映画の散文的感想?⑥「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」 後篇
皆様
いかがお過ごしでしょう
料理のレパートリーが増え続ける在宅ワークの引き篭もり
そんな私の猫のように気まぐれで観照的
たまに論理的な映画の散文的感想、
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の後篇を乱れ書きます
今回も少しでもどなたかの琴線に触れて頂ければ本望です
散文的な感想をネタバレにならぬよう細心の注意を払いつつお届け致します
では私のをかしを
徒然なるままに
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VHS全盛期がついに衰退を迎えつつあり、新たにDVDがレンタルビデオショップの店頭にも置かれるようになっていました。
父と一緒に鑑賞しようと意気揚々とやって来た私は、もちろん「攻殻機動隊」を一片の迷いもなく、最短コースでDVDが置かれた棚に向かいました。
補足事項:
「攻殻機動隊」の鑑賞後、押井守監督作品の追っかけをする過程で中毒症状になり、
大好きな高橋 留美子先生が
この押井さんの映画を嫌いだとしても
作品が持つ独特の笑いと切なさと衝撃、無駄にすら思える過剰な爆発と夢があまりにも好きになり過ぎて、
頭が可笑しいんじゃないかと思われるほど繰り返し見ている
「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」に出会うことを、私はまだ知らない。
ついでに他にも映画を少し借りたと記憶しています。一本だけレンタルすることは……今まで一度もありませんでしたね。
今は動画配信サイトのお世話になっていますけれど、もしレンタルをするなら、これからも一本のみのレンタルをすることはないでしょう。
思い返してみても、棚やコーナーに何が何処に置かれているのか解っているからこそ、その時々の気分で映画を古今東西、より取り見取りでお小遣いの範囲で借りていました。
新作コーナーにDVDとVHSのが置かれる状況は、現在のDVDとBlu-rayがどちらも置かれている状況と一緒ですね。
PS2のトレイにDVDをセットして、本編をワクワクしながら始まるのを待ちました。
あらすじ
企業のネットが星を被い
電子や光が駆け巡っても
国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来
西暦2029年
全身サイボーグの義体である草薙素子率いる特殊部隊・公安9課、通称「攻殻機動隊」は、武器禁輸処置に該当する認定プログラマーの亡命を秘密裏に阻止する。
素子は全身サイボーグであるが故に、自分が本当に存在しているのかと自問自答を繰り返していた。
そんな折、ガベル共和国との秘密会談に参加する外務大臣の通訳が電脳をハックされた。素子たち9課はその事件を発端に、国際指名手配の正体不明の凄腕ハッカー「人形使い」の追跡を開始した……
今でこそ理解に苦しむことの無い設定ですけれど、拡大するネット社会と機械化する人間などなど、SF好きには溜まらないほど作り込まれています。
作り込まれた世界観の中で、自分とは何か、自分が望むべき、進むべき道は何処なのか。
自己、個人とは何か、そんな人間とは何かという哲学をSFアニメという媒介で切り開いていきます。
ご存じの方が多いと思いますけれど、本作はテレビシリーズとは全くの別物です。同一の登場人物で語られる神山節の作品です。
押井さんとは素子の人物像の解釈が全く異なり、それがとても面白いです。
私は映画とテレビシリーズしか知りませんので、原作漫画を読んだことがありません。いつかは読みたいなっと思って、もう何年も過ぎている気がします。
気力と知力をフル活用するので、疲労がドッと来ます。それでも見終わった時には、これは自分ではない他人と共に生きる。云わば、壮大な恋物語であったと思うのです。
予備知識無しでも、SF映画、アニメ、哲学、あらゆる文化的嗜好が好物な人におススメです。
初見では複雑過ぎて解らないと思われるかもしれませんが、
私は押井さん版「攻殻機動隊」とは複雑な恋物語だと思うのです
(結局複雑ですね)
そして、それが愛いと思えれば、作品を何度も見返すことでしょう。
そして、物語は「イノセンス」へと続きます。
「イノセンス」は今度語りますね。確約できることではありませんけれど、誰かと話したくなる作品が押井さんは多いですね。
完全な持論ですけれど、SFとは愛なんです。
SFは、あえて近未来やあり得ない空想科学の世界で
人の心を映し出す鏡になっているのです
その多くが愛なのだと思います(持論ですけれど)
あらゆるSF映画の傑作は愛を語る映画なのてす
