片割れの賛辞
「おやっさん、いるかーい?」
「はいはい。どうしたネ?」
「頼まれてたモノが出来たからよ」
「そうかいそうかい。仕事速いネ、ありがとネ。息子も喜ぶよ」
「親馬鹿だねぇ」
「子どもは可愛いネ。あんたんとこも、そろそろ作ったらどうだい?飯屋のトカゲの小僧に先越されたじゃないネ」
「うちはいいんだよ!その…二人でいいんだよ」
「はー…アタシが親馬鹿ならあんたは嫁馬鹿じゃないかネ」
「そんなこたねぇよ!!」
「嫁さんの羊毛で作ったセーターを嬉しそうに着て何言ってるのネ?」
「これは!あれだ!着ねえともったいないからだよ!」
「そんな鼻息荒く否定しなくてもいいと思うけどネ。」
「鼻息が荒いのは俺がミノタウルスだからだよ!生まれつきなんだよ!」
「はいはい、分かったネ」
「ったく、そんで出来たもんだけどよ。本人に取りに来させな。オーガ用の大工道具なんて初めてでな。一回握らせてから調整するからよ」
「そうかい、ありがとうネ」
「しっかしよ…なんでまたオーガの小僧を養子にしたんだ?身寄りがねえからって、前から住み込みだったのは知ってたけどよ」
「簡単な話よネ。一緒に暮らして、一緒に働いて、一緒に飯を食べて、一緒に寝て。家族じゃない方が変じゃないか。それだけネ」
「それだけ…ねぇ」
「まぁ…あの子はあたしの背中見て立派な職人になって欲しいからね。やれる事はしたげたいのさ」
「背中か…ふっはっははは!」
「なんだいネ?急に」
「いや、オーガの小僧にはよ。おやっさんの、ゴブリンの背中がでっかく見えてんだろうなぁって思ってよ!」