僕は戦士じゃない!
本日二話目!
……いつまで経っても何も起こらない。目をつぶっているから分からないけど、ゴオッとかブォンとか聞こえる。
恐る恐る目を開けると、
「グラゥァァァァァァア!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
何これ何これ何これ!?目の前でヘビーコングが雄叫びをあげてるぅぅ!!
ーーガァーーーン!!ドガァーーーン!!ーー
いきなり地面を殴り始めたんだけどぉ!!?どうなってるの!!?うわぁ!!こっち向いた!!
そのまま、反射的に目を瞑る事も出来ない速さで拳を叩きつけて来たんだけど……
シーーーン
えっ?僕が困惑している間にもヘビーコングはその両手で殴り、叩き潰そうと躍起になっているんだけど全くダメージが無い。触られている感触のようなものはあるけど、ただそれだけ。
そしてそれが暫く続いたところで、
「グラゥァァァァァァア!!グロゥッ!グラァッ!!」
ーードンッ!ドガァーン!ガンガンッ!ーー
ヘビーコングは、癇癪を起こした子供の様に周りの物を手当たり次第に破壊し始めた。巨大な岩も粉々だ。
『うむ。そろそろ良いか』
ドゴン!
ヘビーコングが再度僕に殴りかかろうと、こちらを向いた瞬間、その音と共に顔が凹んだ様に見えた。
ドオーーーン。
そのまま仰向けに倒れたヘビーコング。ピクリとも動かない。一連の流れに全くついていけず、僕は佇むばかり。目の前にあるのは辺りを破壊し尽くされた後。
『主人殿、これでわかったであろう?』
「えっ?ちょ、えっ?ごめんクルシュ、何がわかったのかわからないんだけど」
『それはだな、主人殿の力の事だ』
僕の力?
『私は主人殿のスキルを使うことが出来る。そして主人殿もまた私のスキルを使うことが出来るのだ。異体同心によってな。まぁ、私も私自身のスキルを把握していないので、それが何なのかは私もよく分からぬがな』
「えっ?分からないのに僕にいきなりあんな事をしたの!?」
『なに、主人殿が怪我をするような事はにはならないと言うのは確信していたのでな。それにいきなりでは無いぞ?主人殿、森の散策の最中、私が叩いていたのは気づいていたか?』
あのペチペチしていたやつの事かな?
『どれ、少し待っておれ』
そう言ってクルシュはぴょんぴょんと器用に荒れた部分を避け、遠くの一本の巨大な樹木の根元へと跳ねていった。
『それ』
ボッ!メキメキメキメキ……バリバリ…ダァーーン!!
クルシュが触手でペチッて叩いたと思ったらボッ!て抉れてそのまま大木が倒れた。
えっ?ちょっとまってよ。あんな威力で僕を叩いたていたの?
『これでも弱い方だがな』
「これよりも強く叩いてたの!?」
『最初、主人殿の肩に止まった虫を払おうとしたのだが主人殿が何も反応を示さなかったのでな。少しずつ少しずつ威力を強めてみたのだ。だが余りにも反応が無く、ついな。だがそのお陰で【衝撃耐性】ではなく【物理攻撃無効】か【衝撃吸収】の二つにしぼれた』
「ついな、じゃないでしょ!それにクルシュのスキルを僕が使えるって言うならクルシュも使えるんじゃないの!?だったら自分で自分を叩いて調べればいいじゃないかっ!」
『だが己の力をきちんと把握しておくのは戦士の務めだぞ!何が出来て何が出来ないのか分からなければ依頼を受けるのにも困るではないか!』
「僕は冒険者であって戦士じゃない!それにやり方ってものがあるでしょ!」
『……終わりよければ全てよしだ』
「よくない!」
『……さて、森の調査も無事終了した事だし、帰るとするか』
無かったことにする気だ!そう思っているとクルシュから感情が伝わってきた。少しの申し訳ない気持ち、これは罪悪感だ。僕が本気で怒ってるのが伝わったみたいだ。はぁ〜。
「もう!次からはちゃんと言ってよ!相談するって決めたでしょ!」
『そうで、あったな……すまぬ』
本気で落ち込んでる気持ちが伝わってきてしまうと、怒るに怒れなくなっちゃうね。
とりあえず帰ろうとキャサリーンさんを呼ぼうとしたら、白目を剥いて気絶してたんだ。
うん、ヘビーコングを見た後じゃ可愛く見えるね。
さっきクルシュが倒した木の一部で丁度板状に裂けた物があったので、キャサリーンさんを乗せてクルシュに引っ張ってもらっている。そのクルシュを抱えてるのは僕なんだけどね。
ガン
「ねぇ、さっき急に魔物が現れたよね?あれ、何だったんだろう?クルシュ、わかる?」
『ああ、昔何度か同じ場面に出会したことがあるのでな』
「森の中で?」
『いや、全て別の場所だ。未開の地や、逆に人の多い都市部の側など様々だな』
ゴン
「それと、森の調査が完了したって言っていたけど原因わかったの?」
『うむ。この様子だとそろそろ生まれるぞ』
「生まれる?」
『ああ、迷宮がな』
ガン
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