表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

五話


 俺の目に映る物が、地獄のような燃え盛る炎から、木造の家で行われているパーティー会場へと変わる。

 つまりは俺の家だ。

「うお! どうしたんですか正樹!? 服が焦げてますよ」

「その話は後だ。フェンリル! なな! 俺につかまれ! さっさとここから逃げるぞ」「正樹! フェンリルちゃんが……」

「あ?」

 なんだよ!?

 この忙しいときに。

 フェンリルがまたよくわかんないこと言って動こうとしないのか?

 そう思い、俺がフェンリルの方を向くと。

「え? なんで、爪出して……」

「そんなの、フェンリルちゃんの目を見れば分かるでしょう!? 殺す気だからですよ!

ど、どうしましょう!? 私達じゃ勝てませんよ!?」

 くそっ、テレポートが使え無いときに限って、こんな目にあうとか、今日の俺はどれだけ運が悪いんだ。

「……あら、随分と楽しそうじゃない」

 今、フェンリルとの戦闘が始まろうとしているときに、フレイさん登場。

『プライベート・テレポート』の効果が切れたのだろう。

『プライベート・テレポート』の効果は、その空間から、使っている本人、つまり俺が消えた場合、数分後に解除される。

 だから、俺がいなくなったあの空間は、消えてしまい、テレポートする前のこの家に戻ってきたのだろう。

 まずいな。

 二対二じゃ勝てない。

 それよりか、死ぬ。

 テレポート系の魔法は、連続で使用することができない。

 発動するまでに数分の間隔を空けなければならない。

「グルルルル……」

 フェンリルが、まるで狼のような黒いうめき声をあげ、俺たちに殺気を向けて、腰を低くして、戦闘態勢になる。

 その瞬間、俺は魔法を一つ、唱える。

『ゲイル』

 フェンリルが脚に力を入れたのか、ぺキリという、板が折れる音が鳴る。

 が、その後、フェンリルは姿を消した。

 俺が、辺りを見渡し、探していると。

「――ッ」

 フェンリルは俺では無く、俺の隣に居たななの左脇からたてた爪で、ななを攻撃しようとしていた。

 とっさに、俺の身体が動く。

 なにか作戦を立てていたわけでもなんでもなく、単純に身体が動いたのだ。

 そして、俺の身体は、疾風の如く速さで、ななの身体を抱いて、俺の腹の下へと潜りこませた。

「ぐあ……!」

 思わず声が出てしまう。

 真っ赤な鮮血が、桜の花びらの如く宙を舞う。

 花びらが落ちるように、ポタリ、ポタリと一滴ずつ落ちていく俺の鮮血を見た、一瞬のことで、状況が理解できていないなな。

 しかし、その鮮血が落ちる速度は、ななに理解させる時間を与えてはくれなかった。

 止むことなく、ななの目の前に落ちていく鮮血たち。

 それが映っているであろうななの瞳は、俺の目にはだんだんと映らなくなっていく。

 出血で、俺の意識が遠のいていく。

 くそ、ここで死ぬのか。

 そう、思った瞬間。

 俺の感覚が、俺にこう言った。

 ――『テレポート』を使えばいいじゃないか――?

 でも、まだ時間が。

 ――じゃあ、そのままななを守れずに死ぬの――?

 …………。

 ――それがいやなら、自分の身体に無理をさせろ――。

『テレポート……』

 意識が消えかかっていた俺の声は、若干かすれてはいたものの、ななには聞こえたようで、俺身体をギュッとだく。

 絶対に離れないようにと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