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双子の勇者

作者: 出雲

異世界に召喚された二人の少年少女。

 召喚した国の王は二人を見て大変戸惑ってしまう。

 二人は瓜二つの外見を持った、双子だったから。

 王は尋ねる。


「二人のうち、どちらかが勇者だ。自分こそが勇者だと思う者は名乗り上げてほしい」


 自身では判断がつかぬと、王様は双子の姉弟に丸投げしてしまった。

 双子の姉弟は考えるまでもなく、召喚された事による自身の体の変化に気付いていた。


『勇者として召喚されたのはわたしの方だと』


 話を聞けば勇者と召喚された者は魔王の討伐に向かわねばならないらしい。

 そんな身勝手な話など、本来ならば断わってしまいたい姉弟だが、なんの後ろ盾もない異世界で、そんな事を言ってしまえば、この後どうなってしまうのか分からない。

 恐怖で目の前が真っ暗に感じてしまう。

 自分の足がしっかりと地面の上に立っているのかさえ判別できない。

 沈黙したままでいるのも不味い。

 永遠とも刹那とも感じる時間。

 答えは決まっているも同然だった。

 震える体に鞭を入れ、奮い立たせる。


 ――私が弟を守るんだ!


 元の世界に帰れるかもわからない中、信頼できるのは血を分けた姉弟しかいないのだ。

 そう思えば、体の震えも止まってきた。

 さあ、自分こそが勇者だと王に伝えよう。

 そうすれば、弟の身を守れるのだから―――


「―――私こそが、勇者です―――」

「―――ッ⁉」


 先に弟に言われてしまい、慌てて否定しようとするが、弟が目で制する。

考えれば分かる事だった。私が考えるような事を優しい弟が考えないはずがなかったのだ。

 弟は、本当は勇者でもないというのに、私の身代わりになろうというのだ。

 私が傷つく姿など見ていられない、と。

 そんな事、私だって同じだというのに。

 勇者ではない弟はこれからどんな困難が待ち受けるのだろう。

 勇者である私以上の過酷な未来が待ち受けているのは明白だろう。

 それでも、弟は覚悟したのだ。

 私に、そのような道を歩ませたくない、と。

 弟はの覚悟は痛いほど理解できる。

 私だって、同じなのだから。


 ―――だからこそ、弟には悪いけど、その覚悟を踏みにじらせてもらう。


 なにより、弟に守られているだけの姉なんて、私らしくない。

 だから。

 弟の前に一歩前に出て、宣言するのだ!


「―――お待ち下さい。私も勇者です」


 私の突然の宣言にざわめきだす周囲の人々。

 前代未聞だ、なんて言っているけど、そんなこと知った事じゃない!

 勇者が二人いて何が悪い!

 私たちは双子の勇者だ!

 どちらかが欠けても駄目なんだ。

 二人そろって一人前の勇者。

 そんな勇者がいてもいいじゃないか。



 ――これは、歴代でも最強の双子の勇者の物語。

 互いを守る為に勇者になった双子の勇者。

 一人は偽りの勇者であったはずなのに、双子の勇者に関わった者たちの誰もが二人は違いなく勇者だと称賛する。

 そんな、双子の勇者の始まりは、双子の嘘が原因で周りの人間達を大いに戸惑わせる始まりだった。


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