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08.善人、名裁判官になる

 翌日、エリザが王宮に戻っても、サンは屋敷に残った。


 朝食の食堂で一緒になった私は彼女に聞いた。


「エリザについていかなかったんだね」

「うん、パパのそばにいるよ」

「いいのか、エリザとなんか別の方法で盛り上がってたんじゃないのか?」

「待つのと我慢するのは慣れてる。だよ」


 にこりと微笑むサン。

 元から美少女なのが、魂ではなく肉体ホムンクルスではあるがに入ったことで、その笑顔が最初の頃よりもかわいく見える。


「それでいいのならいいんだけど」

「それよりも、パパは今日どうするの?」

「今日は――」


 私は頭の中から予定を引っ張り出して、その順番を組み替えてみた。


     ☆


 サラサという、新しく開墾をはじめた村。

 人口増を見据えて開墾をはじめさせた村にやってきた。


「だからここからここまで俺の土地だっつの」

「いーや俺のだ。俺が掘り起こして木の根っことか石ころとか一生懸命拾って畑らしくしたんだ」


 私の目の前で、二人の男が言い争っていた。


 原因は私が父上を説得して、ちょっと前に出させたお触れだ。


 荒地から新しく開墾して畑にした場合、その畑は一代限りだがその人の物になるというお触れだ。

 遺産とか継承に関しては別にやりたいことがあるから、とりあえず一代限り、とした。


 開墾すれば土地が自分の物になるというのは魅力的な話で、あっちこっちで開墾をする人が、特にこれから生まれてくる子供のために、男達は張り切って開墾した。


 そこで視察にやってきたら、トラブルに出くわしたというわけだ。


「どうしましょうアレク様」


 振り向く、そこに不安そうなアンジェと、並んで立っているサンの姿があった。

 視察するといったらサンがついて行くと言い出して、アンジェも一緒に引っ張ってきたのだ。


 その二人に答える。


「ちょっと難しいね。ここは僕に任せて。二人はその辺をぶらついてきて」

「えー」

「行きましょうサンさん。アレク様の邪魔をしちゃいけないよ」

「しょうがないな。ちぇっ、だよ」


 サンは一瞬唇を尖らせたが、不承不承ながらもアンジェについていった。


 母娘予定の二人がいなくなるのを見送ってから、男達に近づく。


「どうしたんだい?」

「なんだボウヤは」

「バカお前、副帝様の顔も知らないのか?」

「副帝ぃ?」


 片方は私の事を知っていたが、もう片方は知らないみたいで、うさんくさいものを見るような目を向けてきた。


「それよりも。土地の争い?」

「はい……」


 私の事を知っている方の男は状況を説明してくれた。

 新しい情報は無いに等しかった。

 二人の言い争いになってた内容がほぼ全てで、両方とも自分が開墾した土地だと譲らない。


「副帝様、どうにかして下さい」

「こんな子供に何ができるってんだ。それよりもお前さ」

「出来るよ」


 言うと、二人はびっくりしてこっちを見た。

 片方は「こんなに早く!?」みたいな顔で、もう片方は「おいおいマジかよ」ってぎりぎり聞き取れる程度の声でつぶやいた。


 賢者の剣から得た知識で、手を資材の袋に入れる。

 袋の中で作って、取り出したのは二粒の豆。


「これは?」

「特殊な作物だよ。土地に植えるとあっという間に育つ。ほんの数十秒でね」

「数十秒で!?」

「んなもんあるのかよ」

「これを育ててどっちがより早く伸びるかを競えばいいよ。土地のことだから土地に選んでもらう。これでいいでしょ」

「よっしゃ!」


 私の事を知らなかった方は早速乗ってきた。

 一方、私を知っている方は。


「そんなに早く育って大丈夫なのでしょうか」

「大丈夫だよ、栄養を一気に吸い上げるから、その後一年くらいは何も育たないけど。大地はすぐに元に戻る」

「……やめます」


 私を知っている方は下唇をかんで、引き下がった。


「いいのかい?」

「……はい」


 男はそういって、きびすを返してその場から立ち去る。

 途中で足を止めて、振り向いて土地をみたが、何もいわずに立ち去った。


 彼がいなくなると。


「よっしゃ。これでここは俺の土地だよな。あんた偉い人なんだろ。認めてくれるよな」

「……」


 私は無言で魔法をかけてその男を魔法で寝かせた。


 どさっと倒れ、倒れて鼻提灯を膨らませながら爆睡する男を放置して、さっきの男を追いかけた。

 村の外れの木の下でしょぼくれてる彼を見つめた。


「やあ」

「副帝様……」

「悪かったね、試す様な事をしちゃって」

「いや、それは別に……」

「あそこは君が開拓した土地なんだよね」

「え?」


 なんで分かるの? っていう驚き顔で私を見る。


「土地が大変な事になるって言われた時君が悲しそうな顔をしたから。実際にした人じゃないと土地に愛着はもてないよね」

「は、はい」

「これ」


 私はさっきの豆を取り出した。


「これはさっきの……?」

「さっきのは嘘。これを植えたら、土地が目覚めて、世話をしてくれた人の味方をするんだ。土地がどうするのかは分からないけど、ちゃんと君の味方をするはずだよ」

「それでさっき副帝様は俺たちにこれを?」

「うん、植えれば土地が判定してくれるからね」

「そうだったんだ……すいませんそうだって知らなくて」

「いいよ。それとこれ」


 今度は羊皮紙を取り出した。

 男は受け取って開くが――。


「なんて書いてあるんですか?」


 読めなかったみたいだ。


「土地を子供に継承させてもいいって、僕からのお墨付き」

「ええ!? い、いいんですか?」

「土地も大切にしてくれる人のところの方がいいだろうからね」

「あ、ありがとうございます!」


 男は感激した。

 何度も何度も頭を下げられて、お礼を言われた。


 さて、アンジェとサンを探しに行かないと――


「うわ!」


 身を翻すと、その先の木の陰に二人がいた。

 二人は隠れるようにしてこっちを見ている。


「い、いたんだ」


「はい! アレク様」

「全部見させてもらったよパパ」

「アレク様の名裁き。魔法だけじゃない、人の心に寄り添った素晴しい裁きです!」

「私すごく感動したよ。パシーン! と魔法で解決すると思ったけど、こっちも出来るパパのセンスに感動したよ!」

「アレク様裁きですね」


 アンジェとサン、母娘になる予定の二人は、ものすごく意気投合していた。

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Соломоново решение.
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