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第二話


「あっ、そうか、多分あそこで捕まったのか」

「……ん? どうした、やっと思い出せたか?」

「え、はい。……って、やっと?」

「ああ、かれこれ六時間は経ってるぞ」

「六時間!?」

 俺、そんなに考えてたの!?

 ていうか、まだこの女警官いたんだ。

「で、なんだった?」

 …………。

「本当に分かってるんですよね?」

「もちろんだ」

「じゃあ言ってみてください」

「言ったら意味が無いじゃないか」

 俺が疑惑の目を向けると、女警官は俺の予想していた通りの言葉で、見事に疑惑の目を回避する。

 俺と、女警官との間に、今にもその場から逃げだしたくなるような、居心地の悪い空気が立ちこめる。

 と、その時。

「すみませーん」

「ん?」

 この居心地の悪い空気を破壊するかのごとく、小さな小さな天使が、牢屋の前に姿を現す。

 いや、それは天使では無かった。

 それは。

「なな!?」

 なんと、俺が浚った(と、いうことになっている)ななだった!

「おいなな! なんでお前がここに?」

「そりゃ、お兄ちゃんを妹が助けるのは当然でしょ」

 お兄ちゃん?

 ああ、そういう作戦か。

「その子、お前がさらったと通報があった子だが」

「えっ」

「ごめんね。お兄ちゃん」

 なな、渾身のテヘペロ。

 ……ここで、ここでテヘペロはダメだと思うんだよ。

 そんな可愛いことされたら怒れないじゃ無いか。

 というか、この女警官、あんだけ微妙な事言ってたけど、本当に俺が捕まった理由を知ってたんだな。

 ちょっと疑って悪かったな。

 

 ――夕方。

「意外と早く釈放されたな」

「元々、本気で牢屋に入れるつもりは無かったみたいですよ。ギルドのルールに従って、捕まえただけみたいですよ」

 ギルドのルール?

「おい。ちょっと待てよ。なんだ、俺が捕まった本当の理由って……」

「十三歳未満である私を、ギルドに入れた責任者として捕まえたみたいですよ。もしかして分かってなかったんですか?」

「じゃああの女警官、やっぱり知らなかったってことか!?」

「そうなんじゃないですか?」

 くそっ、なんか負けた気持ちになって悔しい。

「まあ、女警官の勘違いのおかげで釈放されたわけですし、今回はラッキーだったじゃないですか」

 うん……。

 そういうことにしておくか。

「――あっ」

「ん? どうした」

「雪です」

「本当だ。まだ夏だっていうのに……。そういえば他の国でも夏なのに雪降ってたりするんだろ?」

「はい。まあ、この国を含めた四つの国の中では、この国はまだ優しいほうですよ。国によっては今年中ずっと雪降ってる国もあるそうですし」

 へえー。

「この世界。ちょっとおかしいんじゃないか」

 俺がそう言うと、ななはあさっての方を向いて。

「まあ、こういう年もありますよ」

「三年も続いてるけどな」

「……こういう一世紀もありますよ」

 一世紀単位で話してきた!?

 というか、夏が無い年が百年も続いたら、確実にこの世界壊れてると思うよ。

 俺が、何処を目指して歩いているのか分からないななの後ろをとぼとぼと、一歩後ろからついて行くと。

「……そういえば言い忘れてた事があります」

「ん?」

 ななは足を止めると、くるりと一回転しこっちに振り返る。

「これからパーティーメンバーが正樹の家に来ますよ」

「!?」

 なに?

 今から来るの?

 俺らがまだ家に着いてないのに?

 まあ、ここから五分くらいで着くし、間に合うとは思うけど。

「なに勝手なことやってんだ!」

 俺は怒鳴った。

 久しぶりに。

 ただ、久しぶりの俺の怒鳴り声は、ななには届かなかったようで。

「早くしてください」

 と、俺に走ることを要求してくる。

 ……もう、いいや。

 潔くついて行くことにしよう。

 俺は、ななを止めることを諦めると、自分の家へと、雪が降る夏の中を、ななに追いつけるように、猛ダッシュした。


「――――遅かったですね」

「はあ、はあ……。お、お前が早いんだって……」

 なんと、俺がななを猛ダッシュで追いかけると、ななもスピードを上げ、何故かどんどんと差が広がっていったのだ。

「一応聞いておきますけど。あそこの茶色い屋根の家ですよね?」

「ああ。そうだ」

 まだ、呼吸が整っていない俺を置いて。

「じゃああそこまでひとっ走りしましょう」

 そう言って、走っていくなな。

 実に速い。

 

 結局、俺が出発したのは、ななが走ってから十秒後のことだった。


「遅かったわね」

「ごめんなさい。リーダーが遅いもんで」

「お前が速いんだよ……」

 どれくらい速いかというと。

 俺の足の速さ、体力はとても平均的。

 ななは、俺の倍の速度で息も切らさずに走ってみせた。

 とにかく、足の速さが化け物級なのは事実だろう。

 だから、多分職業は盗賊とかだろう。

 あの人たち足速いし。

 それより、俺にはもっと気になることがあった。

「なな?」

「なんです?」

「この耳着いてる女の子は?」

 ななは、ああっという顔をすると。

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