19.処刑
「さてと。現場ですが、実に奇妙じゃないですか。化粧台の椅子がこんなに後ろまで引き出されているなんてね」俺はぐるりと同伴者の顔を見まわした。
「なにか理由があるのかしら」丸山が、手で口を押さえながら、考えにふけていた。それを見て、川本が口を開く。
「ふん、そんなの説明するのは簡単さ。爺さんのそばにバスタオルが転がっていただろう。爺さんは昨日、シャワーを浴びてから、ほとぼりが冷めるまでその椅子で座っていたんだよ。ところがそこを、背後に隠れ潜んでいた人狼から襲われて、後頭部を殴られたというわけさ。
しかしなんだ。相沢しかり、高木しかり、そして久保川の爺さんしかり。人狼閣下は裸体と撲殺がお好みあそばすようだな」
「だがな、その椅子は、この部屋唯一の出入り口である扉の方向を向いている。となると、人狼が襲い掛かってきたのは、久保川医師の正面からになってしまうぞ」と、俺は反論した。
「それが違うのさ。久保川がシャワーを浴びている最中に、人狼はこっそりこの部屋に忍び込んでいて、そこのベッドの横で待機していたのさ。侵入手段はもちろん、マスターキーを使ったんだ。
すると、風呂から出てきた久保川が、ここへ椅子を引き出して、のんびりとくつろぎ始めたもんだから、これ幸いと、凶行に及んだんだ。
これで、爺さんがなぜ裸で殺されたのかの説明が付くし、さらにはバスタオルがそばに落ちていた理由も説明できる」川本は満足げにふんぞり返った。
「そして、賢明なる人狼さまは、犯行で用いた凶器は大切に持ち帰ったのに、ここへ侵入するために重宝したマスターキーは、わざと分かりやすく、机の引き出しの中へ、目立つように置き去りにした、ということか?」俺は、再度疑問を呈示した。
「おそらく、人狼閣下の遊び心がさせた突発的な行動なんだろうな。さっき丸山が口ずさんだけど、こいつは俺たちへの挑戦なんだよ。
賢明なる村人諸君よ、この不可解極まる二重の密室殺人の謎を見事に解き明かしてみたまえ、ってところかな」
「じゃあ、その久保川医師が殺された時刻は、いつ頃なのかしら」丸山が俺に目を向けたから、俺は遺体をさっと指差した。
「ほら、死後硬直の状況を見てください。硬直が指先にまで、完全に全身に及んでいるのが、素人目でもはっきり確認できるでしょう。つまり、久保川医師が生前にみずから唱えられた理論に従えば、少なくとも死後十二時間以上が経過していることになりますね。
シャワーを浴び終えた久保川医師がこの椅子で休んでいたのに、現場発見時に椅子が濡れていなかった理由の説明が、これで付きます。すなわち、椅子の表面が乾くのに十分過ぎるほどの時間が、すでに経過しているというわけですね」
「今の時刻は午前九時二十分か。だとすると、犯行が行われたのは、昨日の九時よりも前となるんだな……」川本がボソッとつぶやいた。
「より正確には、わたしたちがこの現場で最初に目撃した時から、遺体の硬直状況はこんな感じでしたよね。そのあとで、鍵やパピルスの検証などでかなり時間がかかって今の時刻となっているわけです。だから、遺体を発見した時刻は、八時半よりはずっと前であったわけですね。したがって、久保川医師の死亡推定時刻は、遅くても昨晩の八時よりは前でなければなりません。さらに、生きている久保川医師を最後に目撃したのが昨日の昼ですから、一時よりは確実に遅かったことになります」
「てことは、昨日の午後一時から午後八時までの間か……。
そのすべての時刻にアリバイがあるやつなんて、とてもいそうにねえな。もう少し犯行時刻がしぼり込めるといいんだが」
「つまり、あたしたちの誰もに、依然として人狼である可能性が残っているといいたいのね」
