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善人おっさん、生まれ変わったらSSSランク人生が確定した  作者: 三木なずな
第六章

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02.善人、まだまだ成長する

 エリザの誘拐を企んだ犯人は、ひとまず街の牢屋に放り込むことにした。


 最初はいつも通り、マジックカフスをつけて、更生を期待しつつ解放しようと考えたんだが。


「皇帝を狙ったんだ、死刑なんざ怖くともなんともねえ」


 と言われた。


 それが強がりかどうかは分からないが、本当に死が怖くない連中だったら、マジックカフスかけつつの解放は意味を成さない、何も解決しない。

 だからとりあえず拘束して、牢にぶち込んでおくことにした。


 体術でボロボロなった誘拐犯達が連行されていくのを見送った後、私はエリザとミア、二人に振り向いた。


 ドレス姿の二人と、野次馬達が目に入る。

 二人ともメチャクチャ目立ってる。


 このままじゃ何をするのも無理だな、ここはひとまず――


「屋敷に帰ろっか」

「分かったわ」

「分かりました」

「じゃあ瞬間移動の魔法を使うから」


 そう言うと、二人は小さく頷いて、私の左右にやってきた。


 ムニュッ、って擬音が頭の中でした。

 ミアが私に抱きつき、身長さで胸が丁度側頭部に押しつけられる様な形になった。


「むぅ」


 エリザが小さく呻いた直後、まるで対抗するかのように、彼女も私の頭に抱きついてきた。


 エリザとミア、左右から二人の胸が私の頭をサンドするように挟んだ。


「サイズで負けてるじゃないの……」


 頭上でエリザが何かつぶやいた。


「エリザ、何かいった?」

「なんでも! まだまだ成長の余地が残ってるからって言ったの」


 聞き直すと、何故かエリザが唇を尖らせて、ちょっとすねた風に答えた。

 何故成長の話になるのかよく分からないが。


「うん、エリザはまだまだ若いしね」

「……負けないんだから」


 なんの勝ち負けなんだろうか。

 エリザはそれを話す気はないようだから、聞き流して、二人をつれて瞬間移動の魔法を使う。


 空中に向かって落ちてから、目的地に向かって落ちていく魔法。


 ものすごい速度で飛ぶから、エリザとミアの胸が強く側頭部に押しつけられた。

 ちょっとにやつきそうな柔らかい感触。いいにおいもする。

 ちょっとエッチな気分になりかけたが、それを悟られない様に普通に振る舞う。


 幸い、一瞬でカーライルの屋敷に戻ってこられた。

 まずミアが私から離れて、その次にエリザが離れた。


 さっきはちょっと様子が変だったエリザだが、すっかり普段通りに戻っていた。


「ねえアレク、さっきのあれすごかったじゃない。練習してたの?」

「さっきのあれって、体術の事?」

「うん」

「ううん、してなかった。そもそも今まで気にしてなかったよ。魔法の方が便利だからね」

「そりゃそっか」


 エリザも納得したように、私にとって魔法の方がずっと便利だ。

 賢者の石の存在もあって、SSSランクの魔力のおかげもある。

 私は、やろうと思ったことを大抵魔法で出来てしまう。


 その便利さを生まれ変わってからずっと感じてきたので、純粋な体力で何かをするって発想はなかった。


「それをさっきちょっと思いついて、試してたんだ」


 そう言って歩き出す私。

 自然についてくる二人を連れて、さっきすりつぶした岩の所にやってくる。


 粉々になったまま、まだ片付けられてない岩クズ。


「へえ、これをアレクがやったんだ」

「うん、魔法じゃない方でね」


 そう言いながら、岩クズに魔法をかけて元の姿、九メートルの高さの岩山に戻した。


 そして、おもむろに殴る。

 体を使った攻撃に徐々に慣れてきたおかげで、最初の半分くらいの時間で、巨大な岩を再び粉々にした。

 素手で小さな山を真っ平らにした。


「おぉ……」


 ミアが感動した様子で声を上げた。


「あれ? ミアはさっき見たよね」

「いいえ、さっきは壊した後しか見られてませんでした。過程を、これほど凄まじい攻撃で砕くのを見たのは初めてです」

「そっか」


「……」

「どうしたのエリザ、その岩をじっと見つめたりなんかして」

「アレクさ、今これ元に戻したよね。魔法で」

「うん」

「もっかいやってみてくれる?」

「……? わかった」


 何故それを求められるのか分からないけど、もともと岩は庭園の景観の一部だから、最後は戻すつもりだったから丁度いい。


 魔法をかけて、粉々に砕かれた岩を修復。


 砕かれた岩は逆再生した映像のように、巨大な岩、ミニチュアのモリソン山に戻っていく。

 それをじっと見つめた――いや。

 それをやった私をじっと見つめたエリザが満足げな顔で頷いた。


「うん、やっぱりそうだ」

「やっぱりって何が?」

「アレク、魔力強くなってるよね」

「え?」


 予想だにしなかった言葉に思考が一瞬だけ止まった。


「魔力が強くなってるって……そんな事はないと思うけど」

「ううん、確実に強くなってる」

「そうかな」

「あたしが言うんだから間違いない……ずっと見てきたし」


 最後の方はぶつぶつとかなりの小声になって聞き取れなかったが、前半部分の自信は伝わってきた。


「なんだったら試して見なよ」

「そこまで言うんならちょっと試してみるよ」


 使用人達を呼んで、黄金を運んでもらった。

 最初に魔力をテストした時よりも遥かに多い黄金が私の前に並べられた。


 魔力量のチェックはいろんなやり方があるが、私の魔力だと黄金を使わないと測れないほど強大なものだ。


 だから黄金を用意してもらった。

 運ばれてきたそれに手をかざして――魔力を放出。


 瞬間、黄金が跡形もなく消し去ってしまった。

 前は出来なかった量が、今度はあっさりと出来てしまった。


「本当だ……上がってる……どうして?」

「なに言ってんの? そんなの当たり前の事じゃん」

「え?」


 エリザに振り向く。

 彼女は腕を組んで――妙に胸が強調される仕草で、半ば呆れたように言い放つ。


「アレク、あたしの事をまだ若いって言ったよね」

「え? うん、そうだね」

「アレクの方がもっと若い、ってか幼いじゃん。どう考えてもまだまだ成長の途中じゃない」

「これ以上更に!?」

「……おおっ」


 ミアが驚愕するが、私は普通に納得して、ポンと手を叩いた。


 言われてみればそうだ。

 つい失念しがちだが、生まれ変わった私はまだ十歳の子供だ。


 あの世で、私は「人間に生まれ変わりたい」と願った。


 人間で、十歳児。


 ならば体力も魔力も。

 この先、普通にもっともっと成長するのは確実な事だ。

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