夢
なんだか賑やかな声がする。
『俺は騎士になる!』
木の枝を天高く突き出し少年はそう宣言した。
『ミトじゃ無理だね。チビだし』
『なにぃ〜!!そうゆーお前は何になるんだよ!』
『僕は大賢者さっ』
『バカには無理だろ……』
『うっ、うるさい!ミ、ミカは何になりたいの?』
『私は、シスターみたいに……なりたいな』
ミカと呼ばれた少女は、はにかみながらそう言った。
『回復術師だね!ミカならなれるよ!』
『ラルド、うるさい』
『……そう言う君は何になりたいのさ?』
ラルドと呼ばれた少年が、木の根っこを枕がわりに寝そべる少女に聞くと、
『私は昼寝出来るならなんでもいい』
『君の場合、最早昼寝じゃないけどね』
『ロイド!お前は何になりたいんだ?』
騎士になりたいと言ったミトが、一人遠くを見つめている少年に聞いた。
『僕?僕も、なんでもいいかな』
『それじゃ俺と一緒に騎士を目指そうぜ!』
『ごめんねミト。僕は騎士にはならないかな』
『なんでだよ!』
『僕はこの村が好きだからね。騎士になったら村から出なくちゃいけないじゃないか』
多分十歳くらいの子供達かな。教会の横にある木のそばで語りあっている。
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『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……なんだよあれっ!』
場面が切り替わった。
夜の山道を駆け下りた先の崖の上、その先に広がる光景に、一人の少女が叫んでるいるのが見える。
さっき出てきた少女だ。少女の視線の先には、炎に包まれた集落。炎に照らされ浮かび上がるあの屋根の形は……さっきこの子達が話していた教会のものだ。
『ミトッ!ラルドッ!ミカッ!ロイドッ!』
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今度は何処だろう?暗くてよく見えないけど、何処かの部屋の様だ。
『お前は間違っているッ!!!』
『何が正解なんて、誰にもわからないよ』
月明かりに照らされて、薄らだけど人がいるのが見える。
多分、男の人と女の人。女の人は後ろ姿しかわからない。
『貴様がやろうとしている事は革命でもなんでもないッ!!神々への冒涜だッ!!!』
『神々?そんなものが何の役に立つって言うんだ。まぁ、なんだって構いはしないさ。この理不尽な世界が変えられるならね』
『ッ!!だからと言って、人々から努力する事を奪うなど、傲慢が過ぎるッ!!何様のつもりだッ!』
『流石、【千の頂に立つ者】の言葉には重みがあるね。でもね、考えてみてよ。……死んだら、努力したくとも出来ないじゃないか』
『貴様がその様な事を成した所で、あの者達が戻ってくる訳ではあるまいッ!目を覚ませッ!!!』
『目を覚ませ?いつも寝てばかりの君が言う台詞には、とても思えないよ。……そうだ、君を新しい世界の住人の記念すべき第一号にしてあげるよ。過去にしがみつきながらいつまでも夢を見てるといい。……さよならだ』
『貴様ァァァッ!!なっ!?』
部屋一面に眩しい光が迸った。
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「……!」
「…い!」
なんだ?何か聞こえる。
「おい!しっかりしろっ!」
「うわぁっ!」
目の前にいたのはメリーゼさんだった。
驚いて飛び起きてしまった。
あれ?ここは……何か夢を見ていた様な……
ここは何処だ?……あぁ、僕はスラム街に来てたんだ。
それで、それから……
「クルシュ!!」
そうだ!クルシュがおかしくなって……
僕は慌てて鞄の中を確認する。
「クルシュ!大丈……夫……」
クルシュが……いない……
あぁ……間に合わなかったんだ……
鞄の中にクルシュはいなかった。僕はうずくまりながら鞄を抱きしめる。
「ごめん、ごめんよ。ごめん、クルシュ!!」
「主人殿!」
……………?
クルシュの声が聞こえた気がする。でもクルシュの声はもっと高くて、念話だからか、響く様に聞こえるんだ。
周りをみる。結構長い時間気を失ってしまったみたいで回復した人達が大勢いる。
メリーゼさんは目の下に凄い隈がある。もしかしたらじゃなくても昨日、あの後からずっとここにいたんだと思う。
そばにいるクリスさんも白いローブのあちこちに血が付いていて、それだけで大勢の怪我をした人を診ていたのが分かる。
クリスさんの隣にいる女の人はスラム街の人かな?クリスさんみたいなローブを着ているけど足元は裸足だ。きっと魔物に襲われて、着ていた服もボロボロになっちゃったんだと思う。
まだ整理のつかない頭でぼーっと辺りを見てたら、クリスさんの横にいた女の人が僕の方へやって来た。
そして、そのまましゃがみ、抱きついて来た。
「感謝する……私は、救われた……」
女の人は僕にお礼を言ってきた。
顔は見えないけど多分泣いているんだと思う。
でも、すいません。違うんです。
「ごめんなさい。僕じゃないんです。あなたを助けたのは僕じゃない。あなたを助けたのは僕の、……僕の、友達なんです」
クルシュの事を考えるとまた涙が溢れてきた。
女の人は強く抱きしめていた腕を優しく解き、僕の目の前に顔を持って来て、
「いいや、主人殿。私を救ってくれたのは紛れも無く主人殿だ。私の想い、届かぬか?」
その瞬間、僕は沢山のありがとうに包まれたんだ。
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