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06.善人、予測通り成長する

 あっという間に七日が過ぎて、私は再び庭に出て、スタンバイしていた。


 今日も天気が良くて、そしてアンジェとエリザが少し離れた所で状況を見守っている。

 さらには七日前は後で呼び出したアスタロトも、今回は先に出てきて、アンジェとエリザの横に立っていた。


 空模様が変わった、一気に神罰の前兆の、神々しさと禍々しさが同居する空模様になった。


 そして――神罰が降りる。


「はあああああ!」


 賢者の剣を突き上げ、神罰を受けて、体の中で変換――。


「うっ!」

「アレク様!?」

「だい、だいじょうぶ……」


 喉の奥からこみ上げてくる血の味がするものを強引に飲み下した。

 体の奥がズタズタになりそうな感覚だ。


 神罰、威力は前回と同じだったが、質――いや波長が違った。

 前回の成功体験のまま波長を合わせたらまったく違うもので、そのせいで体に取り込んだ創造神の力がダメージになった。


 しかし。


「これ、しきのことで!」


 歯を食いしばって、波長を掴み直す。

 ムパパト式で限界越えになれている私は、すぐに今回の神罰の波長をつかめた、合わせられた。


 一旦合わせると、後は前回と同じだった。


 神罰の力を一旦私の体を通して、変換して大地の恵みになって放出。


 前回と同じ、輝く魔力球が私の周りを埋め尽くした。


「ふう……」


 神罰がおわって、空模様も戻った。


「アスタロト」

「拝受します」

「うん、全部任せるよ」


 女神ながら忠実な僕のようであり、職人のように振る舞うようでもあるアスタロト。

 彼女は私が作った魔力球を受け取って、何処ともなく去っていった。


 入れ代わりに、アンジェとエリザがやってくる。


「アレク様! お口の周りに」

「うん?」

「待ってください!」


 アンジェは慌ててハンカチを取り出し、私の口の周りを拭く。

 ハンカチ――いやアンジェからいいにおいがして、ちょっとどきっとした。


「もう大丈夫です」

「ああ、口元に血がついてたのか」


 ハンカチを見せられて、頷く私。

 全部飲み干したと思ったが少しだけ漏れてたみたいだ。


 それをアンジェがかいがいしく拭いてくれた。

 黙って見ていたエリザが、ここで話しかけてくる。


「今回も上手くいったね」

「うん」

「悪あがきレベルのイタズラがあったみたいだけど?」

「大地をたたき割るレベルなのを悪あがきって言ってしまうのはどうかと思う」


 イタズラは……なんとなくエリザがいうとおりだと思った。


「でも、これで完璧に掴んだ。パターンを変えてくる事も頭に入った。次はもっと大丈夫になると思う」

「向こうは歯ぎしりしてるでしょうね」

「防がれたからね」

「それもあるけど、元々の話を思い出しなさいな」

「うん?」


 首をかしげて聞き返すと、エリザがあきれ顔で答えた。


「あなたを殺そうと放ったのを、そっくりそのままあなたの善行になったんだからね。元々あなたが善行積み過ぎたから止めようとしてるのにこれじゃ歯ぎしりが止まらないだろうね」


 なるほど。


 そこまでは考えてなかったけど、エリザのいうとおりかもしれない。


「それでも僕はやりたいことをやるだけだよ」


     ☆


 更に七日後。

 今度も庭で待機してて、アンジェ、エリザ、アスタロトが少し離れた所で見ていた。

 そして更に。


「いよいよだな」

「おう! 義弟の晴れ姿まだかな」

「わしは上でふんぞりかえってるクズの悔しがる顔が見たいのう」


 ちょっと離れた所で、父上と愉快な仲間達が酒盛りしていた。


 さすがに三回目ともなると、聞きつけてやってくるのはしょうがないことか。


 まあ、何か不都合が有るわけでも無いし、父上達のそれはいつもの事なので、放っておくことにした。


 私は待った、三回目――いや四回目か。

 神罰が来るのをまった。


 ……。

 …………。

 ………………。


 いくら待っても来なかった。

 晴れ渡った青空が徐々に茜色に染まっていくも、兆候らしいものすらまったく見えない。


「どうしたんだろう」

「やっぱり俗物だったわね」


 私のつぶやきに反応して、エリザが近づいてきた。


「どういう事?」

「こういう時の俗物の思考をシミュレートしてみた」

「うん」

「『もう撃ってやらん、蜜の味を知ってそれを期待する民衆に恨まれるがいい』」

「……そういうものなの?」

「そういうものなのよ。俗物っていうのは。私――の周りにそういうのが大勢いるわ」


 そう話すエリザ。

 創造神を俗物俗物と連呼するのはどうなのかとも思ったけど、なにやら実感がこもってるみたいで、そうに違いないという説得力があった。


「ま、そういうことだから何か状況が変わらない限りはもうないでしょうね。好意的に考えても、これ以上あなたの善行を積み上げる訳にはいかないし」

「なるほど、それはそうだ」


「えー、アレクの晴れ姿が見られないってこと?」

「なんだと! おいクソ創造神! とっとと撃ってこいこの野郎」

「くくく、やはりクズだったのう」


 酒盛りしてだいぶたつ、すっかりできあがった父上と愉快な仲間達は野次馬と化していた。


「そういうことならしょうがないね」


 私はおもむろに賢者の剣を抜いて、地面に突き立てた。


 目を閉じ、意識を集中。

 ムパパト式で魔力を高めにキャッチ、ヒヒイロカネの剣で増幅。


 そして、放出。


 輝く魔力球が、私から次々と生まれて、放出された。


「ふう……ひぃふうみぃ……うん、数はほとんど一緒だね」


 終わった後目を開けて数えると、前回神罰を変換して出来たのとほぼ同じ数で、一安心した。


「どういうこと?」

「同じのを作ったの。元々力は借り物、やってる事は僕が出来る事だから」

「あっ、そっか」

「それに――」


 私は空を見上げた。


 次の次くらいで、そろそろ普通に防げるようになる。


 力が拮抗する位まで上がってくるとおもっていたのが、予想通りだった事に、ちょっとホッとした。

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