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34.善人、こっそり創造神をあしらう

「はぁ……いいお湯でした」


 夜、湯上がりにパジャマ姿で、アンジェが寝室に戻ってきた。

 私は既にパジャマに着替えててベッドの上にいて、アンジェは近づいてきて、同じようにベッドの上に上がってきた。


「アンジェ、髪が半乾きだよ」

「ええっ、本当ですか。ごめんなさいアレク様、すぐに乾かしてきます」

「いいよ。こっちおいでアンジェ」


 手招きして、アンジェを呼び寄せる。

 私の目の前にやってきたアンジェの肩に手をかけて、背中をこっちに向かせた。


 そのまま、指でアンジェの髪を梳く。

 魔力を込めて、人肌よりもちょっと熱めの温度にした指で、彼女の髪を乾かしていく。


「アンジェの髪は本当に綺麗だね」

「ありがとうございます」

「はい、これで乾いたよ。さあ、寝ようか」

「はい」


 私はアンジェと枕を並べて広めのベッドで一緒に寝そべって、部屋についてる灯りを消した。


 子供の頃からずっとこうして一緒に寝てきた。

 私とアンジェの肉体が、成長してきた今でもそれは変わらない。

 同じベッドで、肩が触れあうかどうかの距離で、一緒にねる。


「今日も」

「うん」

「今日も、アレク様と一緒の、素敵な一日でした。神様に感謝です」

「あはは、最近はその神様、どうやら当てにならないみたいだけどね」

「お姉様もそう言ってました、えっと、俗物だ、って」

「エリザはその表現を気に入ってるみたいだね」


 創造神。

 私の善行度が増えすぎた? の一件で天使がやってきて、天罰が落ちるようになってから、エリザは創造神を「俗物」だと評することになった。

 何かにつけては「どこかの俗物と違って」という言い方をする。


「はい、いつも言ってますよね」

「正直、あっちに天罰が行かないかとヒヤヒヤだよ」

「それなら大丈夫だってお姉様言ってましたよ」

「おっ?」


 どういう事なのか、と横を向いてアンジェを見る。


 窓からわずかに差し込まれる月明かり、それに照らし出されるアンジェの秀麗な横顔は、大分美しく成長していて、一瞬だけどきっとした。


「あれは完全に俗物だから、こっちには手を出さないって」

「そうなんだ」

「大物感がないって、言ってました。えっと……人の顔色をうかがうばかりの八方美人のくせに、追い詰められて手段を選ばないダメ男、だって」

「創造神になんたる辛口」


 多分この世でそんな事が言えるのは彼女だけだろうな。


「あれ?」

「どうしたのアンジェ」

「そういえば最近、神罰そのものがなくなってます」

「ないね」

「もう諦めたのでしょうか?」

「ううん、諦めてないよ」

「え?」


 アンジェが驚いて、そのまま体を起こした。


 ベッドで上体を起こして座り、驚いた顔のまま私を見下ろす。


「どういう事なんですか?」

「うん」


 私も体を起こして、まずは室内の照明をつけた。

 そして少し離れた所に賢者の剣と一緒においてる収納袋を手に取って、中からあるものを取り出した。


 それをみたアンジェは不思議そうに首をかしげた。


「わっ、こ、これは……ホムンクルス?」

「似たようなものだね」

「似たようなもの?」


 ますます不思議がるアンジェ。


「これ、創造神が侵入しようとした時に使った肉体」

「………………えええええっ!?」


 盛大に声を張り上げるアンジェ。


「し、侵入って、どういう事なんですかアレク様」

「神罰を僕が完全に止められる様になったじゃない?」

「はい」

「もうあれを落として僕をどうにか出来る事はないから、次は搦め手でくると思ってたんだ。で、アヴァロンのあっちこっちにある神像にある術式を仕込んだ」

「アレク様の像ですね」


 私は頷く。


「人魚の為に解析した創造主の力に反応する術。創造神の力を察知したら僕が分かる様にした。そうしたらある日、ある神像の所でこれが引っかかった。変装して潜入するつもりだったみたいだね。僕が急行したら魂はさっさと脱出したけど」

「そんな事があったんですか……」

「創造神の力は解析済みだからね、感知するだけなら簡単だったよ」

「全然知らなかったです……」

「ふふ」

「……? アレク様、嬉しそう。どうして」

「アンジェでも気づかなかったのが嬉しいんだ。最近、こういうことは民の知らないうちに片付けてしまうのが一番だって思うようになったんだ。民には仕事を増やして、生活を豊かにして。それ以上の事は認識さえもさせない内に解決してしまう。それが一番だって思うようになってね」

「はわ……すごいです……」

「そういうことだから、創造神とは水面下でいろいろやり合ってるよ」

「そうなんですね。頑張って下さいアレク様!」

「ありがとう」


 アンジェの声援にお礼を言って、再び消灯し、今度こそ二人で眠りについた。

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