「いや、人狼は藤ヶ谷で決まりだよ。それしかありえねえじゃんか。これまでのありとあらゆる状況証拠のすべてが、そいつを物語っているんだ」と、川本が強く断定した。
「だがそうなると、久保川医師殺害の二重の密室の謎を解かなければならなくなる。たとえ藤ヶ谷といえど、生身の人間なんだから、あの現場から煙のごとく消えうせることはあり得ないからな」
「あの、差し出がましいようでございますが、このお部屋の壁時計ですが、三時五十分で止まっておりますよね」突然、一ノ瀬氏が思わぬ指摘をした。
「えっ、なるほど」たしかに、いわれるまで気が付かなかったが、壁に掛かっている時計の針は、ピタリと動かずに止まっていた。
「だとすると、犯行時刻は昨日の午後三時五十分ということか」川本が腕組みをしながら、うんうんとうなずいた。
「いや、時計が壊されているわけでもない。単に電池切れだろう。だとすれば、犯行の時刻とこの時計が止まった時刻との間に因果関係なんてなにもありはしないよ」俺はきっぱりと否定した。
「もう一つだけ、気になることがございます」と、一ノ瀬氏が付け足した。
「なんでしょうか」
「はい。昨日、わたくしは使用済みの衣類を回収しようと、久保川さまのお部屋へ出向いたのでございますが、二階の東廊下の扉の鍵が掛けられており、その先へは進めなかったのでございます」
「二階の東廊下の扉とは、いわゆるガフの扉のことですね」俺は一応確認をしておいた。
「さようでございます」
「その時刻はいつ頃でしたか」
「はい、午後四時頃でございました」
一ノ瀬氏がいい終わると、川本が割り込んできた。
「ふむ。ということは、犯行時刻はそれより前ってことになる。なにしろ、密室が出来上がっていたんだからな。つまり、久保川が殺されたのは、昨日の午後一時から四時の間だ!」
「まだ安易に決め付けるのは早い。たしかに、俺は先ほど、久保川医師の死亡推定時刻を午後八時よりは前だと断定したが、その理由は、死後硬直が全身に及ぶ時間が通常の遺体だと十二時間くらいである、ということに基づいている。しかし、年を取っている久保川医師となると、死後硬直が全身に及ぶ時間がもっと遅くなるはずだから、そうなると、久保川医師が殺された時刻は、実際には、八時よりもずっと前であるような気がする」
「ずっと前ってことは、四時よりも前ってことなんだな」川本が念を押した。
「さあ、俺は専門家ではないのでね。感覚的には、午後の六時より前だとしても良さそうな気はするが、とにかく、午後八時より前であることだけしか、確信を持って断言はできないようだな」
ふと気付くと、西野の姿が見えなかった。俺たちが議論に夢中になっている隙をついて、どうやら単独で勝手な行動を起こしているようだ。となりの七号室をのぞいてみると、そこに西野が一人でいて、なにやら化粧台の引き出しを開けて、中を調べている真っ最中であった。俺が入った時に、彼女はちょうどなにかを見つけたらしく、それをこっそりとスカートのすその中へ隠したように見えた。なにか、白い布のように見えたのだが、なんであったのかは、はっきりとは分からなかった。
「おい、そこで何をしている?」と、俺が声を掛けると、西野はビクッと猫のように跳びはねた。相当に驚いたみたいであった。
「あっ、あのう、ちょっとお部屋の中を見ていました」西野はこちらを振り向くと、言いわけにもなっていない言葉を返しながら、微笑んだ。
「あまり勝手な行動をとるなよ」と、俺は軽くいさめてやった。この場に及んで相沢の部屋からなにを見つけ出したのかは知らないが、どうせ事件解決のために重要なアイテムとも思われないから、ここはおとなしく見過ごしてやることにした。
