本日二度目
本日一話目!
びっくりしたぁ!何も無いところから急に現れたぞ!
「フォレストウルフはわかるけど何でサンドウルフとアイスウルフが一緒にいる訳!?それに何よん!ファングボアはともかくヘビーコングなんて高ランクの魔物じゃない!!」
フォレストウルフは森の、サンドウルフやアイスウルフはそれぞれ砂漠や雪の多い地域に生息していると言われている。
その他にもマッドスネイクやロックバイソンなど明らかに森にいるはずの無い魔物もいるぞ。
『これは?……おい、人もどき。今回の依頼は「森の調査」であったな。この様な場合どうなるのだ?』
「ど、どど、どうなるって?」
『仮に此奴らを蹴散らしたとして、調査依頼の報酬と別に討伐報酬が出るのか否かだ』
「ざ、残念だけどここにいる魔物で討伐依頼が出ているのはいないわん。でも、必ずわたしがねじ込むわん!この辺りでは見ない珍しい魔物ばかりだから素材も高く買取してもらえるはずよん!もちろん倒して帰れればの話だけど……」
『言質は取ったぞ』
とか、二人?でやり取りしている。そんなにゆっくりしていて大丈夫なのかな?でも魔物達はこちらを見ているだけで全然動かない。威嚇すらもしないで、ただただ見ているだけだ。なんか剥製みたいだ。
でも、そうは言っても魔物だ。いつもの僕なら絶対にガクガク震えてるだろうに、何故だろう。こんなに沢山の魔物に囲まれてもちっとも怖くない。きっとクルシュから流れてくる感情のせいだと思う。だって恐怖心とかまったくないんだもん。それどころか、これは……ワクワクしてるのかな?
『主人殿、私を高く掲げてくれるか?そして、人もどきは、しゃがめ』
「こう?」
キャサリーンさんが言われた通りしゃがみ、それを見てから僕はクルシュを持ち上げる。高い高いしてるみたいだ。
『うむ。これならいけるかーーー全方位・瞬穿!!』
ーーシャッーー
一瞬だった。クルシュが何か言ったと思ったら、ターンともパーンとも違う音が一斉に響いて魔物がパタパタパタっとその場に崩れたんだ。しかも全部の魔物が!
「クルシュ……今のは?」
『瞬穿と言う技だ。本来遠く離れた相手に必殺の一撃を叩き込む技なんだが、一度にこの数を相手に出来たのは、この身体ならではだな。おっと、主人殿、そのままで頼む』
降ろそうと思った僕にそう言って今度は、みょーんと沢山の触手みたいなのが伸びて、魔物に触れると一瞬で消えた。たぶん収納したんだと思う。
『むっ。一体仕留め損なったか』
周りをよく見ると仰向けに倒れた魔物が一体だけ残っていた。ヘビーコングだ。生きている物は収納出来ないって言っていたっけ。
『ふむ、眉間を狙ったつもりだったが外したか?それとも……まあ良い。どちらにせよ時間切れだ』
クルシュの呟きの後、今までピクリともしなかったヘビーコングが動き出す。
「グラゥァァァァァァア!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
ゆっくりと起き上がり、こちらを認識すると、突然の鼓膜が破れるかと思うほどの咆哮!そしてヘビーコングの胴体の倍近い太さの腕を使ったドラミング!明確な威嚇行為だ!
キャサリーンさんはしゃがんだまま僕を盾にしている。全然隠れられていないけどね!
「ちょっ、貴方!怒らせちゃったじゃないのん!どうにかしなさいよん!!」
『怒るも何も奴らは魔の者。こちらから何もせずとも襲ってくるのは幼な子でも知っておろう?それに何だ貴様!主人殿から離れろ!』
クルシュからは余裕が伝わってくる。それにしても、あんなに沢山いた魔物を一瞬で倒すなんてクルシュって一体何者なんだろう?普通のスライムならあんな事絶対に出来ないよね。
そんな事を考えているうちにヘビーコングがめちゃくちゃに腕を振りまわし始めた。拳が大木に当たり破片が轟音と共に飛び散る。うわぁ〜、あんなの当たったら僕ぺちゃんこだよ!
一通り暴れ狂ったヘビーコングはピタッと止まったと思ったらこちらへ一気に駆けてきた!
「こっ、こっ、こっちにくるわよん!!!」
『うむ、丁度いい』
クルシュが持ち上げていた手から飛び降りた。僕の後ろに。
そして、
『では主人殿、行ってまいれ』
とん
「えっ?」
前につんのめりながら振り返ると、触手で僕を押したクルシュに、それを信じられない目で見るキャサリーンさんが目に入る。
視線を前に戻すと腕を振り回し辺りをめちゃくちゃにしながら突進してくるヘビーコング。
クルシュから伝わる感情よりも僕の恐怖心の方が上回ったんだと思う。恐怖で足がガクガク震える。声もうまく出ない。
「うっ、わ」
目の前で大きな二本の腕が振り上げられる。このまま僕はぺちゃんこになるんだ。数秒後に訪れるであろう、暴力的な衝撃から背ける様に目を硬く瞑る。
本日二度目。
あっ、僕死んだ。
ブックマークありがとうございます!
今日も二話投稿です。
次は17時になります!