【00】ロリの話
ロリア・メイ・ブリーシングはエルフの少女だ。
否、幼女だ。
名は体を表すというがロリアという名に恥じることないロッリロリのロリータだ。
もっとも誰も彼もロリ時代は存在するし、いや彼には存在しねーけど、まあ女の子なら誰でもロリ時代は存在するし魔法使いに向いてるのだ。
魔法使い向いてるのだ、なんてこの世界においては今更断ることでもなく今更前置きすることではなく今更殊更強調するべくもない話だが。
特に彼女はエルフだ。ほぼ。
人間、獣人、小人、巨人、エルフ、ドワーフ……などなど。
大別される種族の一角、亜人と呼ばれる種族の一つだ。
もっともエルフの中にもハイエルフだのドロウエルフだのエンシェントエルフだの以外にも俗になんか火を使役するとか言われるエルフとか水の精霊の成れの果てと噂されるエルフとかいたはずだ。
とある生物学者はドワーフは土の眷属のエルフだ、などと発表して両種族から大バッシングを受けた。なんて話まであった気がする。
まあ亜人ってのもおかしな話だと思うがな。
亜人の亜……「亜」一文字にデミの意味があるのかは知らんが、当て字だし。
とりあえず亜が在るには、何かに準ずるものが存在するには何かに準じない唯一無二の存在が必要だ。
それがまあ身も蓋もないことを言えば亜人から亜の一文字が取れた人間なことくらい見りゃわかるが。
エルフは叡智に優れる
獣人は膂力に優れる
ドワーフは膂力に優れる
小人は器用さに優れる
巨人は膂力に優れる
膂力ばっかだな。
巨人なんてそれこそ見りゃわかるが、って話だけれど。
同じ膂力でも獣人はスピードにパラメーター振ってたり感覚が鋭かったり、ドワーフは腕力が高かったり。
巨人はまあ超強い。
とまあそんな差異は種族ごとにも種族間ですら存在する、巨人生まれって勝ち組。
もちろん今挙げたこれは人間に準ずるという概念の彼ら亜が人間より優れるところだ。
人間なんてそれこそ器用貧乏なだけで誇れるところといえば数くらいなのに。
鋼を鍛える時もより硬くする為に何か不純物を混ぜると言うし純粋な人間より混じり物の方が強度も上がるんだろう。
もっとも人は鋼と違って叩いても強くなるとは限らないが。
混じり物。
混じり者。
ロリ少女、ロリア・ロリー……じゃないロリア・メイ・ブリーシングはまあどれかと言われればエルフだ。
だが正確に言えばエルフと小人とドワーフと獣人とそれからもう一つの混じり者だ。
巨人の血が混じらなかったのは幸か不幸か分からないが。
実際巨人の混血って少ないらしいし。
詳しくは言わないがまあ体格差の関係だと思う。
あちらの世界では混血、亜人なんていない世界の混血、所謂ハーフなんてちょっと持て囃されるくらいだが。
イッツアマジックワールドにおいてはそうもいかない。
もう血なんてもろに魔術的要因満載だし、なんか怪しげな儀式やりたい放題だし。
人間に獣の血が混じった獣人が持つ人間を遥かに凌駕する驚異的な身体能力などを慮ればそんな混血児がどうなるか考えるだけでも頭痛が痛い。
更に幸か不幸かではなく嘆かわしいことに彼女は一応エルフだった。
一般的に巨人やその他弱小種族を抜いた五大種族でも随一の叡智を誇る彼らは変化を嫌う。
エルフの特性の一つにも数えられる長い寿命故か、はたまた森の奥深くに潜む習性故か、プライド故か、叡智故か、臆病故か。
理由はわかんねーが変化を、革新を、特異性を嫌う。
そりゃもう遺児で混血児の忌み子なんて親の仇のように嫌う。
そんな彼女がエルフの隠れ里でどのような扱いを受けたのか想像には難くない。
そんな過去の処遇を、虐げられた過去の話を始めてもいいのだけど誰も救われない話よりは女の子が救われる話の方が僕の好みだ。
そっちのがウケがいいのは間違いない。
先に断っておくがこの話は彼女が救われる話だ。
その前に生じた僕の人生における大きなターニングポイントなんて彼女には関係ない。
もっとも物語には多少関係あるから話さずには居られないんだけど。
救いようのない馬鹿の話はどっちみち長々とできないし、薄っぺらい奴を引き延ばしたら薄くなりすぎて千切れてしまう。
それに救いようの無い馬鹿の話よりはやっぱり女の子が救われる話の方が僕の好みだ。