再び場所は、久保川医師の部屋。議論は発見された二つの鍵の処理方法についてである。
「まず、八号室の札付きの鍵はこのまま放置してもかまわないでしょう。なにしろ、この鍵で開閉できる扉が二つとも、破壊されて、なくなってしまったのですからねえ。もはやこの鍵は、極めて人畜無害なしろものに成り下がってしまったわけであります。
さて、懸案のマスターキーです。こちらが持つ破壊力は計り知れません。どうしますかね。我々の身の安全を図るために、今すぐここで潰してしまいましょうか」
俺の提案に、川本はあまり乗り気ではなさそうだった。
「しかし、マスターキーを潰せば、もしかしたら想定外の困難が生じるかもしれんしな」
「それなら、誰かがマスターキーを管理しなければならないわね。
でも、その手段はどうすべきなのかしら。当然、ここにいる全員が、自分がマスターキーを所持したいと申し出るに決まっているのだから」
「わたしにいい考えがあります。複数の人間に責任を負わせればいいのです。一ノ瀬さん、この屋敷に小型の金庫はありますか」俺は一ノ瀬氏に訊ねた。
「ございます」
「その金庫の鍵は?」
「一つだけだと思われますが」
「ここへ持ってきてください」
一ノ瀬氏は一階へ下りていき、間もなく戻ってきた。その腕には、小物入れのような黒い直方体の箱が抱えられていた。
「こちらでございます」
「金庫を開ける鍵はこいつだけですね」俺は、金庫といっしょに手渡された小さな銀色の鍵を電灯のあかりにかざした。
「この金庫にマスターキーを入れてから鍵を掛け、あとは、金庫の鍵と、金庫自身を、別々の人物で管理すればいいんですよ。そうすれば、マスターキーを自由に使える人物は、誰一人いなくなりますからね」俺はみんなに説明をした。
「なるほど」
「では、金庫を拝見いたします。重くはないですが、壊すのには相当な力が必要でしょうね。おそらく、道具なしには、通常の男性でも破壊するのは無理でしょうね」俺は金庫を持ち上げて、六つの面と十二ある縁のすべてを一通り確認した。
「ちょっと待て。その金庫を開ける鍵は、そこにある鍵しかないのだろうか。もしも、ほかにあるのなら、俺たちがしようとしていることは、まったく意味がねえことになってしまうが」川本が指摘した。
「じゃあ、あたしがアオイに訊いてみるわ。まだ、質問権が残っているから」丸山がすかさず申し出た。「アオイさん、質問をします。ここにある金庫の開け閉めができる鍵は、ここにあるこの鍵、ただ一つしかないのかしら?」
天井から、アオイの声が返ってきた。
「確認します、丸山さま。それはアオイへのご質問ですか?」
「ええ、そうよ」
「丸山さまのご推察どおりでございます。その小型金庫を開け閉めできる鍵は、そこにあらせられる鍵、ただ一つしか存在いたしません。そして丸山さま。あなたの質問権が、たった今、消費されました」
「さあ、これで安心だ」さっきとは打って変わって、川本が身を乗り出してきた。
「では、マスターキーを保管しましょう。はい、みなさんの目の前で、たしかに金庫の中へ入れましたね。そして、金庫に鍵を掛けます。確認してください。鍵が掛かっているかどうかを」俺は、一つ一つの動作を丁寧に、誰からも見えるように配慮しながら、着実にやり遂げた。
「OK、大丈夫だ。じゃあ、金庫と鍵を管理するのは誰がいい?」川本がゴーサインを出した。
「金庫は西野嬢がいいと思います。一番力が弱そうですし、まさか彼女がこの金庫を破壊できるとは思えませんからね」
そういって、俺はちらりと西野に視線を向けた。西野は大真面目な顔で、無言のまま何度もうなずいていた。
「ほうら、お嬢さん。あなたが喉から手が出るほどに欲しがっていたマスターキーがこの中に入っていますよ」
