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03.善人、損害ゼロで砦を落とす

 追跡の魔法に導かれて、更に進軍していく。

 やってきた次の砦は。


「ドゥーベ、だね」

「うん。第一の砦、ドゥーベ」

「確か番号が1だっけ」

「そう、普通に落とせる砦」


 神輿の上で、頷きあう私とエリザ。


 肌身離さず持っている賢者の石に念の為に確認した。

 プラウの結界、設定した番号よりも若い数字の砦が存在している間、その砦は無敵モードになる。


 第一の砦、ドゥーベ。

 一番若い番号の砦は結界の一部だが、実質普通の砦ということになる。


 エリザが語らなかった、賢者の石から追加で得た情報では、プラウの結界には他にもいくつかのオプションをつけられるが、何をどうやってもこのドゥーベは普通に攻撃出来る砦である事に変わりは無い。


「あの中にいるんだよね、カンペリ」

「うん、間違いない」

「じゃあ攻撃させる?」

「……うん」


 私は頷き、神輿の上に乗ったまま立ち上がり、縁の一番前に進みでた。


「全軍突撃、ドゥーベ砦を落として。一番槍とカンペリ捕縛の人には特に褒賞を出すよ」


 命令が即座に伝達され、士気がグングン上がった。

 神輿を守る本陣の兵を残して、ほぼ全軍ドゥーベ砦に殺到した。


 私は深呼吸して、魔法を発動させるために、足元に魔法陣を出した。


あれ(、、)を撃つの?」

「ううん、無色ビームは今回使えない。普通に効くのなら、向こうの将兵まとめてぶっ飛ばしちゃうからね」

「それもそっか」

「ちょっと、みんなのサポートをしようと思ってね」


 なるほど、と納得したエリザをおいて、私は更に魔力を高まらせた。

 ムパパト式で、魔力の波を感じ。

 限界、ピークの120%の一瞬を掬って、魔法を発動させる。


 魔法陣が広がり、大地が一瞬だけ光り輝いた。


「今のは?」


 魔法発動を確認したエリザが聞いてきた。


「ちょっとしたサポート。こっちが有利になるためのね」

「補助魔法って事?」

「そんなもの」

「そっか」


 エリザはそういい、砦攻略の戦況が優勢である事を確認して、満足げに頷いたのだった。


     ☆


 ドゥーベ攻略戦は半日で終息した。

 砦の上に帝国の旗があがったことを確認して、兵士に命じて、本陣である神輿を前進させた。


「ご、ご報告もうしあげます」


 砦の前まで来ると、隊長級の兵が数名、駆け寄ってきて神輿の前でひざまづいた。


「どうだった?」

「砦は陥落、カンペリ・フロンタルと思しき男を捕縛しました」

「うん」


 頷く私、真横でエリザが小さくガッツポーズしたのがちらっと見えた。


「こちらの損害は?」

「そ、それが……」


 言いよどむ兵士、私はなるほどと思った。


「怒らないから、正直に報告していいよ」

「は、はい」


 そう言われてもまだ言いよどむ兵士。

 しばらくして、ようやく意を決して。


「ぜ、ゼロです」

「ふぇ!?」


 隣でエリザが変な声を出した。


「うん、分かった」

「いやいやいやいや、分かったって。おかしくないアレク? ゼロだよ? いくら何でもゼロはあり得ないよ、そんなごまかしでごますりの報告をしたヤツは処罰しなきゃ」


 エリザがいうと、兵士がうっ、となった。

 そう、これが彼が言いよどんだ理由。


 普通では決してあり得ない、損耗ゼロ。


「さっき魔法をかけたのを覚えてる?」

「え? あっうん」

「あれ、厳密には魔法じゃなくて、プラウの結界を強化するものなんだ」

「強化? そんな事したらダメじゃん」

「強化っていっても色々あるんだ。プラウの結界のオプションの一つ、効果を限界まで上げると、相手の軍勢にも効果が及ぶ。


「相手……この場合こっちね」

「そう。無敵の砦の場合、攻撃する敵兵が弱くなる効果。そのかわり」


 一呼吸おいて。


「一番若い番号、普通の砦だと、相手が無敵になってしまう」


 だからつけなかったんだろうな。

 地形を併用すればつかえるオプションではあるが、それでも一つ目の砦は弱点を通り越して足手まといになる効果だ。

 プラウの結界を張ったものが知っても知らなくてもやらなかったんだろう。


 それを私が無理矢理追加した。

 プラウの結界を破壊する事は出来ないが、効果の後付けは出来た。


 それをつけたことで、一番若い番号、第一の砦ドゥーベは砦側が弱体化、帝国軍側は無敵になって。


 結果、損害ゼロになった。


「ゼロ、ゼロって……」


 砦を攻撃した側の損害がゼロ。

 戦争で一番あり得ない戦果に、私をよく知っているはずのエリザでさえ驚きすぎて言葉をなくしてしまったようだ。

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