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【02】誠実さの話

「いやぁ意外とできるもんだね妹のトーク」


「どちらかといえば妹とトークしてただけだけどな」


 日本語の勉強半分くだらないディベート半分だ。

 妹トークと銘打って結局ツンデレ妹も従順妹も語ってないのはいかがなものなんだろうか?


 別にやり直す気もねーけど。


「いやぁ有意義なトークだったね」


「無意味なトークだったと思うけどな」


「意味のないところに意味を見出す、それが私の得意技だよ」


 などと巫山戯る彼女は


「それじゃあお兄ちゃん土下座しろ」


 僕に命令した。


「え、嫌」


「嫌じゃないでしょ!妹のパンツに顔を埋めるのはギルティ!ならば!なれば!罪には罰を!辱めには謝罪を!」


「嫌だよ、謝罪だろうと就活の面接だろうとどれだけ敬服しようと決してこの頭は下がらなぜ!」


「じゃあ妹の強権!『妹の言う通り』!」


「よくよく考えたらお前妹じゃなかったし」


「そんな!お兄ちゃんが土下座しないとあの会話の意味ないじゃん!」


「意味を見出すってそれだけかよ!?」


 なんて無駄な時間を過ごしたんだ。

 意味を見出すどころかさらっと流し見しただけじゃねーか。


「……んー?血、か」


「ん?」


「あ、ほらお兄ちゃんの鼻からなんか垂れるなーと思ったら血だったなーって」


 ちょいちょいと彼女の真っ赤な袖で僕の顔を指されてみれば、


 あ、本当だ。


 彼女の言う通りに鼻に手を当ててみればこれまた赤い液体がピチャピチャと垂れ落ちていた。

 幸いにも僕のカッターシャツもまたまた真っ赤なので服に落ちても目立たない。


 いや、幸いなんだろうか?まあ白よりましか。


「ティッシュ、ティッシュ……おい自称妹ティッシュくれよ」


「えー自称最強でしょ?止血くらい自分でしなよ」


「お前は計算するときに一々スーパーコンピューターを使うのか?」


 僕の申し出に彼女は渋々と言った感じだがファンシーなピンクの入れ物に入ったティッシュを取ってくれた。

 普通に要求したけどティッシュあるんだな、世界観よくわかんねーよ。


「しかしなんで鼻血なんか」


「ほらさっき私の」


「は?おいおいお前のパンツに興奮したから鼻血が出たって?僕をどこぞの漫画のキャラと一緒にするなよな!これだから二次元と2.5次元の違いがわからないやつは」


「いや私が蹴ったじゃん」


 あ、蹴られたな。

 膝で思いっきり、壁に叩きつけられたな。


「え?じゃあもしかして『我を呼んだのは貴様か、人間?』とか格好つけてる時も鼻血垂れてたのか?」


「確固たる事実として格好ついてなかった時も妹トークしてる時も鼻血垂れてたよ」


 うわーまじか恥ずかしいな。


 鼻から血を垂らしながら僕はここまで過ごしてきたのか、もう少し気付くのが遅かったら鼻血キャラとして定着してしまうところだったぜ。


「それにしてもおかしいよね」


 と、彼女は言った。


「ん?なにが?」


「いやほら私みたいな自称じゃなくてお兄ちゃんは最強なんでしょ?なんで私みたいな小娘の蹴りで血が出るの?」


 なんだお前自称の自覚あったのか、

 という話ではないようだ、少なくともこの状況においては。


 そんなのその力込めれば折れそうな細足から想像だにしない威力が飛んできたからってだけの話だけれどまあ強いて言うなら。


「ずっと気を張ってるって疲れるじゃん?」


 本当は体表を鋼のようにも衝撃吸収も威力反転もその他いろいろ出来るけれど。

 自称《収集家スキルマスター》は伊達じゃないんだ。


 さっきも言ったが僕はなんでも出来る人間だけどなんでもする人間じゃないんだ。


「まあ僕なりの誠実さってやつさ」


「誠実さ?」


 まあ流石にパンツ云々はどうかなと思う。

 と言うか自分でドン引きだ。


 だから避けなかったよーってだけの話だ。


「ほら、誰もゲームの攻略本見ながらゲームはしないだろ?」


「え?結構すると思うけど、というか攻略本にそれ以外の用途なくない?」


「え?じゃあわざわざ改造してクリアもしないだろ?」


「近所のお兄さんがやってくれるらしいねそういうのって」


 マジかよそんな風にゲームして楽しいのか?

 恥を知れ恥を!



 まあ要するに僕はそういうタイプじゃないってだけの話だ。


 蹴りを避けようと思えば避けれるしもっと言えば蹴りを予知することもそもそもここにきた経緯とかその他諸々を事前に知ることも出来るっちゃ出来る。


 でも僕は過程を楽しみたいし道のりに行きたいしクソゲーって言いながら楽しみたい。


「誠実さ、誠実さね、うん」

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