俺は西野の眼前に金庫をかざして、ゆっくりと左右に動かした。西野はまるで麻薬患者のようなうつろな目で、俺が動かす金庫を目で追いながら、首を左右に動かした。
「ただし……、ただではだめだ。交換条件がある!」と、俺はわざと分かるように語尾を強めた。すると西野は、お預けをいいつけられた子犬が憐れみを乞うような目で、俺の顔をじっと見つめた。
「いいか、この鍵を渡す代わりに、今後緊急会議が開かれたときには、必ずそこに出席をすること。勝手な行動は取らない。それが守れなければ、この金庫を渡すことはできないが、それができるのかい。お嬢さん」
西野は、両方の手を金庫に向けて差し伸べながら、必死になって、うなずく行為を何度も繰り返した。
「いい子だ。どうやら契約は成立だな。じゃあ、次は金庫の鍵ですが、それは一ノ瀬さんに……」
俺がそういうと、川本が割り込んできた。
「いや、それはだめだ。西野と一ノ瀬氏は仲がいい。二人が共同戦線を張る危険がある」
なるほど。そういわれてみれば、たしかにそうである。
「じゃあ、西野と仲が悪い人物となると、誰になるんだ?」
「この俺さまだ。俺のいうことを西野が従うはずがない。文句はあるまい」と、川本があっさりと決めつけた。
「ふっ。それもそうかもしれないな。だがな、川本。お前にも交換条件がある」俺は意地悪そうに川本へ視線を向けた。
「なんだ?」
「この金庫の鍵を手渡す代わりに、『No.2』のパピルスを公開しろ。お前が隠し持っていることは、みなが知っているんだよ。さあ、どうする」
川本はしばらく考え込んでいたが、やがて観念したようであった。
「ふん、分かったよ。今。持ってきてやらあ。俺の部屋のパピルスをな」
川本は自室へ戻り、羊皮紙を持ってきた。
「かなり踏み込んだ過激な内容が書かれているようだが、英語が難しすぎて、俺には意味がさっぱり分からないんだ。ここには辞書も何にもねえからな」と、川本が言いわけをした。たしかに、そこに書かれた 英単語は、これまでのパピルスよりもかなり専門的な内容であった。
さすがの俺にも、全部の意味は分からなったが、一応、メモには内容を書き留めることにした。
ほかの連中もポカンとしている感じだったが、西野だけは、なにやら英単語を見つめているうちに、一瞬驚いたように目を丸くしたのが確認できた。単なる学生の分際で、こいつには意味が分かっているのだろうか。
「最後に、斧は一ノ瀬氏に管理してもらいます。こいつも扉を開けるということに関しては、マスターキーに匹敵する能力を秘めていますからねえ。でも、こいつを使用すれば大きな音が出ますから、さすがに館内にいる誰もがその行為に気付くことでしょうけど」
こうして、以後この屋敷の個人のセキュリティを左右する三種の神器ともいうべき、マスターキーが入れられた金庫、その金庫を開ける鍵、扉を破壊できる斧、のそれぞれは、西野摩耶、川本誠二、一ノ瀬祐之の三名で、別々に管理されることとなった。
その後、マスターキーが入った小型金庫を大切に胸の中でかかえながら、西野が嬉しそうに自室へ戻っていった。これからはずっと自室へ引きこもるつもりなのであろう。
俺は川本へ声を掛けた。「久保川爺さんの遺体を霊安室へ運ぼうぜ。こんなところに置いといたんじゃ、浮かばれんだろう」
さっそく、俺と川本で久保川の遺体を霊安室へ運ぶことにしたのだが、その作業は思っていたよりも簡単ではなかった。
「こんな骨と皮のじじいなのに、なんでこんなに重いんだ」川本がぜえぜえと肩で息をしていた。
「死後硬直が完了して、遺体がこちこちに固まっている。こいつはもはやダンベルと同じだよ」
ところが、霊安室の入り口で、俺たちはさらなる予期せぬ障害に阻まれてしまうのであった。
