序
光があれば闇がある。
陰と陽、表と裏と言うように
世界には必ず“対”となる存在が存在する。
二つの世界はそれぞれ隔たれ、愛混じることはない。
そんな世界を行き来することが出来る一人の少女。
少女は二つの世界を行き来し、世界の秩序を保ってきた。
二つの世界は“二つで一つ”。
そして、そこに存在する人達も“二人で一人”。
世界を行き来する少女の存在は、どの世界にも存在はしない。
存在しては行けない存在だから…
ある日少女は思った。
“私も世界で生きたい”…と。
少女の姿をいつも何処からともなく見守っていた神が言う。
【世界を一つに出来れば願いを叶えよう】…と。
◇◆*◇◆*◇◆*◇◆*◇◆*◇◆*◇◆*◇◆
「ちっ…しくじった」
「…っおま!何やってんだッ!!」
「ほらよ、これ…」
「バカやろぅ!!そんなもんの為に怪我してどうすんだ!」
「“そんなもん”じゃ、ねぇだろ…━━ハァ、いッ…まの俺らには」
裏庭だろうか。二人の青年が軒先で雨を凌いでいる。
話を聞いている限り、一人は怪我をしている様だ。
“そんなもん”と言っていたのは、どうやら果物に見える。
苦虫を噛んだ顔で怪我をした青年を見、「…そう、だな」と静かに呟いた。
「く、おうぜ…」
「あぁ、お前が取ってきたんだお前から食えよ」
だが首を横に振り自分を支える青年に先に食べるよう促した。それに応えるよう一口食べると「うまいよ」と一言。
「…よっ、かた」
笑顔を見せると静かに青年は息を引き取る。
傷は何ヵ所もあり出血が酷い。よくここまで辿り着けたと思いたくなる程だ。
残された青年は哀傷し、世界を恨んだ。
同時刻―――
「うぅ…ああぁッ!!!」
突如として男性が青白い炎に包まれ姿を消した。
廻りに居た人達は悲痛な面持ちでその光景を目にしていた。
誰もが炎を見ても何も言わず、ただただ呆然と見ているだけ。そして炎が消えると何もなかったかのようにいつもの日常に戻るのだった。