張り裂けそうな思い
暫く眺めていると突然リタが大声を出した。
「あっ!!私、わかったかも!!」
ずいっと僕にギルドカードを近づけて来て、
「頭の文字だけ読んでみて!!」
えっと、とう、ま、れん?
「とうまれんって何?」
「違うよ!最初の文字だけ!!」
そう言われてもう一度読み直す。
と、ま、れ、り、た、し、き、お、え、る、ま、で、う、ご、く、な
あっ、文章みたいになった!でも、
「しきおえるってなんだろう?」
「多分だけど、幾つかはそのまま読むんじゃ無い?例えば『止まれリタしき覚えるまで動くな』みたいな」
「しきってスキルあるの?しゅきょうとか、しゅんき、しゅんきょうとか」
「……聞いた事ないかな」
「他に同じような読み方出来ないか見てみようよ」
と言って新しく追加されたスキルを見てみたけど……
「ダメだね」
「そうだね」
まるで意味をなさない言葉になった。
「ん〜!!!絶対何かあると思うんだよね!この最後の【読唇術】って中位スキルだし!基礎スキルが並んでるのにいきなり中位スキルっておかしくない?」
こうしてる間もクルシュの感情は伝わってくる。焦ってるとはちょっと違う?なんだこれ?焦ったい?
!!!
「ねぇ、リタ。【天眼】って、どれだけ離れていても見れるんだよね?これと同時に【読唇術】使えれば僕達の話してる内容、クルシュに伝わってるんじゃない?」
「そうかも!!あっ!見て!」
ギルドカードに新しいスキルが更新された。
【星海】
「ほしうみ?」
「せ、せせせせせせせせせ星海ぃぃ!!?」
あぁ、せいかいって読むんだ。あっ!て言う事はクルシュやっぱり見えてるんだ!!
「えーっとクルシュ!さっきの所で焦ったいって気持ち伝わって来たよ!」
クルシュから、安心かな?そんな気持ちが伝わってくる。
「ここの所読み方あってるの?」
また焦ったいって気持ちが伝わる。ん〜、後なんだろう?惜しいとかかな?
「惜しい?」
わっ!正解みたいだ!なんとなくそんな気持ちが伝わって来た。
「ちょっと声に出して読むよ!と〜ま〜れ〜り〜た〜
」
今のところ伝わる感情に変化がない。
「し〜」
あっ!ここかも!
「ここの読み方が違う?」
あっ、また更新された。
【操舵】
そうだ?そうだか!
「しゅ〜、しゅん〜、しゅんかん〜しゅんかんす〜、……もしかして瞬間睡眠?」
パァ〜っと晴れやかな気持ち、達成感が伝わって来た!
「次のもそのまま強制覚醒でいいの?」
うん。いいみたいだ!
「それじゃあ、リタが【瞬間睡眠】と【強制覚醒】を覚えるまで移動しちゃダメって事で合ってる?」
よかった!合ってるみたい!て事はとりあえずこのままここにいろって事だと思うんだけどその後の基礎スキルは……!!
「この基礎スキルを僕にちゃんと使えるようになれって事?」
んっ?なんだろう?正解だけど正解じゃない?
「私達って事じゃない?」
「あっ、正解みたいだよ!それじゃ僕達は基礎スキルを、さらにリタは【瞬間睡眠】と【強制覚醒】を覚えるまでここで修行って事でいいんだね」
クルシュからは申し訳ない、寂しい、悔しいって感情が流れてくる。
「クルシュ!僕達の事は心配しないで!何かすぐにこれない訳があるんでしょ?僕達は大丈夫だから!」
「わたしも頑張ります!!」
心の中でクルシュが笑ったような気がした。
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「お師様!!」
「シュティングレイ様!!」
よかった。なんとか主人殿に伝わったようだ。しかし【睡眠師】のリタが一緒に飛ばされたのは不幸中の幸いだった。何せあの二つのスキルさえ覚えてしまえば後が大分楽になるのだからな。
今私が迷宮の森へ行っても出来る事はない。せめて後一人、私と同等かそれ以上の実力者でなければ辿り着くのも難しいだろう。
「お師匠!もういいだろッ!!スキルを切れ!」
強引に複数のスキルを重ね掛けした影響か、目や鼻から血が出てしまったようだ。
スッ
「心配かけた。主人殿にも伝わったようだし、もう大丈夫だ」
「それで、どうでしたか?」
「ああ、助かったぞクリス。あの助言が無ければ途方に暮れていたところだったぞ」
「お役に立てて何よりです」
私とメリーゼは迷宮を出た後、貧民街で指揮をとっていたクリスと合流した。
主人殿の現状を伝えてどうにか連絡を取る事が出来ないかと話すと、
「これはシュティングレイ様にしか出来ない事ですが……」
と前置き、スキルを文字がわりに使うと提案して来たのだ。ギルドカードには新しくスキルを取得すると表示される機能があるらしくその機能を使ってとの事だった。
その後すぐに迷宮入り口まで戻りクリスに大規模結界を重ねがけしてもらい主人殿と出会ってから使っていないであろうスキルを一つずつ発動していった。
しかし、リタがいてくれて本当に良かった。主人殿では恐らくこの方法では気づかなかった可能性があっただろう。
一応【天眼】を発動し続けているので今も二人の様子を見る事は出来るのだが……なんなのだ?この胸が張り裂けそうな思いは。




