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ハズレ

『それは何故だ?』


 僕が聞こうと思ったらクルシュが代わりに聞いてくれた。


「クルシュさん、と呼んでも?」


『ああ、好きに呼んでくれ』


「では、クルシュさん。エルム君も聞いてくれる?」


「あっ、はい」


 エミリーさんは姿勢を正しこちらを向いた。


「エルム君のスキルがカテゴリーVだって言っていたわよね?カテゴリーⅤの意味、わかる?」


 とっても値段が高いって事?


『情報とは時に売り買い出来る価値を産む場合がある。その価値が高ければ高い程、秘匿性のあるものということか?』


「貴方、本当にスライムなのかしら……まあ、そうね。それでね、一般的にカテゴリーVは閲覧禁止項目と言われているわ」


 お金を払ってもみれないのか?


「クルシュさん、私達は天職の儀によって天職を授かるのだけど、その中に【禁職】と呼ばれるものがあるの」


【禁職】なんて初めて聞いたぞ。


『主人殿がその【禁職】だと?』


「いえ、そうではないわ。もしエルム君の天職が【禁職】ならば、そもそも天職全集には載ってないはずだもの」


 載ってない?


『では何故、主人殿が調べる事をやめねばならぬのだ?』


「目をつけられる可能性があるからよ」


 え?


「その理由の一つとして、恐らくだけど【禁職】持ちの固定スキルと同じか、もしくは似た様なスキルを覚える可能性がある。エルム君、貴方王立図書館にはもう行ったのよね?そこで誰かにスキルの事を話したりはした?」


「いえ、していません」


「であれば、絶対に自分で調べては駄目よ。天職を得たばかりの人間が調べようとすれば、まず間違い無くバレるわ」


 そうか、もし僕が調べに行ったとしたら自分で自分のスキルを言いふらすようなものだもんね。


「それで、僕は一体誰に目をつけられるんですか?」


「……国、それと教会よ」


 エミリーさんからその言葉が出たと同時にクルシュから物凄い勢いで感情が流れてきた。憎しみ?それと驚きに否定?


『何故教会がその様な事を!』


「ごめんなさい、言葉が足りなかったわね。別に命を狙われる訳ではないのよ?ただ、もし見つかった場合、国には監視対象にされ、教会には保護対象にされるの」


「何でそんな事に?」


「この世界では天職が全てだからよ。ううん、天職に管理されていると言ってもいいわ。【禁職】はそんな管理された世界から外れた存在。ハズレとも呼ばれているわ。さっき国に監視対象にされると言ったけど最悪、強制的に転職させられるの」


 ハズレ。それは僕も知っている。でも転職出来るならハズレの人達にはいいんじゃないか?

 ……あれ?待って、もし僕がハズレとみなされれば……


「前にね、従魔と意思疎通出来る人と会った事があるのだけど、その人が言うには言葉というより断片的な情報が伝わると言っていたわ。眠い、暑い、疲れたみたいな感じにね。クルシュさんはこちらの会話をかなり理解していると見えるし、なにより会話が成立している。まるで人と会話をしている様。それがもしエルム君のスキルの力だとして、この事が国に知れたら……間違いなくハズレ扱いされるわよ」


 そうなれば転職させられてしまうのだろうか?もしそうなら僕とクルシュの関係は?


「僕はこれからどうすればいいんですか?」


「さっきも言った様に自分のスキルを調べに行かない事。それとクルシュさんが会話できる事を隠す事。最低でもこの二つは守るべきだと思うの。ちなみにクルシュさんが喋れる事を知るのは?」


「エミリーさんとキャサリーンさんだけです」


 と、僕が答えた時に扉がノックされた。扉が開けられ中に入ってきたのは、


「キャシー?」


 キャサリーンさんだった。


「よかった、まだいたのね」


『どうしたのだ人もどき』


 キャサリーンさんは急いできたのか額に汗を浮かべている。


「貴方達に()()()()()()から依頼よ」


「ちょっと待ってよキャシー!エルム君は昨日登録したばかりなのよ!なんでギルドから直接依頼がくる訳!?」


「ごめんなさいエミリー、緊急なのよ」


「キャシー。あなた……」


 キャサリーンさんの真剣な雰囲気に当てられたのかエミリーさんが続きを促した。


「エルム坊やと……貴方のことはクルシュちゃんと呼んでいいかしら?」


『ふん、特別に許可してやろう』


「ありがとう。それでギルドからの依頼なのだけどお願いしたい依頼が二つ。一つ目が薬草採取。今日と同じもの、最低でも百は欲しいわ」


『報酬は?』


「銀貨二枚」


「ちょっと待って!今森は立ち入り制限がかかっていたはずよ!それに、仮に森で採って来れたとしても銀貨二枚はおかしいわ!」


「いくら立ち入り制限をかけていても入る人は入るわ。それに制限前に入ってしまった人がちょっと多くてね。怪我人が大勢出てしまったの」


 それで薬草が必要なのか。


「二つ目は調査依頼に出た冒険者の捜索及び救助。実は私達以外、調査に向かった冒険者達が誰も戻ってきていないの」


 その言葉にエミリーさんの目は大きく開かれた。














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