モクモクモクモク
なんて冗談を言っている場合じゃない。
さっきまで何も無かったのに。しかも左手には水栓付きの最新式のシステムキッチン。
引き出しの中には大きさの違う鍋があり、また違う引き出しには木で作られた器が各種。
「きゃーーーーー!!」
リタ!?慌てて叫び声のあった方に駆け出す。
一つの扉の前でリタが部屋の中を指を差しながら口元を押さえていた。
その部屋にあったものとは……
モクモクモクモク
お風呂だ。
お湯も張ってある。ていうかお湯!?
一度扉を閉める。小さな脱衣所も湯気でいっぱいだ。
「お風呂!お風呂がある!」
「知ってるよ。作ったからね」
「違う!お湯が入ってた!」
それも知ってる。モクモクだからね。だけどそうじゃ無い。僕はいずれ作ろうと思っていたけど、でもそれは本当にいずれだ。何故なら仕組みは分かっていても作り方がわからなかったから。
そんな事を考えていたら、すぅっ、と僕の部屋に入っていくスライムが目に入った。
「??」
そっと追いかけて覗いてみる。
「?????」
ベットが整っている。いや!そうじゃ無い!マットに枕にシーツ、掛け布団まである!
スライム達は今まさにベットメイキング中だ。
こちらに気付いたスライム達はじっとこちらを見た後一礼した様な気がした。
そのまま部屋から出ていき静かに扉を閉めた。
スライム達が出て行ってから僕はベットに触れてみた。
うん。僕の好みの弾力だ。シーツも肌触りがいいし枕の高さもちょうどいい。……って、ちょっと待って!!おかしい!糸の代わりになる様なものなんて無かった筈!これ、何だ!?
だけど考える暇なんてなかった。だって今度はいい匂いがしてきたんだ。
匂いの元、ダイニングへと向かうと、
ジュー!
トントン。
スライム達がキッチンで何かを調理している。1匹のスライムが僕に気づき椅子に座る様促した。
リタは既に着席済みだ。
テーブルの上には葉野菜と砕いたナッツが散りばめられたサラダが置いてあり、続いて焼いた一枚肉が運ばれてきた。
「これ、どうなってるの?」
「僕にもわからない。とりあえず食べてみようか」
用意されたカトラリーを使ってサラダを取り分け一口いただく。……美味しい。
リタの目も丸くなってる。
「これおかしいよ!!」
おかしいおかしいと連呼するリタを横目に肉を切って食べる。豚肉っぽい。軽く振られた塩が脂身の甘みを上手く引き立たせている。うん?塩?
そういえばさっきのサラダも甘じょっぱいドレッシングがかけられていた。
コト。
新しい器が運ばれてきた。フワッと香るこの匂い。一口含む。あぁ、爺ちゃんがよく作ってくれたミソスープだ。ごろごろ入った芋と根菜の食感が堪らない!
「ふぅー、ご馳走様でした。で、エルム君。これはどういう事なんだろう?」
リタがテーブルクロスを触りながら聞いてきたけど多分それだけじゃ無いよね?
「スライム達が何かしたって言うのはわかるけど」
「部屋見た?」
「見たよ。ベットが凄い事になってた」
「わたしの部屋には天蓋ついてたよ」
僕はそこまで聞いて、やはりおかしいと感じた。殆どがおいおいやっていこうと思ってた事だったけど、すぐに取り掛かろうとは思っていなかった。もしかしたら僕のやろうと思っていた事を読み取って、どんな方法を使ったかはわからないけどスライム達が先回りしてくれたのかと思ったりもした。でも僕は天蓋付きのベットなんて考えていなかった。
ふとリタがノートを差し出してきた。
「これ、さっき言われて書き出したやつなんだけど、ここ見て」
指を指されたところを見ると『天蓋付きのベット』と書かれていた。その他にも『美味しい料理』や『温かいお風呂』なんて物もあった。
スライム達は僕の望むものだけでは無くリタの希望も叶えてくれた?僕は多分スキルでスライム達と繋がっているからなんとなく説明つくけどリタとはどうやって?
……もしかして!!
部屋の隅で1匹を先頭に規則正しく並んでるスライムの集団へと向かう。そして僕は気付いた事を聞いてみる事にした。
「君たちの誰か文字、読めるの?」
先頭にいるスライムが触手をあげた。
やっぱりそうか。リタが書き出したのを見たんだ。そうじゃないと説明がつかないもんね。そうなるともう一つ気になった。
「もしかして文字、書ける?」
もう一度触手をあげる。僕はリタにノートとペンを借りてそのスライムに渡す。
「どうして文字を書けるの?」
僕の問いかけにスライムは文字を書いて答えた。
『わかりません。書けるし読めるとしか』
これは僕のスキルでこうなったのか?でも読み書き出来るか聞いた時、このスライムしか触手をあげなかった。僕は疑問に思って他のスライム達にも聞いてみた。
すると進化したスライムは殆ど。さっきのスライムの様に進化していなくとも読み書き出来るのが数匹。書くことが出来なくても少しなら分かるのが数匹いた。
どうなってんの、これ?




