えっ!
本日二話目!
「貴方が規格外なスライムだって事は、よーくわかったわん。……それで、貴方の腕を見込んで一つ頼まれて欲しいのだけど」
『人もどきよ、頼み事ならば主人殿に聞け』
「えっ!?僕!?」
『当たり前であろう?私は主人殿の従魔だ。聞くだけならば私にも出来るが決定権は主人殿にある』
そういうものなのか。でも、頼み事ってなんだろう?
「えっと、なんでしょうか?」
「貴方の従魔の腕を見込んで、ちょっと森で調査をお願いしたいのん」
「僕達だけですか?」
「もちろん貴方達だけでは無いわん。でもね、王都ってランクの高い冒険者が多くなくて、そんな集まらないのよん」
それで僕達の、ていうかクルシュの力を借りたいのか。
「クルシュ、どうしよう?」
『良いのでは無いか?あの様な獣が何体こようと私は問題ない。それに準備運動には丁度いい。ちとこの体に、もう少し慣れておきたいのでな。主人殿もそうであろう?』
クルシュが何だかやる気になってる。
「クルシュがいいなら僕も別に大丈夫だけど……それで、調査っていつからですか?」
「今からよん」
ーーーーーーーーー
と言うわけで、やって来ましたさっきの森へ。
キャサリーンさんは今からって言っていたけど、丁度お昼の時間だったからね。
ギルドにあった酒場は食堂も兼ねているらしく、パンに沢山の具材を挟んだ物をキャサリーンに買ってもらって食べ歩きながら来たんだ。
歩きながら食べれるので森に用のある冒険者には時短アイテムとして必須らしい。
僕はあまり量を食べる方ではないけど、これなら全部いけるかも!残ったらクルシュにあげればいいしね。もう既に十個は食べてるし。
そしてキャサリーンさんは歩きながら、現在確認されている魔物の情報や出現場所とかを地図を見せながら教えてくれた。
『して、人もどきよ。何故貴様までついて来たのだ?』
そう。他の冒険者の人達は、既に出発したって聞いていたし、てっきり僕達だけかと思ったらキャサリーンさんもついて来たのだ。
「貴方の実力をちゃんとこの目で見たいからよん。安心して頂戴。自分の身くらい、自分で守るわ」
『当たり前だ。私達の受けた依頼は森の調査であって貴様の護衛では無いのだからな』
そんなやり取りをしながら森へと入る。
人が頻繁に出入りしているのか、クルシュと出会った辺りよりだいぶ歩きやすい。
今回の調査では中ランクの魔物の発生の、原因の特定となっている。
城門から森までの草原ではスライムやホーンラビットの様な低ランクの魔物しか現れず、本来森の中もあまり変わらないらしい。たまに奥から中ランクの魔物が現れるらしいけどそれも年に一、二度。
ここまで頻繁に目撃される事はまず無いとキャサリーンさんは言ってた。であれば間違いなく森の奥で何か異変があるはず、と言う事で今回ギルドに調査依頼が来たらしい。冒険者でなくても森で採取する人は結構いるらしく、このままだとみんな困っちゃうもんね。
一時間位歩いたかな?目撃情報のあった場所をなぞる様に歩いてるみたいなんだけど、ファングボアはおろかスライム一匹すらも現れない。もっともクルシュがいればスライムは出てこないみたいなんだけどね。
一応この辺りもまだまだ森の表層らしく、今は立ち入りの制限がかかってるみたいなんだけど、いつもは結構人がいるらしい。
あれ?でも僕が薬草を見つけたのって、ここよりもっと表層の方だよね?ラッキーだったのかな?
「次はあっちに行きましょう」
キャサリーンさんは目撃情報のあったとされる場所に着くと周りを観察しながら何かを書き込んでいる。
クルシュは僕が抱えているんだけど暇なのか触手の様な物を二本出してペチペチ叩いてくる。話しかけても、
『う〜ん、これは……いやしかし……う〜ん』
とぶつぶつ言ったっきり。別に痛く無いし、暴れられるより全然いいや。
キャサリーンさんの後について更に一時間位歩くと、段々と辺りが薄暗くなって来た。明らかに雰囲気が変わり、木々もさっきよりも密集している。あまり人の手も入っていないみたいだ。
「ここからは中層と呼ばれているところよん。流石にここまでは一般の人は近づかないわん」
『なるほど、確かにここより先は幾分濃い魔素を感じるな。だが、なんだ?いささか歪に感じるが?』
魔素。昔、両親から聞いた事がある。魔素とは全ての源であり全てに宿る物だって。人の多い場所だとあまり感じられないけど自然が豊かな場所だと感じやすいって言ってたっけ。
この不思議な感じ。これが魔素なんだ……
「では、そろそろ帰りましょうか」
「もう帰るんですか?」
「ええ、今日はこれくらいにしましょう。じゃないと陽の出てるうちに戻れなくなるわよん」
「そうなんですね。てっきり奥まで……」
『主人殿!!人もどき!!周りを見ろ!獣だ!!』
「え!」
僕達はいつの間にか囲まれていた。
明日も12時と17時に二話投稿予定です!