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お友達

 ガン



 ダンジョンって、あのダンジョン?


「ダンジョンって生まれるの?」


『ああ、魔素溜まりと呼ばれる場所に生まれやすいな』


「魔素溜まりって物凄い山奥とかに出来るって聞くけど」


『強大な魔力に魔素が引き寄せられるのが殆どだな。自然に出来るのは本当に稀だ』



 ガガガ、ガン



「でもこの辺って王都にすごい近いよね?ダンジョンが魔素溜まりから生まれるなら、この森に魔素溜まりがあったって事?」


『いや、近いがそうではない。今回の場合、逆に人里が近くにある事が原因だな。それも王都のような大勢の人のいる場所がな。まぁ依頼は達成した訳だし後は人もどき共に任せよう』


 そう言われたので、後ろで板に乗せられ引かれているキャサリーンさんを見た。板がちょっと小さかったみたいで頭がはみ出している。

 さっきから出っ張った根っこや石にガンガン頭をぶつけているけど大丈夫かな?


 色々話しているうちにあっという間に森を出た。行きは目撃情報のあった場所を見て回ったので時間がかかったけど、真っ直ぐ向かう場合あまり時間はかからないみたいだ。


「そう言えばさ、クルシュさっき大きな石みたいなの拾ってなかった?」


『あれか?あれはな……』



 ゴッ



「いたたたた……」


 あっ、キャサリーンさんが気付いたみたいだ。後頭部を押さえながらも僕に気付くと凄い勢いで近づいてきた。


「ちょっと貴方!どこも怪我してないの!?大丈夫なの!?」


 そう言って巨大な手で体中を優しく触ってきた。そしてその手はクルシュへと迫り、


 ムギュ


「あ〜な〜た〜ね〜!この子の従魔なんでしょっ!体を張ってでも守りなさいよ!!」


『ぐっ!離せ!人もどきが!主人殿なら私のスキルで無傷だとわかっていたのだ!』


「わかっていたって、貴方だけなんでしょ!?エルム坊やは知っていたの!?知らなかったんでしょ!いきなり突き飛ばしたりして、怯えていたじゃない!物事には順序があるのよ!」


『そっ、それについては既に和解済みだ!』


 クルシュはキャサリーンに鷲掴みというか摘まれている。叩かれたり殴られたりしても大丈夫だけど掴まれたりはダメみたいだね。うん、勉強になった。


『主人殿、何とか言ってくれ!主人殿!え……主人殿?』


 クルシュに今の僕の気持ち、伝わったかな?あの時はクルシュから罪悪感が伝わったから怒るに怒らなかったけど、でもね、僕結構怒っているんだよ。


 それからキャサリーンさんが気絶している間の出来事を歩きながら話した。ちなみにクルシュはキャサリーンさんに摘まれながらシュンってなってる。


「へぇ〜、この子が貴方のスキルを使えるのはわかっていたけど、本当に貴方もこの子のスキルが使えるのねん」


 キャサリーンさんはバシバシと僕の背中を叩いてくる。バシバシと勝手に言っているだけで実際は当たっても音はしない。叩く前にブォンって音が聞こえるけど気のせいだよね?


 その後無事冒険者ギルドへと到着すると、


「わたしは約束通りに討伐依頼をだしてくるわん。少し時間がかかるから貴方達は先にテイマーズギルドで従魔登録してらっしゃい」


 そう言って摘んだクルシュを渡してきた。僕はクルシュを受け取りそこでキャサリーンさんと別れた。


「それじゃ、テイマーズギルドに行こうか」


『……うむ。……主人殿、本当にすまなかった』


 クルシュは今、カピカピの干し葡萄みたいになっている。本当に反省しているのが伝わってくる。


「もう怒ってないよ」


『本当か?』


「クルシュならわかるでしょ?」


 僕達の心は繋がっているのだから。


『ああ!』


「僕はね、何でも相談出来るような関係になりたいと思うんだ。だから色々クルシュの事教えてよ。僕の事も知ってもらいたいし」


『そう、だな』


 この時クルシュから感じた感情は戸惑い。ちょっとぐいぐい行きすぎたかな?


「僕の住んでいた村では歳の近い子供はいなかったから友達なんて出来なかった。だからクルシュとは何でも話せる、友達の様な関係になりたいと思っているんだけど、どうかな?」


『あ、主人殿と私が友達?』


「嫌ならいいんだ!ただ……相棒とかよりも友達の方が、なんか仲が良い感じがしたから……」


『嫌ではない!嫌ではないぞ!その……私も、主人殿と友達になりたい!』


「それじゃ今日から僕達は友達だね!」


『ああ!私達は友達だ!』


「それじゃ僕の事を聞いてもらえる?僕の住んでいた村はずっと西にある小さな村でね、爺ちゃんが木こりをして僕を育ててくれたんだ……」


 相手を知る前にまずは自分の事を知ってもらおうと話し始めたんだけど、クルシュの事を教えてもらう前にテイマーズギルドに到着してしまった。


『なに、時間ならたっぷりある。取り敢えず用事を片付けてしまおうではないか』


「そうだね。エミリーさん、いるかな?」


 一日ぶりの扉を開け受付に目をやるとそこにはエミリーさんがいた。


「エミリーさん、こんにちは!」


「あらエルム君、いらっしゃい。あれ?その子は?」


「はい!僕の友達のクルシュです!今日は従魔登録のお願いに来ました!それでキャサリーンさんから言われたんですが。個室でお願いしたいんです」


「キャシーが?わかったわ。こっちよ」


 エミリーさんに案内されたのはちょっとした応接室みたいな所だった。


「ごめんね、ちょっと待っててくれる?書類持ってくるの忘れちゃったわ」


「あっ、エミリーさんちょっと待ってください」


 部屋から出ようとするエミリーさんを引き止める。


「うん?どうしたの?」


『……お初にお目にかかる。エミリー殿でよろしかったか?クルシュと申す。以後お見知り置きを』


 キャサリーンさんとエミリーさんの接し方の差が凄いや。



















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