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こうかい日誌 上巻  作者: A.I.
1日目
3/99

険悪

上げて下げる。

振れ幅大きな出来事が重なると、人はより強くストレスを感じらしい。


ふっざけんな。

なんだよ、これ、訓練と違いすぎるだろ。

つか、こんな時に限って一人とか。

まぁゆっくり眠れたんだけどさ…

じゃなくて、なんか説明とかない訳?

取り合えず集まれとか無茶苦茶じゃね?

だいたいさ…あれ?


葵恒はお気に入りを見かけて足を止めた。

体格の良すぎる教官連中の中で、ただ一人シュっとした文学系。

特にどうという事は無いが、眺める分には癒しだった。

それは今まさに葵恒が求めていたもの。


「うん、大丈夫そう。」


声を掛けるのは何か違うので、物陰から見守る。


「私は、こちらのようだ。」


「私、あっちみたいです。」


「そうか。それじゃ、気を付けて。視野を広く持って、落下物や転倒物を警戒するんだよ?あと、走らないように。こういう時こそ、」


「大丈夫ですから。先生こそ、お気をつけて。」


見たことのある顔。

華枉黒冬子。

たいそうな名前に、準士というたいそうな肩書。

その上淑やかとくれば、鼻につくのも仕方がない。

そいつが今、癒しの時間をぶち壊していった。


何あれ?

気色の悪い声出しちゃって、嬉しそうに。

そういえば、先生はあいつの面倒見で乗ったんだっけか。

世の中不公平だよね。


少し特殊な経緯で今回の実習から合流した「面倒な子」。

それゆえに、専属でケアする教官が同行する。

葵恒からすれば、逆に、お気に入りについて回るたんこぶなのだが、いずれにせよ、まさに腫物だった。

それは、平時であれば、ただ疎ましく思うにとどまる。

しかし、今は全てにおいて間が悪かった。

忌避が、嫌悪にかわる。


「あ…えっと、」


先生は離れていった。

互いが互いの視界に入った時、黒冬子から口を開いた。

しかし、


「華枉さん、だっけ?」


葵恒はそれを無視した。

先程までとは打って変わって弱弱しい声が癪に障ったのだ。

不快感を隠そうともせず、畳みかける。


「お前も、機関部だったっけ?」


威圧的な言い様に気圧され、伏し目がちになる黒冬子。

それが余計に葵恒の琴線を逆撫でした。


「はい。あの、失礼ですが、」


「ここに来いって言われたの?」


お前の話など聞く気は無いとばかりに地図が示される。

もはや取り付く島などなく、黒冬子は黙ってうなずくしか出来ない。


「そう。」


言うが早いか、背を向けて歩き出す葵恒。

遅れて後を付いていく形になる黒冬子。

二人の間に言葉が交わされることは無かった。


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