「鍵が掛かっている……。なぜだ。おい、マスターキーを持ってこい!」
俺と川本は交互に霊安室の扉のノブに手を掛けて開けようと試みたが、鍵が掛けられており、扉を開けることはできなかった。
重たい久保川の遺体は、とりあえず霊安室の前に放置して、俺と川本は全員を集めに館へ戻った。居間で話をしていた丸山と一ノ瀬氏に声を掛け、さらに一ノ瀬氏には、西野にも声を掛けてマスターキーの入った金庫を持参させるよう、指示を出した。やがて、丸山と一ノ瀬氏が、そして最後に金庫を胸に抱きかかえた西野が、霊安室前にやってきたが、西野は口をとがらせながらむっつりしていた。
川本がポケットから小型金庫の鍵を取り出し、西野から金庫をひったくると、金庫の鍵を開けた。中から取り出した七番札の付いたマスターキーを、霊安室の扉の鍵穴へ差し込むと、カチャリと音がして、霊安室の鍵が開けられた。
「状況はさっきと同じです。行動はみんなで協力して行いましょう。くれぐれも気を付けてください。もしかしたら、部屋の中には藤ヶ谷が隠れていて、こちらへ襲い掛かってくるかもしれませんからね」俺はみんなに注意をうながした。
「真っ暗だ。電気は一ノ瀬さん付けてください。スイッチの場所はお分かりになりますよね」
俺の指示に従って、一ノ瀬氏が暗闇の中へ入っていった。時間として十秒もかからずに、ほどなく電灯がともされた。
「まず、手前から順番に調べましょう。あまたある棺の中を一つ一つ確認するのです。何者かが隠れていないかをね。
例のごとく、俺と――、いや、わたしと川本の二人で調べますから、あとのお三方は、扉の前で見張っていてください」
俺と川本は十個ある重たい棺の蓋を一個一個開けて、中を確認したが、五番目と七番目の棺に、高木と相沢の遺体が収められているだけで、ほかの棺には猫の子一匹、つまようじの一本も、入ってはいなかった。
高木と相沢の遺体には、新たな変化が表れていた。肉体の腐敗が始まり、死後硬直が解け始めていたのだ。久保川医師の説明であったいわゆる『緩解』という現象である。死後三十時間くらい経ってから始まるものらしい。高木が殺されたのが三日目の深夜で、今が六日目の午前十時を少し過ぎたところだから、かれこれ六十時間近くが経過していることになる。計算上、こいつは納得できる結果である。
「棺の中には誰もいませんでした。あと隠れられそうな場所といえば、電気椅子部屋くらいでしょうか」
そう告げて、俺は出入り口にいる三人を霊安室の中央へ呼び集めた。電気椅子部屋へ目を向けると、小さなのぞき窓から、中の様子がかろうじてうかがえた。
「はっ、誰かが電気椅子に座っているわ!」
かなり目がいいのか、丸山が叫び声をあげた。
俺たちは全員でゆっくりと電気椅子部屋へ近づいていった。たしかに、のぞき窓の向こうには、冷たい椅子の金属色ではなく、人間の肌のような茶色が見えてきた。
俺が先導して、電気椅子部屋の扉を開けた。五人がいっせいに中をのぞき込んだ。
一人の人間が、椅子にしばりつけられたまま、息絶えていた。しかも、その姿たるや、あろうことか、一糸まとわぬ全裸の状態であったのだ。
「まさか、こんなことが……」
川本が口をぽっかり空けたまま、放心状態になっていた。丸山もすっかり声が出せない様子である。俺は冷静にふるまおうとつとめたが、さすがに想定外の結末に、頭脳は混乱を極めた。
電気椅子に、藤ヶ谷隼が腰かけていた――。
カッと見開いた白眼が、うらめしそうに天井をじっと睨みつけ、見事なまでに鍛え抜かれた筋肉の塊と、股間の間で膨らんでいる雄牛を思わせる人間離れした巨大な突起物が、挑発的にこちらへ向けられていた……。