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06.善人、わかりやすい答えがわからない

「ねえねえ、ママがやってるそれ、何? なんでドラゴンに?」


 つぎの日、アンジェがカラミティ相手に治癒の魔法を練習している所に、少女が好奇心全開の顔でまとわりついていた。

 アンジェがカラミティ相手に練習しているのは日常でよく見る光景だが、少女がアンジェをママと呼ぶのははじめて見る光景だ。


「えっと、治癒の魔法の練習、ですよ」


 事情は説明したから理解したが、それでも「ママ」と呼ばれるのになれないって感じのアンジェ。

 こっちに救いを求める視線を投げかけてきたが。


「え? なに、パパと関係あるの?」


 私もパパと呼ばれてるし、アンジェにも慣れてもらおうと思って救いの船は出さなかった。


 ……決して面白いからとか、微笑ましいからこのままにしておこうとかそういうのじゃないぞ、うん。


「えっと、カラミティ様の魔法抵抗はものすごく高くて、それは治癒魔法も一緒なんです。だからカラミティ様の魔法抵抗を超える位治癒魔法を高めるための勉強なのです」

「へえ、すっごい。ママって努力家だね!」

「そんな事ないです。アレク様にふさわしい子にならなきゃって思ってるだけですから」

「それが努力家っていうの。だよ」

「……ぷっ」


 思わず吹きだしてしまった。

 アンジェと少女が同時に不思議そうな目でこっちをみた。


 いけないいけない、微笑ましすぎてつい。


 若干幼くて丁寧な言葉遣いのアンジェ。

 見た目通りにホムンクルスを作ったためにスレンダーでグラマーな少女。


 その関係が母娘というギャップについつい吹きだしてしまった。


 私は適当に笑って、ごまかしたが。


「うん、気持ちはわかるよ」

「ふぇ!? エ、エリザ、いつ来てたの?」

「ついさっき。楽しそうだから見てた」


 横に並んできたエリザ、彼女は片耳のオリハルコンイヤリングを私の側に来るようにたった。


「……」

「どうしたの?」

「ううん、エリザお忍びだよね」

「そうだけど?」

「綺麗すぎるから目立つなあ、っておもって」

「なっーー。ふ、ふっ……皇帝だもの、いざって時、ばれたときも恥ずかしくない格好をしているだけよ」

「なるほど」


 確かにそれは重要だ。

 エリザは割と、お忍びで調査して、その後身分を明かして皇帝の力を行使する事が多い。

 確かにそういう時無様な格好はできないな。


「べ、別に綺麗に見せる(、、、)ためじゃないんだからね! ぶざまに見られない用にってためだからね!」

「? うん、わかるよ。納得出来る」

「……その物わかりの良さがちょっといや」


 エリザは最後になんかぼそっと言ったが、聞き逃してしまった。


「ねえエリザ、今なんて――」

「ねえねえパパ、その人だれ」


 聞こうとしたら、少女がめざとくエリザを見つけて、こっちにやってきた。

 ちなみにエリザとは義理の姉妹のアンジェはこっちに向かってこなくて、しずしずと一礼だけして、カラミティ相手の練習を再開した。


「エリザベート・フォー・シーサイズ。エリザでいいわ」

「へえ、妖精の人?」

「何それ」

「あれ、違うの?」


 きょとんとするエリザ、首をかしげる少女。


「彼女は皇帝陛下だよ。今の」

「ふえええ!? こ、皇帝陛下なの!?」

「大げさにしなくてもいいよ。こういう格好の時はお忍びだから」

「はあ……すっごいねパパ、皇帝とも知りあいなんだ」

「知りあいどころか、彼は副帝で、国父なのよ」

「はあ……だから私が転生する先ここなんだあ」

「ふむふむ、どういう事かしらそれ」


 エリザは好奇心全開な瞳で少女に聞いた。


 少女はエリザに説明した。

 銀の災厄から解放された魂で、最後の審判がSSランクで、人間として生まれるには私の元しかないけれど、私がまだ子供を作るつもりがない。

 だからホムンクルスの肉体をつくってひとまず近くにいる。


 というのを、エリザにざっと説明した。


「なるほど、納得だわ」

「納得なんだ」

「あの光景は世界中の民が見ているしね、その中で最高の魂なら、あなたの所で生まれるしかないのも納得」

「皇帝の娘というのも収まっていいとは思うよ」


 エリザ自身Sランク魂だし、SSランクなら、いい時代の名君としてはありかも知れないと思った。


「ふむ……」


 エリザは少し考えて、少女にいった。


「どう? 私の娘というのは」

「えー、パパの娘がいいな」

「ところがね」


 エリザは少女の手を引っ張って、離れた所につれていった。

 そこで少女に何かを言ったが、距離が離れすぎて、何を言ってるのかわからない。


「いいかも!」

「お?」


 エリザがなんといったのか、少女が受け入れた――


「むしろこっちの方がいい!」


 ――どころか、逆にノリノリだった。


 話が終わった後、二人が戻ってきた。


「なんの話だったの?」

「秘密よ、女同士のね」

「うん! パパには秘密!」

「ふむ……」


 私は少し考えた。

 エリザの提案だから、彼女に関わりがあることだ。


 だとしたら。


「僕の娘で、エリザの義理の娘か妹にしてもらう、ってことかな。アンジェみたいに」


 皇女アンジェ。

 彼女は準男爵の娘だが、エリザの義理の妹になってる。


 皇帝は臣下に褒美をやらねばならない事が多い。

 男は出世させたりできるが、基本的に官職につかない女の人には義理の妹か娘ってことで、皇族にいれることが褒美になる。


 そういう話かな、と思ったら。


「ちがうわね」

「うん、ちがう」


 二人は即答で否定した。

 エリザに至ってはちょっとだけ呆れていた。


「じゃあ、ママって呼んでもいい?」

「紛らわしいから別の呼び方で」

「じゃあお母さん!」

「ええ」


 どうやらエリザの所に生まれるというのが提案の内容みたいだ。

 それ自体SSランクにふさわしいのかも知れないが、「むしろこっちの方がいい!」という少女の前向きさが気になる。


「ねえねえ、それいつなの?」

「こっちだと二番目だから気長に待ちなさい」


 二人のやりとりもよく分からなかった。分からないでいると、エリザに半分呆れ、半分すねた目で見られた。


 なんかよく分からなかった。

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