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07.善人、結婚の女神を口説く

 街の中にある私の神像の一つ、そこにエリザと二人でやってきた。

 神像の前には相変わらずの人だかりで、こっそりやってきた私達はそれに近づけず、遠くから眺めていた。


「ここで引っかかったの?」

「うん」


 頷く私。

 神像は創造神対策で、私の感覚を拡大、増幅する機能が盛り込まれている。


 その気になれば、神像の近くを通ったあらゆる存在の捕捉が出来る。


 エリザから貸してもらった指輪に残っているユーノーの気配を探ったらここに辿り着いた。


「しかしまあ、あの俗物もたまには役に立つわね」

「エリザは本当、創造神が嫌いなんだね」


 私は少し苦笑いした。

 ここまで来ると少し面白くも感じる。


「創造神なんて名乗ってなきゃ別にいいんだけど。そうしてるくせに器がちっさいのが嫌い」


 一気にまくり立てたあと、エリザの語気は一転。


「で、ここからどうするの?」

「しらみつぶしかな。ここで引っかかった気配はまだ新しいから、それを辿って探していくよ」

「なんか犬に探しものをさせてるみたいね」

「あはは、似たようなものかもね」


 エリザと談笑する一方で、私は意識をユーノーの捕捉に向けた。


「……いるね」

「あっさり見つけたのね」

「多分、神は自分の足跡に無頓着なんだと思う。普通の人間は感じられないからね」

「それもそっか」


 納得するエリザを連れて、私の神像を背にして歩き出した。

 ユーノーの残り香を辿っていくと、街外れの空き地に辿り着いた。


 空き地の中に一組の子供がいた。

 ともに10歳くらいの幼い子供、男の子と女の子だ。


「愚図! のろま! 早くしないとおいていくわよ」

「ま、まってよーミーナちゃん」


 遭遇したのは、一目で二人の力関係がよく分かるシーンだった。

 女の子はかなり高圧的な態度で男の子に荷物持ちをさせている。


「あれなの?」

「うん、あの子たちから気配を感じる」

「本人?」

「ううん、関わり合いがあるってだけで、本人じゃ無いよ」

「そっか」

「私になんの御用?」

「わっ、びっくりした」


 真横からいきなり話しかけられた。

 横を向くと、色っぽい女性が、空中でソファーとかに寝そべった格好をしている。


「あなたがユーノー様?」

「そういう君は今噂のSSS君だね」

「噂の?」

「人間のくせにあいつとドンパチやってるじゃない? 私達(、、)の間じゃ噂で持ちっきり」

「あいつ……創造神の事?」

「……まあね」


 なんかちょっと気になる間があった気がするが。


「ねえアレク、誰と喋ってるの? もしかしてそこにいるの?」


 同行して来たエリザが私の袖を掴んで、聞いてきた。


「うん、いるよ。せっかくだから見えるようにしてあげる」


 私は手を伸ばして、エリザの両目を覆うようにそっと触れた。

 神格者の力を使い、()を開く。


 手を離すと。


「本当にいた」


 エリザは大して驚くことなく、浮かんでいるユーノーを両目でしっかり捉えた。


「はーい、一応初めまして、皇帝さん」

「一応?」


 ユーノーはエリザの質問に答えず、ゆっくりと手を上げて、さっきの子供達をさした。


「あの子たち、どう思う?」

「そうね、思春期になったら面白そう? 恋心が芽生えたは良いけど、今まで散々好き勝手にやってきたから、あの女の子、自分の気持ちに素直になれない。ってところかな」

「ぴーんぽーん。そしてもっと面白いのが――君なら分かるでしょ、あの男の子」

「うん、魂が輝いてる」


 神格者になってからくせになった、魂の輝き、ランクを見る行為。

 女の子の魂もそれなりに綺麗だが、男の子はかなり輝いている。


「Aだよね、間違いなく。今がこうってことは、かなりの才能を持ってるのか、それともいい運命がまっているのか?」

「そう、あの子16になったら自分の意志に関係なくモテモテになるのよ。さなぎを破って蝶になった幼なじみの男の子と、自分の気持ちに素直になれない女の子」

「ドラマティックだね」

「……悪趣味」


 エリザがつぶやく。


「誤解しないで。私はあいつとは違うの。結ばれる運命の二人の、その途中の紆余曲折がみたいだけ」

「結ばれるんだ? あの二人」

「当然。ハッピーエンドじゃ無い恋なんて、見てて楽しくないわ」

「……そういうのをずっと見てたら、周りから結婚を司る女神って呼ばれるようになったんだね」

「正解」


 にこりと微笑むユーノー。


「と言うわけで、皇帝さんの事は昔からちょこちょこ盗み見してたの。あなたもかなり難儀な恋をしているからね」

「なるほど、だから一応なのね」


 エリザは納得した。

 ……難儀な恋になるのか、エリザは。


「意外な真実ね。それを話しても誰も信じそうに無いわ」

「で、噂のSSS君が私になんの用?」

「僕の結婚式に立ち会って欲しいって、お願いしに来たの」

「だれとの?」

「だれとの?」

「あなたの相手山ほどいるじゃない」

「山ほどはいないと思うけど……」

「まだ出会っても無い子もいるからね。産まれてない子も」

「産まれてない子も!?」


 それはさすがにびっくりした。


「そんなにびっくりする事? えっと……そのうちの一人が四年後に生まれてきて、SSS君と結ばれるのは三十年後ね」

「五十歳と三十歳ね、普通過ぎるわ」

「ねー」


 エリザの言葉に付合するユーノー。

 男が五十歳、女が三十歳。そして貴族。

 うん、びっくりはしたけど、結構普通かもしれない。


「むしろ、三十歳で貴族と結婚する女性ってどういう事なのか気になるね。一般論として」

「三十四年後に分かるんじゃない」

「そうだね」


 いずれ分かることなら急ぐことも無い。

 今はそれよりもアンジェのことだ。


 私は改めて、居住まいを正してユーノーに向き直って。


「アンジェと結婚する事になったんだ。その結婚式の立ち会いをして欲しい。お願いします!」


 深々と頭を下げた。


「えー……」


 ユーノーはつまらなさそうな声を出した。


「えっと、ダメ?」

「だってつまんない」

「つまんない?」

「SSS君とアンジェリカ・シルヴァでしょ。この先波風もなく幸せしか無い組み合わせじゃないの」

「おめでとうアレク、女神のお墨付きよ」


 エリザに祝福された。

 いや、それはそれで嬉しいけど。


「お願いします! 何でもしますから!」


 もう一度頭を下げた。

 アンジェの為、ここはどうしてもユーノーを口説き落とさないと。


「……なんでもする?」

「うん!」


 顔を上げて、ユーノーを真っ直ぐ見つめる。

 しばらくの間、ユーノーと見つめあう。


 まるで探るような眼でじっと見られてから。


「もうちょっと先になるけど、とびっきり難儀な相手を連れてくるから、その子をSSS君の側室に――」

「分かりました! お願いします!」


 ユーノーが言い切る前に即答した。

 彼女がそういうからには、結構面倒臭い相手かもしれない。

 それでも、アンジェの願いを叶えるためだ。


「よろしくお願いします!」


 私は再度頭をさげた。


「いいわ、その熱意に免じて、やってあげる」

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