規格外
出口のある麓は、雪は積もっているものの風はそこまで強くなかった。
「主人殿、階段は分かるか?地図で見てみるのだ」
頭の中の地図を確認すると今いる所より少し先にぼやけて見えない所がある。
「あそこ、地図では見えないけど階段なのかな?」
「そうだ。異なる空間が干渉するとそのように見えるのだ」
少し歩くと雪がこんもりと山になっている場所が見えた。階段だ。
「主人殿、階段を降りる前に【状況把握】を試してみろ」
早速試してみると、感覚的に現在の状況?寒いからこの場所では後これくらい行動出来るとか、付与されたスキルは大体これくらいで切れるみたいな情報がわかった。
「このスキルは少しクセがあってな。知りたいことをきちんと知ろうと思わなければ曖昧な答えしか出ない。私は空気に異常がないか調べるのによく使う。場所によって毒で満たされていたり、空気そのものが無かったりするのでな。初見の迷宮には必須のスキルだ」
空気がない?なにそれ、怖い。
試しに空気に問題はないかと頭の中で考えながら使ってみると問題ないというのがわかった。
「これも何度も使って行くうちに慣れて行くだろう。行くぞ」
そう言って次の階層への階段を降りて行く。
階段に足を踏み入れると頭の中の地図が消えた。
「あれ?地図が消えた?」
「異なる空間だからだ。また次の階層へ着いたら同じ事をするのだ」
新しい階層に出る度に作り直すんだ。
「うん。わかった」
少し降りればもう次の階層だ。
「ほう、密林か」
階段から見える景色は鬱蒼と木が生い茂るジャングルだった。
「混合か、密林のみか。主人殿、私が先行する。合図をするのでその後出て来てくれ。主人殿は地図を作るだけで良い」
クルシュを見送り地図を作る準備をする。といっても手順を確かめるだけだけどね。
クルシュが手を上げたので三人とも階層に出る。
出てすぐに【地図作成】とそれにコネクトするスキルを使う。使ったんだけど……
「クルシュ、地図がおかしいんだ」
「おお、早いな。その調子で慣れてくれ。して、どのような所がおかしいと思うのだ?」
「所々ぼやける?見えない所があるんだ。それといくつか区切られているのかな?線がぼやけて見える」
「ならば、【反響】を合わせてみると良い」
言われるまま【反響】を使う。
あっ!線はぼやけたままだけど所々ぼやけている所が無くなった!それに地図が凄い分かりやすくなった!
「大体は【透視】で事足りるが、時々効かない場合がある。そのような場合【反響】を使えば特定できるのだ。地図の精度も上がるしな」
【反響】をコネクトすると地図に木の一本一本が記されるようになった。精密な立体の地図だ!
「【透視】を使って見えない場合、隠密系統のスキルを所持する者が潜んでる場合がある。密林にはその手のスキルを持つ者が多い。【気配察知】も【生命感知】も効かぬ場合もあるので、主人殿は【透視】【反響】を順に合わせるのが良いかも知れぬな」
「クルシュはいいの?」
「ああ、慢心してる訳では無いが、問題ない」
そう言って密林へと手をかざす。
「【土流操作】【硬化】」
ゴウゥ、ゴゴゴゴゴゴ、バキャバキャ、ズゴゴゴゴ!!!!!!!!!
クルシュがスキルを唱えるとあら不思議、ジャングルが真っ二つになった。
一直線に道が出来、そこに元々あった樹々は両側に押し潰されて自然の壁になってしまった。
「お師匠は相変わらず派手だな」
メリーゼさんは呆れ顔だ。
「この方が早い」
僕とリタは驚きを通り越してしまった。
「何を呆けておる。行くぞ」
僕の相棒が規格外だと段々実感して来た。
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綺麗に固められた地面を四人で走っていると、
「クルシュ、そろそろぼやけてる線の所に着くよ」
「うむ、やはり此処は混合階層のようだな」
「混合階層?」
「一つの階層に幾つものエリアがあるんだ。最初のフロアは草原、次は雪山だけだったろ?それがここには一つの階層に対して複数のエリアがあるんだろ?お師様が最初に予想していた通りなら、この先は山岳地帯か沼地だな」
メリーゼさんがそう教えてくれた。
地図上では境目の手前にいるんだけど目の前はモヤがかかっているようで見通せない。
「主人殿、この先は山岳地帯と沼地、どちらだと思う?」
僕は地図を見ながら答えた。
「勾配の無い平坦な場所が広がっているから、沼地かな?」
「正解だ。この先沼地を進むにあたって、注意するべき点がある。それは毒だ。密林では姿を隠すのに長けた者どもが多いが沼地には毒を持つ者が多い。沼地その物が毒の瘴気を出している場合もあるしな」
「それじゃ、【毒耐性】みたいなスキルを付与するの?」
「いや、毒の場合は【毒無効】だな。耐性と言うのは言い換えれば我慢できるという事。痺れや幻覚などの状態異常程度であれば問題ないが致死性の毒には【毒耐性】は効かぬのだ。死という状態異常は無いのだからな」




