九話
「――大会? いったい何の?」
「百年に一度開かれる、天界と冥界と地上の代表同士で闘い、最も強い者に魔王の玉座に踏み入ることの出来る魔法を与え、その後魔王と闘い、勝った場合は魔王の座を奪うことが出来る。そういった大会よ」
「でも確か、その大会で人間の代表として行った人が一回戦を突破したことって無かったですよね?」
「そうなのか?」
「まあ、小耳に挟んだ程度ですがね」
だから、確証はないと。
「で、何故俺たちにそんな無茶な大会に出ろと言うのですか? 先生」
「いや、出ろとは言ってないけど、今回の私の使い魔の暴走と、あなたの仲間の……。名前は何だっけ?」
「フレイさんと、フェンリルです」
「そうそう。まあ、その子たち二人が暴走したのも、魔王が原因なんじゃないかって、私は考えているの。だから、あなたたちにはその大会に出るためのお手伝いをして欲しいと思ってるの。もし、原因が分かったら、あなたたちの仲間の暴走を止めることができ、私の使い魔の暴走も止めることができる。一石二鳥じゃない?」
顔を近づけてきて俺とななを誘ってくる先生。
どうしても先生はこの大会に出たいらしい。
はあ……。
仕方がない、手伝ってあげるか。
どうせ、断っても意味がないだろうし。
「で、具体的にはなにを手伝ってほしいんですか?」
先生は、実に言いにくそうに俺から目をそらす。
「そのー。二人には私とパーティーを組んで欲しいの。で、そのままこの大会にエントリーしてもらいたいの……」
「やっぱり大会に出るんじゃないですか! まあ、そんなことだろうとは思ってましたけどね!?」
「ち、違うの。この大会に出るためには予選があるの」
「「予選?」」
俺とななの声がそろう。
「なんですかそれ?」
「最初の説明で、天界と、冥界と、地上の代表で闘うって言ったでしょ? だから、その代表決めがあるの。その代表決めのために、あらゆる冒険者たちがパーティーを作って集まって予選を行うから、そのために大会に出て欲しいの」
「なるほど。その人数合わせのために俺たちにも出て欲しいと。そういうことですね?」「うん。で、出てくれる?」
そっか、闘うのか……。
俺、闘うのは得意じゃないんだよな。
まあ、一人じゃ無いって言うし。
「……なな、お前ってどれくらい強いんだ?」
「私ですか? そうですね……」
ななが、頭を傾げて考える。
「あ、先生。思ったんですけど。先生って悪魔でしたよね? それなのに人間が出る大会に出られるんですか?」
「大丈夫よ。私、戸籍上は人間だから」
「確認って戸籍だけなんですね。なんて緩いんだ」
「わかりません!」
俺の隣でなながいきなり叫ぶ。
なんだこいつ。
「お前いきなり叫ぶな。……なんだ、どうした?」
「いや、だから、自分の実力が分からないという意味です」
あ、そういえばこいつに聞いたのか。
てか、分かんないのかよ。
「困ったなー。どうするか……」