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10.善人、民に慕われる

 あくる日の昼下がり、屋敷の庭に次々と荷馬車がやってきて、次から次へと品物を運んできた。


 それをメイド達が受け入れて、マリが書き留めてリストを作っている。


「アレク様、これは……?」


 外から帰ってきたアンジェがびっくりした顔で聞いてきた。

 庭の奥にカラミティが戻って来た気配を感じたので、二人でまたどこかで治癒魔法の練習をしてきたんだろう。


「お帰りアンジェ。僕たちの結婚祝いだよ」

「結婚祝い、ですか?」

「うん、式の招待状をこの前出したからね、それを受け取ったから祝いを送ってきたんだね」

「そうだったんですか……すごく多いですね」


 次々と運び込まれてきて、積み上げられていく贈り物をみて、アンジェは目を白黒させていた。


「アレク様、招待状はどのような方に送ったんですか?」

「帝国の貴族達はみんな。メイドのみんなの実家とかね」

「なるほど」

「ホーセンとミラーの所には自分で招待状を持って行った」

「お姉様には?」

「送ってない。エリザはアンジェの()で皇帝陛下だからね。身内だし、『奏上』という形になるしね」

「そうだったんですね」

「そうだ。一段落したらアンジェのお父さんのところにも挨拶にいこう。娘さんを下さいっていわなきゃ」

「えっ? でもアレク様、お父様は準男爵ですよ?」


 驚くアンジェ。

 アンジェと私の結婚は、副帝家と準男爵家の結びつきでもある。

 表向きには、私が出向くのは色々問題が生まれる。


「うん、だからこっそり行こう。ちゃんと『娘さんを下さい』って言わせて」

「……はいっ!」


 アンジェは嬉しそうに頷いた。

 見つめあう私とアンジェ、ちょっといい雰囲気になる。


「ご主人様」


 そこにメイド長のアメリアがやってきた。


「どうしたのアメリア」

「すみません、贈り物が多すぎて、置く場所がもうありません」

「ありゃ」


 アメリアの背後を見る。

 山のように積み上げられた贈り物。メイド達が整理しつつ屋敷や倉庫に運んでいるようだが。


「もう入らないの?」

「はい。予想よりも多く、もう屋敷には」

「わかった――カラミティ」


 魔法を使って呼ぶと、庭の奥から気配が動いた。

 普段は人前に出ないカラミティがのそりと出てきた。


 ざわつく。

 贈り物を持ってきた貴族達の使いの者達にどよめきが起きる。


「おい、あれって」

「帝国の守護竜……」

「本当にいたのか」


「カラミティ」

「なんだ、主よ」


 カラミティの「主」発言でまたざわつきが大きくなった。


「アメリアと協力して、受け取ってリストに入れた物をカーライルの屋敷に運んで」

「承知した」


「「「おおおおお」」」


 今日一番のざわつき――歓声にも似た声が上がった。

 多分、カラミティをあごで使ったのを目撃したからだろう。


「マリ」

「はい」


 リスト作りの協力をしているマリを呼び寄せた。


「どれくらい返ってきてる?」

「えっと……」

「人数で割って。副帝が正妻を迎える式だから、祝いの品は100%返ってくると思って良い」

「なるほど! それだと……えっと……あの……」


 唸るマリ、文字は得意だが計算は苦手のようだ。


「さ、三割、くらい……です?」

「うん」


 細かい数字が知りたい訳じゃ無い。

 計算があやふやでも、一つはっきりしてる事がある。


 まだまだ来るって事だ。


「どうしますかアレク様」

「そうだね……」

「ご、ご主人様」


 頭を悩ませていると、今度はアグネスが慌てて駆け込んできた。


「どうしたのアグネス」

「サイケ村というところから来てます」

「サイケ村?」


 ちらちらと背後を見るアグネス、その視線を追いかけて行く。


 すると、貴族達の豪華な荷馬車と荷物とは違って、簡素な牛車に食糧の山を積んで、見覚えのある村人達がその周りにいる。


 サイケ村。

 私が初めて食糧の買い取りを始めた村だ。


 招待状は送っていないのだが、聞きつけて祝いの品を贈ってきたみたいだ。


「村全員からの気持ちだそうです」

「そっか、それはお礼を言わないと――ん?」

「どうしたんですかご主人様」

「牛車がまた来るね、あれはサイケ村じゃないよね」

「え? 本当だ。ちょっと聞いてきます」


 アグネスは慌てて走って行って、新たにやってきた村人達に話を聞いて、また走って戻って来た。


「分かりました、リネトラ村ですご主人様」

「リネトラというと、ロータスか」

「あっ、また来ます! 行ってきます」


 アグネスがめざとく見つけて、屋敷の表に辿り着いた別の村の一団に走って行った。


 今度は戻ってこなかった。

 話を聞いた後戻ってこようとしたが、また別の村らしき人々がやってきたので、そっちに話を聞きに行った。

 一つ二つではない、アグネスがしばらく戻って来られないほど、次々とやってきた。


 どうやら、アレクサンダー同盟領の村の人々だ。

 貴族と違って農民にとってここまで来る旅費はかなりの出費だから招かなかったのだが、向こうから話を聞きつけて祝いを送ってきた。


「すごいですねアレク様。みんなアレク様に感謝してるんですね」

「ありがたいね。アヴァロンの次は、カーライルの領内でも一度式をやろっか。みんなが来やすくするために」

「はい!」


 私の提案に、アンジェは笑顔で同意してくれた。

 私は次々とやってくる村人を見守りながら、カーライル領ではどういう式にするのかを頭の中で練り続けた。

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