読者への挑戦
作者から、読者への挑戦状――
閉ざされた世界にて展開された、世にも残酷で猟奇的な連続殺人事件も、いよいよ終盤を迎えようとしている。十名の参加者ではじまったリアル人狼ゲームであるが、現時点で生存が確認されているのは、堂林凛三郎、川本誠二、丸山文佳、西野摩耶、一ノ瀬祐之の五名だけとなってしまった。一ノ瀬歩美子の生存は、依然として不明であるが、そのほかの、相沢翔、高木莉絵、久保川恒実、藤ヶ谷隼の死亡は、生存者たちによってはっきり確認されている。
ここで作者から、心より尊敬申し上げる読者諸君へ、ささやかなる挑戦状をお送りしたい。
この忌まわしきリアル人狼ゲームを終結させるためには、毎日の中でわずか一時間しか稼働しない電気椅子を用いて、人狼を処刑しなければならない。そのためには、参加者の中に紛れ込んでいる恐ろしい人狼を見つけ出す必要がある。しかしながら、ゲームも六日を経過しようとする現時点で、人狼もいくつかのミスを犯しており、人狼が誰であるのかを特定する情報は、今にして思えば、場に十分に出尽くされていたのであった。
読者諸君が、本編の文中に散りばめられたさまざまな手がかりを一つ一つ丁寧に収集していき、それらの断片を鋭い洞察力で分析して、つなぎ合わせてゆけば、この忌まわしき事件の全貌が描かれた地獄絵図は、おのずと浮かび上がってこよう。
それでは最後となるが、読者諸君の助けとなるであろう、いくつかの貴重な追加情報を、ここで提供をさせていただく。
まず、本編の途中で、人工知能のアオイが断言した発言は、結果的にすべてが真実であったことを、作者の面目にかけて、ここで保証しておく。ぜひ、読者諸君の推論の土台としてもらいたい。
一方で、堂林凛三郎氏の手記の内容であるが、あくまでも彼自身の視点から得られた情報をもとに書かれた個人的な手記であり、残念ながら本人の勝手な主観もいくらか含まれてしまっている。したがって、たとえ本人に悪気はなかったにしても、結果的に事実とは異なる内容の記述がいくつかあったことを、あらかじめ読者諸君にはお断り申し上げておく。
さらに、これは後日になってから判明した事実であるが、藤ヶ谷隼の殺害手段に関して、貴重な手掛かりをひとつ、読者諸君に明らかにしておこう。
人狼は、電気椅子のスイッチを、なんらかの遠隔操作や時限装置などの機械トリックを用いて押したのではなく、みずから現場にて、直接スイッチを指で押すことによって、藤ヶ谷を殺害をしている。
加えて、人狼が密室を構成するために、ここまでの文中に記述がなかった秘密の通路や隠し扉を用いた、たとえば霊安室とボイラー室をつなぐ秘密のトンネルが存在した、などという不誠実かつ軽率な解答は、作者の意図するものではないことも、あらためて読者諸君に公言をしておく。
では、ここでいったん、筆を置かせてもらおう――。
さあ、賢明なる読者諸君よ。のちの解決編で暴かれる驚愕の結末を読む前に、果たして貴方は、この事件の真相に無事たどり着くことができようか。くれぐれも諸君のご健闘が実を結ばんことを、作者はいつも切に願う次第である。
ここから先は解決編となります。熱心な読者の方は、先へ進まれる前にご自分の推理を再検証してみてください。




