築の計画を進めております。ガラスの原料も見つかったとの報告がありましたので増築に合わせて完成させたいと思っております。以上になりますが他に希望など御座いましたら申し付けください』
「い、いや!満足です!!何かバチが当たりそうで怖いくらいです!!」
「エ、エルム君!先生もそうだったけどスライムって凄かったの!?それともエルム君のスキルが凄いの!?」
リタの言う通りだ。確かエミリーさんはスライムは誰でもテイム出来るって言っていた。であれば誰かは間違いなくスライムと契約したはず。もしこんな能力がスライムにあるなら、今頃みんなスライムを従魔にしてるはず。
『それはご主人様の魅力があってこそ。私共はただ己の持つ能力を提供するのみ。主人に快適な暮らしを提供する、それが執事としての嗜みで御座います』
執事?
すいません!諸々の事情でちょっと不定期になります!二日はあかないと思いますが何卒ご容赦を……




