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05.善人、変身技が進化する

 半壊した屋敷を魔法で直していく。

 こういう時のためでもある、二つ目の袋に様々な資材を用意した。


 通常の資材を使わないで、私の魔力だけでなんとかして更に面倒を大きくさせたのがゼアホース温泉の一件。

 その反省も踏まえて、袋の中にため込んだ木材、石材、ガラスや鉄などをちゃんと使って、屋敷を修復する。


 袋から資材が次々と飛び出て、屋敷が高速で修復されていく。


 ちなみに父上とホーセンは離れた所で酒盛りをしている。


「こんな近くで義弟の活躍を見られるのは嬉しいぜ」

「兄弟、飲み過ぎるとこの先の活躍を見逃しかねないぞ」

「見逃しても義弟ならすぐにまたつぎの活躍するから、問題ねえよ」

「百理ある!」


 メイドに給仕させて、庭で酒盛りをする二人。

 いつも通りの二人は放置した。


「あの……」

「うん?」


 振り向くと、少女がいた。

 彼女は申し訳なさそうな感じで手を組んで、人差し指をチョンチョンとくっついたりして。


「ごめんなさい……」

「大丈夫、気にしてないよ。それよりも僕のそばから離れないで」

「えっ……あっ……」

「僕のそばにいれば大丈夫だから」

「うん……」


 少女はしばしうつむいて、それからパッと顔を上げた。

 上げた時にはもう、笑顔になっていた。


「じゃあ、パパの仕事の手伝いをする」

「手伝い?」

「うん! ずっと一緒にいて何もしないのは暇だからね。だったらお仕事の手伝いをして暇つぶし。だよ」

「なるほど」


 確かに、退屈が一番の苦痛だって言う人もいるし。

 少女の性格からして何もすることがないのはつらいんだろう。


「わかった。じゃあ手伝い宜しくね」

「うん!」

「じゃあまずこれ」


 私は袋を差し出した。

 とりあえず袋を持ってもらおうと彼女に渡したが、まだ体の制御になれてないのか、少女は袋を取り落としてしまう。


「あっ!」


 落としそうになった袋を慌ててキャッチする。

 私は手を伸ばして、彼女と一緒にキャッチした。


「大丈夫?」

「うん」

「まだ体になれてないから、ゆっくりでいいよ。とりあえずそれを持って歩き回って。屋敷の壊れてる近くに行くと自動で必要な資材が飛び出るようになってるから、それを持って壊れてるところを回るだけでいい」

「わかった!」


 少女は笑顔で頷き、走り出――そうとして、それをやめて、ゆっくり歩き出した。

 コントロール出来てない事を自覚して、少しずつならしていこうって意識が垣間見える。


 少女がゆっくりと歩いて行き、少しずつ遠ざかる。

 後を追いかけよう、って思っていると。


「義弟よ」

「ホーセン? どうしたの?」


 いつの間にかホーセンがすぐそばにやってきていた。

 酒臭いが、見あげた時にあった目は意外とはっきりしていた。


「今の、衝撃を受け流したな?」

「ホーセンには分かるみたいだね」

「おうよ。あのものを空中で掴む動作。あれ、義弟が止めてなかったら深さ十メートル級の溝が出来てたぜ」


 私は苦笑いした。

 普通の人間でも、落としそうになったものを拾おうとして、それを弾いてしまって、壁を傷つけたりガラスを割ったりすることがある。


 それと同じで、SSランクでホムンクルスの肉体に入ってる少女は、とっさの動きで大地をかち割る程の威力がある。


「それを何もなかったかのように止めるたあ、どんな魔法だ?」

「魔法じゃないよ、普通に力で止めただけ」

「なにぃ?」


 ホーセンの眉がびくっと跳ね上がった。


「馬鹿な、アレを力尽くで何事もなかったかのようにとめるとなりゃ、数倍、いや十倍近くの力の差がいる。さすがの義弟もそこまでじゃねえだろ」

「うん、普段の僕じゃ無理だったろうね。ホーセンには僕の変身の事を話したよね」

「ああ。しかし今の義弟は人間、本来の義弟の肉体だろ?」

「わかるんだ」

「あったりまえよ。義弟のことなら分からねえことはねえ」


 そこで威張られても困るんだけど。


「あれって、結局魂と肉体の『ずれ』がパワーを生み出してるんだよね。だからムパパト式の応用で、魂のピークと肉体の底を合わせる事で、一瞬だけ変身した時と同じパワーを出せる」

「はあぁ……すげえな義弟。そんなのできるんか」

「出来ないと彼女が気に病んじゃうからね」


 私の娘に生まれ変わる予定の少女。

 これも縁、出来れば、不自由なく幸せでいてほしいと思った。

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