また明日〜ミヤコワスレ〜
新たな〇〇が、発見されました。
「また明日」
そう言って、私に背を向け家路に向かったあの子は、もう居ない。
「イヨちゃん、おはよ」
「………」
「……イヨちゃん…?」
登下校中、見知った背を見付け、声を掛ける。いつもなら、スグに返事をして、そのまま談笑する流れなのに、イヨちゃんは返事をしてくれない処か、無反応って感じだった。
私はムッとして、「そーゆう態度取るなら友達辞めるぞ?」と半分冗談、半分脅しで言うと、イイよ、と漸くの意思相通が……って、…えっ?
「イヨちゃん、イヨちゃん」
「じゃっ」
「!ちょっ…、待っ--」
「バイバイ」
僅かに振り返ったイヨちゃんの顔を見て、言葉を失った。
だって……如何して……何で………
イヨちゃんは、泣いていた。…いや。正確には、今にも泣き出しそうな、痛々しい顔付きだった。
引き留めなきゃいけない。本能か、己の「なにか」が警鐘を鳴らす。そう思ってるのに、足が地面に縫い付けられたかの様に全く動かない。
待って!
なんでそんな顔するの?
ねぇっ!イヨちゃんっ!!
言いたかった“それら”は、全てが言葉にならず、私の胸中に仕舞われた侭。
*
「っ……ハッ…、」
またあの夢、と呟いて、女性は上体を起こす。酷く魘されてたらしく、身体中が汗でビッショリ濡れてて気持ちが悪い。シャワーでも浴びたい。
しかし、現時刻にシャワーなど浴びれば、近隣から苦情を言われ兼ねない為、服を着替えるに留める。
「……イヨ、ちゃん…」
ここ最近、ある病気が世間を騒がせていた。
死に至る程の危険性は無いものの、医者が【認知症】と誤診してしまう程の記憶に関わる病で、年齢問わずに誰でも発症する為、政府も注意を呼び掛けている。しかし、見付かったばかりの病な為か、感染ルートが未だ不明。その為、街中を歩く人々の大半は、マスクを装着していた。
(もっと、早く、見付かってれば……)
夢に出てきたイヨちゃんという少女は、女性がまだ子供だった頃の友達だ。家を行き来する程には親しく無かったものの、学校ではいつも一緒にいた。
お互い、他の子と喋ったり遊んだりしても干渉せず、また張り合う仲でも無かった為、楽な付き合いだった。そーゆう間柄は、イヨちゃん以外、今も昔も出会ってない。
「…っ……なん、でッ………イヨちゃん、なの…?」
イヨちゃんは、【記憶後退症】という病により、女性と過ごした日々を憶えていない。--いや。正確には、女性との日々を“知らなかった”。
「記憶後退症」とは、発症以降、記憶が出来なくなり、症状が進行すると、赤子までの記憶しか残らない病である。現在の処、完治に到るまでの特効薬は無く、また、予防薬も無い。
ねぇ、イヨちゃん
あの時、貴女が泣きそうな顔をしてたのは、自分の記憶が失くなっていくのを、悟っていたからですか?
お久しぶりです(^-^;
記憶改変病に纏わるオムニバス予定でしたが、タイトルが【私じゃ失くなる日。】なので、新たな病気の話の方がイイかなって--
……すみません(>_<)
記憶改変病だけだと、話が全く浮かびませんでした!!
サブタイトルの「ミヤコワスレ」は、この話のイメージに合う花言葉だな、と思い付けました(*^^*)