って思う私なのでした
ターミネーター然り
エイリアン2然り
インターステラー然り
マトリックス然り
フィフスエレメント然り
ブレードランナー然り
インセプション然り
スターウォーズ然り
テネット然り
E.T然り
みんなSFを舞台に設定した「愛」の映画なのです
それが自分と同じように考え、感じたことでなくても、作品を通じて共感ができる、映画って素敵ですね。
OP、中盤、EDで流れ、攻殻機動隊を象徴する川井憲次さんの「謡」は
聞けば身震い、涙が零れ落ちる衝動に駆られる神秘的な歌です
民謡歌手グループ「西田和枝社中」さんたちの歌声は圧巻です
映画はちょっとという方は
ぜひ聞いてみてください
この歌はそれほどの魅力と感動があります
前篇で云ったと思うのですが、この歌、最初は中国語か、それとも沖縄かなとか思うほど
何を云っているのかさっぱりでした。
何を云っているのか解らないのに、どうして感動できるのか
それは音楽の力も確かにあるのですが、その理由は日本語のルーツ「古語」だからです
今は多くの言葉を知見したおかげで、歌詞の意味が解ってきました
歌詞の原文は載せられないので、現代語に訳したものを
私が舞うと美しい女が酔いしれた
私が舞うと照る月が共鳴した
結婚のために神が天を下りてきた
夜が明けて夜の鳥が鳴いた
遠くにおわす神様が恵みを与えてくださる
「謡」にも愛の印の言葉がいくつもありますね
「謡Ⅰ-Making or Cyborg」によって私たちは「攻殻機動隊」の世界に入り込み
「謡Ⅱ-Ghost City」により物語に酔いしれ
「謡Ⅲ-Reincarnation」で余韻に浸かれます
作品の感想や自分の考察を人に語りたい
そんなあなたにぴったりの作品はまさに本作です。
ここから少しネタバレがありますので、作品をご覧になる予定の方は、鑑賞後にお読みになることを深く推奨致します。
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では
先ほども書きましたが、攻殻機動隊は恋愛作品であり、人間とは何かを問う人生観を学ぶ作品なのかなって私は思います。
作品自体、冒頭からラストまで全て一貫して
人形使いが片思いした素子と一つになるまでの恋物語。二人が融合、恋の成就で終わりを告げる。
それと同時に、素子に仲間意識と同時に女性として見ていたバトーの失恋物語だと私は思っています。
その辛い失恋物語は、愛した女性との再会を希う男の物語「イノセンス」に繋がっていく。
「2501
それいつか、再開する時の合言葉にしましょう」
「2501」
この数字が「イノセンス」で出てきた時の感動は、今書いていても目に涙が溜まりました
人形使いのセリフで、とても印象的なのは、
人工的に作られたプログラムである彼、ないし彼女は素子が求めている答え
自分とは何かという疑問を中盤で荒巻らに語る場面です
(素子の求める答えだと思うのは、私の解釈ですので悪しからず)
「人はただ記憶によって個人足りうる。
例え記憶が幻の同義語だとしても、人は記憶によって生きるものだ」
私が今、私なのは記憶で覚えています。
過去があるのです。それで、私は私なんだと認識しているのです。
この人形使いのセリフが前半部の結論であり、後半部の人形使いと素子の融合に繋がる構成が、やはり見事なまでに凄いという言葉しか出てきません。
台詞無く人物と情景、音楽と映像で語る映像作家としての表現は、見る人によって感じること、思うことは異なるでしょう。
例えば素子と同じ顔をした人物と目が合います。
場面は雨の混雑した街並みと人々の情景をじっくりと見せつけられます。
作画に詳しくありませんが、とても凄みのあるシーンだと思います。
その情景には、時折人形が映り込み、それはじっと動かずに道行く人々を見ています。
サイボーグである素子は、自分が人間なのか、それとも記憶を埋め込まれた人形なのか、それが描かれたシーンだと私は思いました。
また、制約と限界を感じる素子を表現したのは、潜水して海面まで浮き上がる場面が象徴していると思います。
幻想的で、美しさがあり、浮かび上がる直前に海面で顔を突き合わせる素子の心情。
自分は自分なのかって思う彼女の気持ちの表れなのかなとか。
「生命の樹」が弾痕によって埋め尽くされるのは、進化の超越、進化を破壊してしまった世界を意味しているのかなとか。
そして、ラストで舞い散る羽が象徴するのは進化なのかなって。
人形使いと融合することで
羽を広げて広大なネットへ天使のように羽ばたいていく。
もっと語ろうと思えば語れると思いますが
前篇でかなり語っていたので、今回はこの辺で失礼します。
素敵な物語との出会いのお手伝いができれば幸いです。
ではまた次回、お会いできれば嬉しいです
感想・評価・リクエストなど気軽にお寄せ頂けたら幸いです




